即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

途切れた記録の値打ち

2011年09月29日 21時48分13秒 | 将棋
あ~あ。
羽生さん、負けちゃいましたね。

渡辺竜王、強い!
3連勝で、20連勝、20連覇という長年築き上げてきた前人未到の大記録を木端微塵と粉砕してしまいました。

最近書いた記事は下記。
王座戦第一局大盤解説会
羽生二冠、王位獲得で三冠へ、そして、通算80期に

第一局解説の藤井九段が言ってました。
「19連覇といっても足かけ20年もタイトルを持ち続けているわけですから、もう当分現れないでしょうね、いや、これはもう無理でしょう。
挑戦者として出てくるのは一番調子がいい人なわけで、そういう人たちを19回も続けて退けるなんて考えられないです。
でも19期と節目の20期とはインパクトが違いますよね。」

その20連覇という偉業がかかった今期の王座戦。
挑戦者として現れたのはどんどん進化を重ねる一番嫌な相手の渡辺竜王。

第一局と第二局の間には、今棋界で一番若いタイトルホルダーをフルセットで下してまたも三冠返り咲くとともに、大山名人の記録に並ぶこれも人間業とは思えない通算タイトル80期を達成。大きなニュースになった。
そして、この王座戦を防衛すれば、新記録の81期。

2連敗したものの、いつかの竜王戦の仕返しをするべく、大逆転もあるかとも思っていたのだけれど、そうはならなかった。
第三局のまれにみる死闘を制したのは竜王戦だけしか強くないとずっと揶揄されていた渡辺竜王。
初の二冠。ついに渡辺時代の到来かとなる。
これを機に、羽生世代はどんどん追い詰められていくのか。

この一局、この王座戦を振り返ってみて、いろんな思いが交錯します。

羽生ファンも渡辺ファンも、それぞれの視点でいろんな複雑な思いを綴っています。
shogitygooさん渡辺が王座を奪取 2011王座戦第三局 羽生vs渡辺

ssayさん第59期王座戦五番勝負第3局はあきら竜王が勝ち、対戦成績3勝0敗で初の王座を奪取

英さん20連覇ならず、王座失冠

このブログを始めた頃(5年前)は、渡辺明ブログがきっかけで自分もブログを始めたという経緯もあり、渡辺竜王が将棋界にもたらす新風に対しては、すごく共感していたし、棋士の中で一番に声援を送っていた。
このブログでも熱い応援記事をたくさん書いてきた。

羽生世代だけしかタイトル戦に出てこないことで、渡辺竜王たちの若い世代がもっとがんばらないと棋界は面白くないよ、と書いてもきたし、思い続けてきた。

ブログがきっかけで将棋にのめり込んでくるうちに、羽生さんを筆頭に棋士それぞれの人間的な魅力に触れ、いろんな棋士たちに魅力を感じるようになった。

そして時を経て、巡り巡って、皮肉にも41歳の誕生日に失冠。
ほんの1週間でまたもや二冠に。

これで7つのタイトルは、1・2・2・2と季節ごとに割り振られてしまった。

春は森内、夏は羽生。
秋は渡辺、冬は久保。

これ、七五調になってます。

四季折々、色取り取り、群雄割拠の戦国時代。

しかし簡単にこの勢いのまま渡辺時代が訪れるとは思わない。
この王座戦の戦いを踏まえ、羽生・渡辺のさらにヒートアップした別の次元の戦いがこれからたくさん見られるはずです。

渡辺竜王の戦略的かつ合理的で、緻密で漏れ抜けがない読み。そこに自信も加わり、勢いに乗った集中力も充実している。
一方、一人マイペースでけものみちを歩き、茫洋とした独自の大局観でことにあたる羽生二冠。将棋の難しさを楽しむように、いろいろな思いをその一手に託していく。

まだまだ目の離せない戦いは続く。
そう、この二人の戦い、お楽しみはこれからなのだ。

それぞれの季節に、それぞれの棋士たちが繰り広げる個性豊かな戦い。
棋界のまた新たな季節の到来を桟敷席で見守っていられる我々は本当に幸せです。

折しも今朝の朝日新聞天声人語です。
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途切れた記録の値打ちは、メディアの騒ぎぶりが語る。平幕から横綱まで、足かけ4年の負け知らず。双葉山の連勝が69で止まった時は街に号外が出た。名勝負を伝えるNHKラジオは「70は古希、古来まれなり」と始まる。和田信賢アナウンサーによる伝説の実況だ
▼「……双葉山敗る双葉山敗る。時、昭和14年1月15日、旭日(きょくじつ)昇天まさに69連勝。70連勝を目指して躍進する双葉山、出羽一門の新鋭、安芸ノ海に屈す」。国技館には煙草(たばこ)盆やミカンが飛び、和田アナは座布団を被(かぶ)って放送した
▼より静かに、されど厳かに尽きるのは、イチロー選手が大リーグで続けるシーズン200安打だ。最終戦を残しあと16本。空前の延長戦にでもならぬ限り「11年連続」はない
▼オリックス時代の1994年から続く打率3割台も終わる。あれほどの打者である。昨季までとの違い、すなわち来月38歳になる肉体の近況については、当人の弁を待つしかない
▼200安打も3割も、一球ごとの集中を点描画のごとく重ねての労作。それを何年分も積んだ高みで、彼はバットを振る。敬意を込めて、記録の途絶ではなく確定としたい。04年の最多安打262本に次いで、しばらくは誰もさわれない「古来まれ」なる数字が固まった
▼双葉山の偉業に白鵬が挑戦し、あと6勝に迫った興奮は記憶に新しい。イチローが残す記録も、夢多き後進たちが挑むべき、真新しい壁だ。塗り立てのペンキも香(かぐわ)しく、フィールド・オブ・ドリームスにそそり立つ。
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イチローが11年連続200本安打、18年連続3割の記録がここで潰えた。
38歳という年齢のことを本人はどう語るのだろうか。

古来まれなる20連覇が途切れた41歳の羽生さん。
そして、11年連続200本安打が途切れた38歳のイチロー。

自分も歳を重ねてきたこともあり、どのように経験値を生かしていくのか、また若い人たちとどう渡り合っていくのか、いろいろ重ね合わさるものもある。

まだまだ戦いは続いていくのだから、途切れてしまった記録のことはとりあえず隅に置いておいて、目の前の一局、一打席に最善を尽くすということしかないのだろう。
歳は関係なく、将棋が好き、野球が好き、将棋が強くなりたい、野球がうまくなりたい、という強い思いがあればこそ、明日の進化を作っていけるのだと思う。

まだまだ書き足りないし、思いは尽きないのだけど、とりあえずは古来まれなる大記録を作った羽生さんとイチローの二人に大いなる敬意を表します。
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3 コメント

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3か月近く前の予想が (Guten Tag)
2011-09-30 05:41:45
やはり現実となりました。
http://blog.goo.ne.jp/nanapon_001/e/0586c00dfc6bfa3f2ea73bdb8732bc51
それにしても竜王の受けはしぶとい。
3局で終わったとはいえ、中身の濃い3局でした。
返信する
上手い! (ssay)
2011-10-01 23:11:02
>春は森内、夏は羽生。
>秋は渡辺、冬は久保。

上手いです!これはお見事!
文字通り「洒落」ています。

ぼくに才能と努力と時間があれば、
これで枕草子のパロディを作ってみたいです。

(こういうところに過剰に反応するという、
そんな程度の将棋ファンです、ぼくは)
返信する
コメント、ありがとうございました。 (nanapon)
2011-10-02 21:30:58
★ぐーちゃん、こんばんは。

>やはり現実となりました。
http://blog.goo.ne.jp/nanapon_001/e/0586c00dfc6bfa3f2ea73bdb8732bc51

よく覚えていてくれましたね。
でも3連敗とは思わなかったです。

>それにしても竜王の受けはしぶとい。
3局で終わったとはいえ、中身の濃い3局でした。

ほんとそうですね。
そういう意味では勝敗よりも中身です。
結果は別にして、ポキっと言ったわけではないので、竜王の執念や集中力がより充実してたと言うことだと思います。

★ssayさん、こんばんは。
たまに褒められるとうれしいです。
記事の内容よりも、そっちかい。

枕草子のパロディ、お待ちしてます。

>(こういうところに過剰に反応するという、
そんな程度の将棋ファンです、ぼくは)

はい。分かってます。僕だってそれ以上にそんな程度の棋力です。
返信する

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