即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

羽生さんの新著「大局観」

2011年02月11日 12時36分28秒 | 将棋
最近書いた田坂広志さん関連の記事。
今の自分の力を全部出し切る
自己限定すること

その続きで先日行ったセミナーでの話です。

1.田坂さんが、昔お客さんと麻雀をしていた時の話。
  某銀行の頭取と、その部下たちと、かなり長い時間卓を囲んでいた。
  やっと終わって、優秀な銀行員たちが何度やっても集計が合わなくて困っていた時、
  頭取が、パッと見て一言。
  「あっ、ここがおかしいんじゃないの?」
  ずっと計算してあれこれ悩んでいたのは何だったのか。
  トップになった人は、違う。一目で計算ミスが見抜ける。

2.大山名人の話。
  冬の朝、将棋会館で若手棋士たちが詰め将棋をしていた。
  難しい詰め将棋で、皆であれこれ検討していた。 
  その時、コートを羽織ながら外出しようとしていた大山名人が、
  そこをチラッと見ながら通り過ぎる時、
  「あっ、それ、詰んでるね。」

こういう事例でわかるように、経験を積んで一流になった人たちは、情報の集積ではない、論理の積み上げではない神がかり的な直感を持ち合わせている。

直感、大局観。
思考を節約。
無駄なことはできるだけ省く。
戦略とは「戦いをはぶく」と書く。
(りゃく《略》=はぶくこと。省略。)

論理思考をとことん極めて行くと、どこかで突き抜けるところがある。
一流を極めた人は、常識では考えられないような、凡人から見たら神が降りてきたとしか思えないようなことが普通にできてしまう。

田坂さんは大山名人だけでなく、羽生さんの話にも触れました。
歳とともに記憶力や瞬発力は落ちるけど、直感や大局観はどんどん年季が入っていく。
さまざまな角度からアプローチできるようになる。
いかに読まないか。いかに見切るか。

ということで、昨日発売のこの本にすべて通じていくことになる。

大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21 C 198)
羽生 善治
角川書店(角川グループパブリッシング)


情報と知識の洪水。それにとらわれすぎると、創造に干渉してしまう。

研鑽を積んだ人だからこその直感。野生の勘。

深く真剣に読むだけ読んだら、あとは「好き嫌い」とか「美しさ」で決める。

「この十年で、将棋はかつて想像していた以上にはるかに奥深いものだとわかった。」

常に新しいものを求め続けるスピリット。
自由闊達な精神。

キーワードは「ブレークスルー」。
今までと異なる景色が見えること。
次なるステージを目標とすること。


そんなことを自然に語れる羽生さん。
この本に登場する長嶋茂雄、手塚治虫、ヨットの白石康次郎、今北純一、詩人の吉増剛造さんなどなど、羽生さんならではのいろんな世界の人たちとの交流の中から掴み取ったものが紹介されています。
自分の知らない世界で一流となった人たちから得た刺激、驚き、気づき、など、吸収したものが今の羽生さんの血となり肉となっているのでしょう。
そして、これからさらなる高みに向かっていくための大きな推進力になっているのだと思います。

今、渡辺竜王をはじめとして、次世代の若手がどんどん伸びてきて、ずっと棋界をリードしてきた羽生世代の立場を危うくしている現状があります。
その中で、加齢というもの、そして将棋観も含めたジェネレーションギャップとの闘いの中で、羽生さんはまだまだ進化を続けていくのだと思います。

田坂さんの言葉を借りるとこうなります。
 
 自身の中のセンス・オブ・ワンダー」を、研ぎ澄ませ。
 
 「個別の技術」だけでなく、「全体バランス」を学べ。


羽生さんは、この先、50歳になり、60歳、70歳になって、どのような新しい景色を見ながら進んでいくのでしょうか?
我々観る将棋ファンとしては、羽生さんの指す将棋も含め、人間としての羽生さんの進化をずっと見守っていくことが本当に楽しみです。

そして、我々も、どういう局面になっても、この本に書かれているような精神を持ち続けることが大切なのだと再認識しました。
毎日しっかりした足取りで、変わる景色を楽しみながら、大局的な判断を大事にしながら一歩一歩山を登っていく。
常に新たな道を切り拓いていくことを目指しながら。
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