将棋関連情報のバイブルと言われた勝手に将棋トピックスに代わって、
ものぐさ将棋観戦ブログ@LPSA外部広報、ががんばってくれているので、こういうニュース対応、安心です。
さすが、しっかり関連情報も集約していますね。
ということで、船戸陽子女流二段移籍の話題、各地でいろいろ盛り上がっていますが、
ちょっと角度を変えて、
最近こんなサイト、見つけました。
知りませんでした。
マイコミの将棋の業界革新へヤッピーの挑戦です。
イノベーターたちの横顔と言うコーナーで、いろんな業界のイノベーターたちが登場している中、
矢内女流二冠が「将棋界のイノベーター」として取り上げられています。
それにしても、これ、かなりの大作ですね。
矢内女流二冠の生い立ち、人物像、考え方などなど、詳細にうかがえます。
LPSA設立に至った女流棋士独立問題に関する彼女の考え方まで詳しく書かれていますので、今、この時点ではかなり要チェックですね。
知らなかったことが満載の内容をダイジェストで。
-------------------------------------------
◆《生い立ちと経験》
ピアノ好き
子供の頃からピアノが好きで、駒音コンサートでショパンの「幻想即興曲」を弾いた。
いじめ
群れるのを嫌う性格の故、小学校の頃、ひどいいじめに遭った。
中学の時も、いじめに対して対決し、ひとりで十数人相手に決着をつけた。
和服への拘り
いずれ一流の女流棋士になったら、男性棋士と同じように和服で対局することに憧れを抱いていた。
大学進学希望(志望校は早稲田大学)
早稲田の将棋部が強豪だということと、心理学を学びたかったというのが理由。
結局将棋を選んで進学はやめることに。
母の死
高校卒業の翌年、お母さんが病気で亡くなる。一人っ子の彼女は精神的にも物理的にも生活が一変。将棋の成績も下降し、勝率も5割ぎりぎりになった。
NHKへのレギュラー出演
囲碁将棋ジャーナルが大きな転機となる。
外の世界の人との関わりを持て、将棋を俯瞰で見られるようになり、将棋の世界の特殊性にも気づいたし、魅力をどう伝えたらいいか、ということも考えるようになった。
女流の第一人者へ
奨励会を退会し、女流名人位を獲得。一流棋士の仲間入りへ。
対局姿勢のパラダイムシフト
女流名人としての自覚や責任感が生まれ、自らプレッシャーをかけるようになった。結果、粘りを生み、逆転勝ちが増え、成績が安定するようになった。
◆《棋界の将来ビジョン》
将棋の世界の革新に向けて
女流棋士のキャリアパスが確立されていない、そもそも女性のファン層がいないという棋界の現状の中、そんな厳しい現実に対して、明確な革新の理念を持っている。
それは、「将棋人口を拡大することと、業界内部の男女格差をなくすこと」。
女流独立問題の時、当初は設立準備委員になり独立に向けて動いていたけれど、いろいろ悩んで女流名人として職責を果たすこと、自らの実力を高めることを重視した。
この分離独立騒動では、結局、矢内さんは留まる立場を取った。
彼女は言う。「いい将棋を指してファンの方々に歓んでいただくのが今の私の仕事です」。
「宗旨替え」した理由をきちんと説明すべし、ということなど、当時いろいろ言う人もいましたね。
結局、独立することが目的なわけでなく、同じ目的に向かって、どういう方法論を取るか、なわけで、より早く確実に実現しやすい道を選択する、という局面でしたね。
矢内さんの描く業界革新の将来ビジョン
1)将棋を指さない人でも応援したいというファンを獲得すること:
~将棋のドラマ性や棋士の人間味あふれる人物像を見せる。
(こだわりの着物姿を見せ話題性を提供することなども含め。)
2)全国の小・中・高校さらには世界各国に行って将棋を教えること:
~とりわけ海外にあっては、通訳を介するのではなく、棋士自らが将棋の魅力を伝えるようにする。
3)女性の将棋ファンを増やすこと:
~イベント会場を女性好みの魅力的な会場にし、たとえば、オシャレなカフェであたかもチェスのような感覚で指せるようにする。あるいは、同じく日本の伝統ということで、日本酒の会と組み合わせるなど。
4)スポンサー・メリットを作ってあげること:
~対局で使う扇子にスポンサーの名前やロゴを入れたり、スポンサー企業のイベントに棋士が積極的に応援に行くなど。
このビジョン、具体的で素晴らしいです。
こんなに具体的に語っていたとは、知らなかったです。
しかし彼女は言う。
「タイトルホルダーはそうした活動に従事すべきでないと考えています。今の私はとにかく強くなって良い将棋を指すことです」。
この部分、彼女のアイデンティティなわけですね。
つまり、理念や目的は、LPSAの人たちと同じだし、やっていかなければいけないのだけど、
タイトルホルダーとしての自分の役割は、上記将来ビジョンを実現するための活動をするより、
強くなる、そして、男女格差を無くす、というところに注力したい、ということなのでしょう。
孤高の存在ですね。
子供の頃の「群れるのを嫌う」ということも影響していると思います。
こういうことが、最近の成績にも現れているのでしょう。
2冠に留まることなく、女流棋士の中では飛びぬけた存在になりたい、なるんだ、という覚悟が伺えます。
自分が棋界にいる存在意義はそこだ、と信じているのでしょう。
そして、自分に与えられた役割りを果たす事が、業界革新のエネルギーになっていくのだと。
矢内さんに見るイノベイターとしての資質。
1. 「ミッション」の明確化
女流棋士の世界の底上げのためにも、女流名人の自分がまず、より一層強くなること。それを踏まえて、「将棋人口を拡大することと、業界内部の男女格差をなくすこと」を「ミッション」としている。
2. 「不易」と「革新」の対象の識別の的確性
将棋という日本の伝統的な技芸を現代に生かしてゆくために、「変えざるべきことは何か?」と、「変えるべきことは何か?」を、的確に「識別」している。
3. 「複眼思考」
「女流名人」として、プロフェッショナルな自己の責務を果たしながら、しかし同時に、将棋の世界を「相対化」し、より巨視的、俯瞰的な目で、業界を客観的に眺めることに成功している。
4. 「自己革新」能力
女流名人になった際の「自己革新」が彼女の視点を高め、そこから、業界革新への「理念」と「ビジョン」が導き出されたと判断される。
5. 「全体最適志向」
彼女の思考・発言で特徴的なのは、絶えず業界全体の利益を考えている点である。個人的な利権とか、特定のグループの権益とかを志向するものでは決してない。
おおらかでおっとりしているようにも見え、「私、鈍感なんです。」と言っているけれど、かなり意志の強固な人なんですね。
自分の姿勢や考え方をきちんと貫く。
週刊将棋に2週に渡って初代女王インタビューが出てました。
その中で、「第三者的に俯瞰した見方をする事があるんです。」と言う発言がありました。
「新しい棋戦で、新しいヒロイン(甲斐さん)が誕生することが、棋界の新しい幕開けになるだろう。」と。
(里見さんとのレディーズオープンの時もそう思った、と。)
上記、「イノベイターとしての資質」の3、5をきちんと持った上で、自分のミッションを明確化して、その実現に取り組む。
とってもよくわかります。
基本的にはLPSAを応援する事に変わりないのですけど、このように
「私はこう考えます。そして、将棋の革新や発展のために私はこういうことをやります。」と自分の立場や考え方を宣言することは、ファンにとってもとてもいいことだと思います。
将棋、女流棋界の発展のために、自分は何をするのか。
立場、スキル、性格などによって、自分のミッション、役割を考える。
それを実行、実現しやすいのはどのような環境か。
連盟なのか、LPSAなのか。
あるいはどちらでもない第三の選択肢もあるのか。
矢内さんだけでなく、ひとりひとりが率直に自分の意見を出し合い、議論をし、共通の目的のために、がんばってほしいと思います。
そう言えば、矢内さんのブログ「メジャー取りに王手」が最終回のようですね。多分また別の形でお目見えするんじゃないでしょうか。期待しています。
ものぐさ将棋観戦ブログ@LPSA外部広報、ががんばってくれているので、こういうニュース対応、安心です。
さすが、しっかり関連情報も集約していますね。
ということで、船戸陽子女流二段移籍の話題、各地でいろいろ盛り上がっていますが、
ちょっと角度を変えて、
最近こんなサイト、見つけました。
知りませんでした。
マイコミの将棋の業界革新へヤッピーの挑戦です。
イノベーターたちの横顔と言うコーナーで、いろんな業界のイノベーターたちが登場している中、
矢内女流二冠が「将棋界のイノベーター」として取り上げられています。
それにしても、これ、かなりの大作ですね。
矢内女流二冠の生い立ち、人物像、考え方などなど、詳細にうかがえます。
LPSA設立に至った女流棋士独立問題に関する彼女の考え方まで詳しく書かれていますので、今、この時点ではかなり要チェックですね。
知らなかったことが満載の内容をダイジェストで。
-------------------------------------------
◆《生い立ちと経験》
ピアノ好き
子供の頃からピアノが好きで、駒音コンサートでショパンの「幻想即興曲」を弾いた。
いじめ
群れるのを嫌う性格の故、小学校の頃、ひどいいじめに遭った。
中学の時も、いじめに対して対決し、ひとりで十数人相手に決着をつけた。
和服への拘り
いずれ一流の女流棋士になったら、男性棋士と同じように和服で対局することに憧れを抱いていた。
大学進学希望(志望校は早稲田大学)
早稲田の将棋部が強豪だということと、心理学を学びたかったというのが理由。
結局将棋を選んで進学はやめることに。
母の死
高校卒業の翌年、お母さんが病気で亡くなる。一人っ子の彼女は精神的にも物理的にも生活が一変。将棋の成績も下降し、勝率も5割ぎりぎりになった。
NHKへのレギュラー出演
囲碁将棋ジャーナルが大きな転機となる。
外の世界の人との関わりを持て、将棋を俯瞰で見られるようになり、将棋の世界の特殊性にも気づいたし、魅力をどう伝えたらいいか、ということも考えるようになった。
女流の第一人者へ
奨励会を退会し、女流名人位を獲得。一流棋士の仲間入りへ。
対局姿勢のパラダイムシフト
女流名人としての自覚や責任感が生まれ、自らプレッシャーをかけるようになった。結果、粘りを生み、逆転勝ちが増え、成績が安定するようになった。
◆《棋界の将来ビジョン》
将棋の世界の革新に向けて
女流棋士のキャリアパスが確立されていない、そもそも女性のファン層がいないという棋界の現状の中、そんな厳しい現実に対して、明確な革新の理念を持っている。
それは、「将棋人口を拡大することと、業界内部の男女格差をなくすこと」。
女流独立問題の時、当初は設立準備委員になり独立に向けて動いていたけれど、いろいろ悩んで女流名人として職責を果たすこと、自らの実力を高めることを重視した。
この分離独立騒動では、結局、矢内さんは留まる立場を取った。
彼女は言う。「いい将棋を指してファンの方々に歓んでいただくのが今の私の仕事です」。
「宗旨替え」した理由をきちんと説明すべし、ということなど、当時いろいろ言う人もいましたね。
結局、独立することが目的なわけでなく、同じ目的に向かって、どういう方法論を取るか、なわけで、より早く確実に実現しやすい道を選択する、という局面でしたね。
矢内さんの描く業界革新の将来ビジョン
1)将棋を指さない人でも応援したいというファンを獲得すること:
~将棋のドラマ性や棋士の人間味あふれる人物像を見せる。
(こだわりの着物姿を見せ話題性を提供することなども含め。)
2)全国の小・中・高校さらには世界各国に行って将棋を教えること:
~とりわけ海外にあっては、通訳を介するのではなく、棋士自らが将棋の魅力を伝えるようにする。
3)女性の将棋ファンを増やすこと:
~イベント会場を女性好みの魅力的な会場にし、たとえば、オシャレなカフェであたかもチェスのような感覚で指せるようにする。あるいは、同じく日本の伝統ということで、日本酒の会と組み合わせるなど。
4)スポンサー・メリットを作ってあげること:
~対局で使う扇子にスポンサーの名前やロゴを入れたり、スポンサー企業のイベントに棋士が積極的に応援に行くなど。
このビジョン、具体的で素晴らしいです。
こんなに具体的に語っていたとは、知らなかったです。
しかし彼女は言う。
「タイトルホルダーはそうした活動に従事すべきでないと考えています。今の私はとにかく強くなって良い将棋を指すことです」。
この部分、彼女のアイデンティティなわけですね。
つまり、理念や目的は、LPSAの人たちと同じだし、やっていかなければいけないのだけど、
タイトルホルダーとしての自分の役割は、上記将来ビジョンを実現するための活動をするより、
強くなる、そして、男女格差を無くす、というところに注力したい、ということなのでしょう。
孤高の存在ですね。
子供の頃の「群れるのを嫌う」ということも影響していると思います。
こういうことが、最近の成績にも現れているのでしょう。
2冠に留まることなく、女流棋士の中では飛びぬけた存在になりたい、なるんだ、という覚悟が伺えます。
自分が棋界にいる存在意義はそこだ、と信じているのでしょう。
そして、自分に与えられた役割りを果たす事が、業界革新のエネルギーになっていくのだと。
矢内さんに見るイノベイターとしての資質。
1. 「ミッション」の明確化
女流棋士の世界の底上げのためにも、女流名人の自分がまず、より一層強くなること。それを踏まえて、「将棋人口を拡大することと、業界内部の男女格差をなくすこと」を「ミッション」としている。
2. 「不易」と「革新」の対象の識別の的確性
将棋という日本の伝統的な技芸を現代に生かしてゆくために、「変えざるべきことは何か?」と、「変えるべきことは何か?」を、的確に「識別」している。
3. 「複眼思考」
「女流名人」として、プロフェッショナルな自己の責務を果たしながら、しかし同時に、将棋の世界を「相対化」し、より巨視的、俯瞰的な目で、業界を客観的に眺めることに成功している。
4. 「自己革新」能力
女流名人になった際の「自己革新」が彼女の視点を高め、そこから、業界革新への「理念」と「ビジョン」が導き出されたと判断される。
5. 「全体最適志向」
彼女の思考・発言で特徴的なのは、絶えず業界全体の利益を考えている点である。個人的な利権とか、特定のグループの権益とかを志向するものでは決してない。
おおらかでおっとりしているようにも見え、「私、鈍感なんです。」と言っているけれど、かなり意志の強固な人なんですね。
自分の姿勢や考え方をきちんと貫く。
週刊将棋に2週に渡って初代女王インタビューが出てました。
その中で、「第三者的に俯瞰した見方をする事があるんです。」と言う発言がありました。
「新しい棋戦で、新しいヒロイン(甲斐さん)が誕生することが、棋界の新しい幕開けになるだろう。」と。
(里見さんとのレディーズオープンの時もそう思った、と。)
上記、「イノベイターとしての資質」の3、5をきちんと持った上で、自分のミッションを明確化して、その実現に取り組む。
とってもよくわかります。
基本的にはLPSAを応援する事に変わりないのですけど、このように
「私はこう考えます。そして、将棋の革新や発展のために私はこういうことをやります。」と自分の立場や考え方を宣言することは、ファンにとってもとてもいいことだと思います。
将棋、女流棋界の発展のために、自分は何をするのか。
立場、スキル、性格などによって、自分のミッション、役割を考える。
それを実行、実現しやすいのはどのような環境か。
連盟なのか、LPSAなのか。
あるいはどちらでもない第三の選択肢もあるのか。
矢内さんだけでなく、ひとりひとりが率直に自分の意見を出し合い、議論をし、共通の目的のために、がんばってほしいと思います。
そう言えば、矢内さんのブログ「メジャー取りに王手」が最終回のようですね。多分また別の形でお目見えするんじゃないでしょうか。期待しています。
>タイトルホルダーだからこそ、「そうした活動」に従事すべきなのではないでしょうか。
うーん、本人に確認したわけでもないので、僕に聞かれても困るのだけど、僕が思うには、優先順位の問題で、「そうした活動」に従事するよりも、いい将棋を指してファンの方々に歓んでいただく方が、自分が棋界により貢献できる方法ではないか、ということで、普及活動もやることはやりつつも、そう発言することで自分にかなりのプレッシャーをかけているのではないか、と思います。