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「放射線の影響に関する国連科学委員会」報告書の福島原発事故過小評価に怒る、原発推進側ベルギー代表団。

2013-08-22 17:08:37 | 福島第一原発と放射能

「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」=UNSCEARです。この報告書を朝日新聞が丸呑みして一面トップで伝えた件について、僕は5/28に、次のようにすでに書いています。

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UNSCEARの福島安全宣言を丸呑みで一面トップにする朝日新聞の大罪。橋下市長の懲戒請求に女性参集!

国連の「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」=UNSCEARの報告書を丸呑みした記事が一面トップで、でかでかと掲載されています。

 このポイントは、朝日新聞が、「福島の事故はたいしたことがない、安全だ」というUNSCEARの報告を、丸呑みして、安全論を社是のようにばら撒いたということです。

これは一記者の見解のレベルではなく、朝日新聞という会社のスタンスがはっきり出ています。

 この骨格として、チェルノブイリの被曝したヨーロッパの人々と日本人全体が比較されていますが、北海道や名古屋以西は、今回の被曝にほぼ無傷で、そうした人口が半分を超えている日本で、こういう数式をあてはめる感覚そのものが、事態を楽観視させる要因でしかありえません。関東・南東北とチェルノブイリの被曝したエリアで比較しないと話しになりません(フランスでも30Bq/kgの汚染、これは愛知県東部以西ではほぼありません)。

 しかもどうやら、外部線量的な直接被曝による比較が大半を占めている模様であること、さらにヨーロッパなどチェルノブイリが、1000キロ以上のエリアまで拡散していることと、今回の福島の事故が、概ね300キロ程度のエリア内に留まっているため、広さの差が大きいこと。汚染が届いている場所同士での確認をすべきなのに意図的にずらしていることなども、あの記事からも散見されます。

 しかし、それ以上に、朝日新聞があきらかに問題なのは、首都圏でおきているさまざまな健康被害を自覚している一般市民の訴えを記者たちがほとんど取材せずに、こまかく実地調査もおこなっている形跡がほとんどない「国連」「科学委員会」という看板だけは立派な報告書を、錦の御旗のごとく報じているということです。この委員会が、放射能に関していろんな政治権能の妥協産物として対応している委員会であることは自明のことなのにです。本当に恥ずべき話です。

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 そして、きょう紹介するのは、ヨーロッパ在住の女性が、欧州内で書かれた記事を翻訳紹介しているブログです。トップページはhttp://vogelgarten.blogspot.de/になります。ベルギーのRTBF(フランス語圏ベルギーTVラジオ局)の記者の文章です。UNSCEARという原発推進側の内部で、福島第一原発事故を巡る報告書が、あまり過小評価過ぎるという声がおきている状況。さらに、そうした原発推進側内部でも異論がおきるほどの報告書が、実はどのように成立している政治背景があるのかという事について、書かれた記事です。前述の朝日新聞とは天と地の違いがありますから、是非ご確認下さい。

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UNSCEAR、怒るベルギー代表:『福島原発事故被害は過小評価されている』

 
原子力事故や放射能の被害を評価する任務を負う国連機関 UNSCEAR内部で議論に火花が散っている。UNSCEARは最近ウィーンで開催された会議において用意された暫定報告書を、各国専門家の議論に委ねた。この報告書がベルギー代表団を激怒させたのだ。ベルギー代表団メンバーによれば「報告書全体が福島原発事故の被害を過小評価するために執筆、作成されている感が否めない。チェルノブイリやその他の研究から得られた情報のレベルからさえも後退している。」と言う。

ベルギー代表団を構成しているは、モル核エネルギー研究センターやさまざまな大学の専門家たちである。他国の多くの専門家たちとともに、彼らは五月にウィーンで開催された会議に参加した。UNSCEARは来秋、国際連合総会に報告書を提示しなければならない。

ブリュッセルに帰国後、ベルギー放射線防護協会(ABR)でのプレゼンテーションにおいて、代表団団長ハンス・ファン=マルケはUNSCEARの暫定結論に対する非常に批判的な意見を明らかにした。この批判はグリーンピースや反原発派からではなく、”原子力推進派内部”から噴出しただけに衝撃的である。我々の得た情報によると議論は過熱を尽くし、ベルギー代表団のショックはあまりに大きかったため、報告書への署名拒否さえちらつかせているそうだ。また何人かのメンバーは会議からの退場も考えたと言う。ベルギー代表団の発言と、またイギリスの専門家やその他何人かの専門家の発言の行われた結果、彼らの見解も改訂版を編集するうえで考慮に入れられる可能性はあると言う。しかし過去の歴史からこの手の組織においては、プログラムや文書の最終的な方向性は事務局と報告官によって決定されることがわかっている。最終稿が議論をきちんと反映しているかどうか、最大の注意が支払われることになるだろう。

批判

一般的な見解については誰も異論はない:日本は幸運に恵まれており、放射能の大部分は太平洋の方向に流れた。住民の避難は比較的速やかに行われ、食品の検査は満足できるレベルである。従って被害はおそらくチェルノブイリよりは少なくてすむだろう。

しかし地上への放射性物質降下量は無視できる量ではなく、従って住民の健康や将来への被害も無視できるものではない。その上、放射性物質の降下は福島市や郡山市(人口30万人)のように人口密度の高い地域で起こっている。

UNSCEARの報告書が提示しているデータの多くは不完全であり、また提示の方法に問題がある。一般市民が受けた被曝量は不適切な方法を使って少なく見積もられている。これは事故現場で働いている作業員数万人の被曝量に関してもまったく同様である。そして日本政府も東電もこの件に関する詳細の公表を拒んでいる。安定ヨウ素剤が配られなかったことも明白であり、甲状腺検査の実施は一般に遅すぎた。そのために現時点でUNSCEARの報告書が主張しているように将来事故の影響はほとんど現れないだろうと断言することはできない。

またUNSCEARによる分析は、速断で胎児や遺伝を脅かす潜在的な危険を強制的に除外してしまっている。発癌リスクに関しては、明白な病変を引き起こすには放射線量が低すぎるため、懸念をする必要はないと評価している。このような仮説はベルギー人も含め多くの専門家を激怒させた。というのも上記の通り、一方では被曝量の評価が適切でないうえ、他方ではチェルノブイリの情報や近年行われた数多くの研究から低い線量でも健康に影響の現れ得ることが示されているからである。しかしながらUNSCEARはこのような放射線科学の発展から明らかに後戻りをしようとしている。各国からの代表者たちの一部は、今回の会議においてだけでなく、ここ数年間繰り返し、年間100ミリシーベルトという敷値の下ではいかなる健康被害も起こらないという考えを通そうと試みている。しかし国際放射線防護委員会(ICRP)は、平常時においては一般市民は年間1ミリシーベルト、原子力産業従事者は年間20ミリシーベルトの被曝量を越してはいけないと勧告しており、また事故時においては、一時的な基準の超過は大目に見られるものの、超過は持続的であってはならないとしていることを今一度確認しておきたい。

最新の研究では様々な分野において年間10から100ミリシーベルトの間の低線量被曝でも、健康に影響のあり得ることが示されている。被害は癌だけではない。胎児への影響、遺伝のかく乱、心臓血液疾患や白内障なども問題となる。

チェルノブイリと同じ被害の否定が福島でも行われるのか?

いくつもの報告書が机上にあり、完成を待っている。そのひとつは子供たちについての報告書だ。子供は被曝が起こった場合、特別に保護し、監視しなければならない対象である。この子供たちについての報告書はフレッド・メットラー教授率いるアメリカチームが請け負ったのだが、メットラー教授と言えば、チェルノブイリ・フォーラムで公表された報告書の著者の一人である。当時の報告書はチェルノブイリ事故被害を過小評価しているとして、大変に議論を沸かし、批判を浴びたものである。彼はまたも臭いものに蓋をしようとしているのか? 少なくともメットラー教授による今回の子供についての報告書では、低線量被曝が子供たちにもたらす健康被害に関する一連の研究や発見、論点が先験的に除外されてしまっている。このテーマに関する欧州原子力共同体(ユーラトム)の専門家グループによる報告書さえ、メットラー教授は考慮に入れようとしなかった。

もうひとつ関連する報告書の中で無視され、ほとんど議論されていない非常に重大な問題がある:それは持続的な慢性被曝のケースである。これは例えばある身体器官が内部から被曝を受ける場合に起こるものだ。実際、放射性物質が体内に均等に分散するか、あるいは逆に特殊な部位に蓄積するかによって、現れる健康被害は異なるらしいことがますます明らかになっている。つまり同じ被曝量でも被曝が起きている部位によってその影響は異なるということだ。このことは既に何年も前にチェルノブイリ事故における数々の影響を研究したベラルーシの科学者ユーリ・バンダジェフスキーが発表した仮説と一致する。

分裂・・・

福島原発事故(そしてチェルノブイリ原発事故)の被害を過小評価し、放射線防護に関する最新研究がもたらした結果から後戻りしようとする試みはいったいどこから発生しているのか? それは主にロシア、ベラルーシ、アメリカ、ポーランドそしてアルゼンチンの専門家によって構成される派閥からなのである。彼らの多くはUNSCEARだけでなくIAEA、そしてICRPの中心人物でもある。その一人、アルゼンチン人のアベル・ゴンザレスの就いている役職はアルゼンチン国内の原子力産業のものも含めて数知れず、前回のセッションでは、ベルギーの専門家が利益の混同を批判する書面を送ったほどである。しかしUNSCEARはこの批判書を議事録に記載することを拒否した。ゴンザレス、メットラー、ロシアのベラノフ(元IAEA職員であり、UNSCEAR報告書の一つの編集長)それに数人のポーランド人が、フランスのチュビアナ教授に代表される派閥とダイレクトにつながって、低線量被曝が起こしうるあらゆるネガティヴな影響に関する考えを頑なに拒絶しているのである。彼らは一丸となってこの路線を堅守しようとし、非常に活発な国際的拠点を築き上げている。彼らはUNSCEARやIAEA(UNSCEARの会議はIAEAの建物内で開催される)の事務局における戦略的なポストを占拠している。そして今日では日本人も彼らと見解を分かち合うようになっている。福島原発事故による影響を最小限に抑え、停止中の原発を再稼動させるのに懸命だからだ。

その他の原子力大国、例えば中国やインドの代表は何も口出しをすることなく、UNSCEARの文書を黙認している。フランスのCEA(フランス原子力庁)やIRSN(放射線防護・原子力安全局)の専門家たちは、過去には日本が情報を滞らせていることを嘆いていたのに、今回はほとんど意見を発しなかった。スウェーデン、ドイツの専門家たちも言葉少ない。当然各国内の専門家たちの間でも異なる意見が存在するのだろうが、やはりUNSCEARが出した結論と原子力エネルギーの地政学との間に類似性を認めたくなるものである。ここで問題となっているのは各国の公式の代表専門家たちだからである。

かくして、一石を投じたのはベルギーの専門家たちだったのだ。イギリスの専門家たち、それにオーストラリア人の議長が彼らを支持した。またユーラトムの会議に参加しているヨーロッパの専門家たちは、UNSCEARの《過小評価派》に比べて、低線量被曝の影響をずっと気にかけている。

いったいこれらの問題についての議論や科学的疑問はどこに行ってしまったのかと思わざるを得ない。少なくとも低線量被曝の影響を否定する一派は、来秋提示されるUNSCEARの報告書に彼らの見解が反映され、国連によって有効とされることを熱望している。それに対してベルギー人をはじめとするその他の専門家たちにとっては、それは放射線防護知識に関する最新の進歩に対する許しがたい後退を表すことになるだろう。

マルク・モリトール記
Marc MOLITOR
ベルギーRTBF(フランス語圏ベルギーTVラジオ局) 

http://www.rtbf.be/info/societe/detail_1es-delegues-belges-indignes-on-minimise-les-consequences-de-fukushima?id=8042566
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 この記事からわかるのは、推進側である欧州原子力共同体(ユーラトム)の専門家グループによる報告書では、持続的な慢性被曝もふれられているそうです。体内臓器が内部被曝によって、放射性物質が体内の分散や蓄積の度合いによって、どうやら健康被害は異なるらしいことも指摘している模様。こうした推進側内の報告書も、結局最終的な報告書にまったく反映されず、内部で握りつぶしている政治背景があるということもよくわかります。
 この記者は、推進側のユートラムの専門家グループの報告書とユーリ・バンダジェフスキーが発表した仮説との内容的な一致まで言及しています。
 ベルギーという第三国的な立場で、フェアに構造を見られる立ち位置のある代表団なら、推進側であってもこの程度の見解があって、さらにそれを踏まえてベルギーのマスコミ記者なら、この位の記事は書いてくるという事です。特に反原発に偏って書いてもいません。フラットに書いている気がします。
 僕は、こういう記事を読むと、日本は本当に終わっていると実感しますし、20年間マスコミで活動しても、何も達成できていない僕はダメだと実感しています。

 貴女はどうなのでしょうか。

 このブログ主から次のようなメールもいただきました。

こちらでも記者の質は玉石混交とではありますが、本質的にジャーナリズムの仕事をしている人も
きちんといることはいると言う印象があります。1+1=2 という思考方法が基本的に通じる、
というのかそれが社会の基礎になっているところが、日本とは大違いかもしれません。」

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抗う術を探るための本音トークでもあります。

【8/31(土)木下黄太×野呂美加 放射能ぶっちゃけトーク IN 京都】 

申込受付⇒http://kokucheese.com/event/index/107258/


前売り:1000円  当日 :1200円 

※当日託児はありませんのでご了承ください。
※子供連れの方は膝上の場合無料、お席の必要な方は別途お申し込みください。
※1申込につき1席の予約になります。 
 2名以上でお越しの際はお手数をかけますが個々にお申し込みください。  
※つり銭が出ないようにご協力をお願いします。 
※講演会の31日(土)当日のキャンセルは出来ません。 
キャンセルは30日(金)午後9時までにお願いいたします。 
(期日以降のキャンセル、または無断欠席の際は、後日実費をご請求いたします。) 

8月31日(土曜日)  
13:30開場 14:00開演 16:30ごろ終了 定員280名 

ひとまち交流館・京都 (京都市下京区河原町五条下ル) 
大ホール   

尚、親睦会的な2次会はキャンセルが出ないと満員みたいです。これもこくちーずで、時々、確認して下さい。


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名古屋という防御の前線で話します。

【9/1(日)名古屋木下黄太×野呂美加 放射能ぶっちゃけトーク  

詳細・申込⇒http://kokucheese.com/event/index/105356/

  二人のトークセッションです。またこのイベントをきっかけに 放射能防御プロジェクト中部で 

情報交換、勉強会など交流も増やしていきたく思います。 

是非御参加下さい。(前売り1000円 当日1200円) 

※託児はありませんのでご了承ください。 
子供連れの方は膝上の場合無料、お席の必要な方は別途お申し込みください。 

 9月01日(日) 13:30開場 14:00開演

東別院会館 ホール (愛知県名古屋市中区橘2-8-45)

懇親会は夕刻に開催。講演会参加者限定ですが、
現在キャンセル待ち。⇒http://kokucheese.com/event/index/108865/




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