音楽を作っていく時、特に指揮をしている時、
その音を、音楽をどのような感じに仕上げていくか、
というのは結構な命題ですし、
その「ボキャブラリー」が多い事に越した事は無いのです。
そしてそれは「経験」でしかボキャブラリーを増やすことはできません。
その経験はあらゆるもの全てを含んでいます。
そしてそれは毎日積み重なっています。
初めての人に出会った時、本に出会った時、画に出会った時、物に出会った時、
食べ物、飲み物に出会った時、初めての町に行った時、
そして初めての曲に出会った時、などなど、
様々なインスピレーションが頭を、心を過ります。
そんなひとつひとつの出会いが人生をも揺るがす事がありますが、
それは人間一人一人、全員に、常に起きることです。
そして日々いろいろな経験をしてきた人が、
一堂に会し、オーケストラなり、合唱なり、オペラなりをやるわけで、
その相乗効果は凄まじいものがあります。
それらを指揮者として受け身側に回った時に、
自分がそれに耐え切れるか、
ということが一回一回重くのしかかってきたりします。
自分がその経験に基づいたボキャブラリーを理解できない、
ということが経験上生じてくるからです。
だから、自分の感性は常に外と内に開いておかなければなりませんし、
人が感じる感性、というものを常に自分の中にも感じておかなければなりません。
その感性を極限にまで高めておかないと、
それだけの感性を持ち合わせていない人までの感性を揺さぶる事はできませんし、
つまりそれは感動させられる人が少なくなる、
ということでもあります。
音一つ一つに、フレーズ一つ一つに、どんな感性を込めていくか、
一日一日が大切だと思います。