ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

珈琲

2017-08-12 04:20:04 | 短歌





ぬばたまの 珈琲にとく 月影の かすかに甘き ひとりのいほり





*今日は、枕詞の応用について語ってみましょう。これは、ツイッターで蘭が歌ってくれた歌です。

ぬばたまとは、ヒオウギの実のことです。その実が黒いことから、「ぬばたまの」は、「黒」とか「夜」とか「髪」とか、とにかく黒いものを思わせる言葉にかかります。

ぬばたまの夜の香りを身に納めけふを去りつつすぐす閨かな    夢詩香

というふうにね。しかし、こういうことも硬く生真面目に守りすぎることもない。黒いものなら何でもいいというわけではないが、そういうものをぬばたまに結び付けると、また言葉の意味が鮮やかに印象付けられます。

ぬばたまの オブシディアンは 夢を見る かはたれに呼ぶ 神の祈りを

こんなふうにね。オブシディアンは黒曜石のことです。とても黒いきれいな石のことです。遠い昔には石器にも使われた。古代のイメージのするきれいな石のことですから、黒人の肌をイメージするためにこれは使いました。

ほかにも、「ぬばたまの男」なんてのがありましたね。もちろん黒人のことです。こういうふうに、枕詞は柔らかく使えばまたおもしろいものになる。

子規はきらいですが、この歌だけは覚えているという人もいるでしょう。




久方の アメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも    正岡子規




「久方の」は「天」とか「月」にかかる枕詞です。「あめ」とアメリカ人の「アメ」をかけて作ったのだが、これがおもしろいので、わたしたちも使わせてもらいました。




久方の あめりかびとは みづからを まほの国とぞ 世に宣るがよい




おもしろいですね。柔らかく言葉を使ってみると、いくらでも応用ができます。ほかにも一つやってみましょうか。枕詞の定番と言えば、「ひさかたの」と「ぬばたまの」に「ちはやぶる」「あかねさす」くらいだというところか。「ちはやぶる」は「神」にかかりますから、いくら何でも神をもじることはちょっと難しいですね。では。




あかねさす ヒルデガルトの 見し夢は 銀の御里の いのりなるべし 




ちょっと衒学的ですね。ヒルデガルト・フォン・ビンゲンのことなど知らない人が読んでもなにもわからない。ですが、「あかねさす」は「昼」にかかるので、ヒルデガルドでひっかけてみました。

遊びの要素もありますがね、おもしろいので、やってみてください。






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