むらさめ

ゆっくり行こう

高張力鋼部材

2021-04-30 00:00:00 | 日記

昨日の続きです。

 

高張力鋼(特機や民生品に限らず)はインゴットにした後、鍛造や熱処理によって目的の材料強度に調整してから機械加工を経て製造物の部品となります。

鍛造や熱処理は、物の大きさ(厚さと言っても良い)が重要な要素となります。

『焼きを入れる』という言葉がありますが、普段は、他の人に対して怒る雷を落とす、より悪い意味ではリンチにするように使われています。

鉄鋼材料で古来ある言葉で、赤く焼けた鉄鋼部材を、水や油等に浸けて急激に冷却する工程を『焼き入れ』と言い、本来はそこから来ています。

この焼き入れを施すことにより鉄鋼材料は強度が増加するのですが、焼き入れたままでは脆く、それを『焼き戻し』という工程により、適切な強度と靭性に調整します。

 

このインゴットから鍛錬-熱処理-という一連の製造工程を経て、製品の部材となった時に適切な材料特性(強度や靭性等々)にするように製造されています。

私が論文のテーマにしていた海洋構造物は、物の大きさ(厚さ)が大きいので 焼き入れ時の冷却 や 焼き戻し時の加熱 がし難くいです。

しかし、潜水艦の外壁なら、比較的に薄いので、ある程度冷却-加熱速度を早くすることが出来ます。

溶接というのは溶かす事で部材をくっ付ける工程ですから、『焼き戻し』の後に更に熱を加えて『焼き戻し』のような事をすることになります。

この更に溶接工程は部材の熱履歴の不均一化や不明瞭化を招く工程でもあり、鋼材中に水素の侵入や余計な析出物にも繋がるになるので、非常に高い技術やノウハウが必要になります。

日本の新造潜水艦ならば、建造完成後に最適な材料特性を発揮するように鋼材を作る時点から熱や歪を管理して製造しています。

 

それに対して、インドネシアの沈没した潜水艦は、製造はドイツで、韓国で近代化の改装工事を受けたとのことです。

改装時の切断や再溶接の時に、船体鋼材(高張力鋼)の熱管理や材料特性の変化をどのくらい考えていたり把握出来ていたのか判らないです。

よく、こんなリスクの高い改装工事を、韓国の造船会社がこういう改装工事を受けたことは、鉄鋼材料を少しでもかじった者としては驚愕してしまいます。

訳のわからない材料を、テキトーに切って張ってくっ付けたようなものです。

 

海自の『あさしお』は三重神戸で竣工後、AIP推進の実験艦とするため、同じ三重神戸で船体を切断して延長する工事をしています。

あさしおは、自社製造の艦の改造なので、艦の製造履歴や部材の素性などは、基礎データ・資料も十分に有って、慎重に慎重を重ね十分に検討した上で工事を行っているはずです。

 

鉄鋼でできて溶接構造の船が実用化して以来、水上を航行する船舶では、船体をぶった切って前後の間に延長部を差し込む改装が行われることがあります。

先代の豪華客船クイーンエリザベスⅡは、船体切断をする延長を行い、横浜来迎寺に、延長部分がここかと観た記憶があります。

ただ、水上船舶と潜水艦では要求される材料特性は、より高品質であることを要求されますが、インドネシアの潜水艦では水上船舶と同じ感覚で工事をしてしまったように考えています。

改装の真実は明らかにならないと思うのですが、インドネシアの改装に対する疑念はもっともな事だと感じます。


高張力鋼の溶接

2021-04-29 00:00:00 | 日記

昨日のブログの続きですが、高張力鋼は大体400MPa位の引っ張り強度を持つ鋼材を高張力鋼と呼びます。

私が学生だった頃は、SI単位系が浸透しておらず、引張強度で40㎏f/㎜^2程の鋼材辺りから高張力鋼と呼んでいて、その辺りは現在でも同じです。

 

学生の当時でも、400MPaは高張力鋼としては低強度の部類でした。

私の論文テーマは、800MPaくらいの高張力鋼に対する海洋環境下のカソード防食(電気防食)の強度(主に靭性)への影響を実験して調べていました。

大型の海洋構造物用の鋼材で、部材のサイズも違うので、潜水艦のような高強度化は難しかったように記憶しています。

が、それでも800MPaの鋼材は民間使用の用途では大きな方で高強度でした、加える防食電位に対して、非常に敏感な靭性の挙動を示していました。

溶接部に関しては論文テーマの範囲外(2年程度の研究では決着が着かない)で、実験や調査はしませんでした。

溶接時の 溶接部や熱影響部の鉄鋼の組織変化を実験に組み込むと、資金潤沢な企業ならできたのかも知れないです。

しかし、すべてをやりきることが出来ずに、私の論文も色々な大学や企業との共同研究の一部として、担当部分の防食電位の靭性への影響について、実験研究していました。

 

その時、潜水艦に使用されている高張力鋼は、既に110kgf/㎜^2くらいを達成しており、私の研究していた80㎏f/㎜^2の高張力鋼よりもより高強度のものが使われていました。

大型の海洋構造物用の鋼材と潜水艦の鋼材の決定的な違いは、その大きさ、部材の厚さと言っても良いのです。

が、その厚さの違いにより、大きな部材は熱処理等の調質工程により強度は上げ難く、薄い部材ほどより高強度を達成することが容易です。

 

長くなるので続きはまた次にします。


インドネシアの潜水艦

2021-04-28 00:00:00 | 日記

インドネシアの潜水艦、4月21日に痛ましい事故が発生してしまいました、乗員の方々の御冥福を祈ります。

 

もう、20年以上前に専門家の方に伺った話なのですが、潜水艦は事故や沈没のような状態となってしまうと、水深が浅い海でも救助が難しいそうです。

というのも、海底の地形が平坦であるとは限らず、潜水艦自体艦の特性上円形をしているので、事故で海底に着底した場合、傾いた状態になることが予想されます。

傾き過ぎて着底すると、救助に向かったDSRVも潜水艦に接続できなくなり、助けようがない事になります。

そのため、事故発生の際は乗員の方々は最悪の事態に備えるように覚悟(具体的には判らないです)するそうです。

潜水艦乗りは、死と隣り合わせの辛い任務だと思うのですが、それ故、潜水艦乗りは普通の国では海軍の中でもエリートで、乗員間の雰囲気が古来とても良いと聞きます。

帝国海軍でも、戦記や回想録にある士官から兵への八つ当たり制裁は、潜水艦ではなかったといいます。

 

溶接は20世紀中盤になって漸く造船の技術として確立したものですが、WW2頃までは、船がポッキリ折れたりと、どの国も技術開発に苦労しています。

破壊の教科書には、米国の戦時標準船スケネクタディ号の例が殆ど例外なく出ていますね。

私が冶金屋の学生だった40年近い昔、日本の潜水艦は超高張力鋼で建造されており、日本の冶金屋は、潜水艦の材料は世界一だと誇っていました。

高張力鋼は溶接が非常に難しく、技術・ノウハウが高くないと溶接による熱により材料が脆化し破壊しやすくなります。

高張力鋼という材料は出来ても、何かの形(今回は潜水艦)にするまでの付随する細かい技術が多く難しく、見よう見まねで溶接出来るようなものではありません。

今は更に鋼材の強度が上がっていますし、それ故に、よりピーキーな製造(溶接・熱処理 その他諸々)条件になっていると考えられます。

 

沈没したインドネシアの潜水艦は、かつて潜水艦王国だったドイツで建造したものなので、建造時はそれなりに強度的に安全が保証されていたと考えます。

それを別の韓国の会社が船体をぶった切ったりして改装したというのですが、十分なシミュレーションや材料特性の変化を見込んでおこなったのか甚だ疑問です。

長くなってきたので、今回はこれで終わりにします。

 

沈没したインドネシアの潜水艦は、私が学生時代に竣工した船のようですね。


今日はなんとか辞めずに済みました

2021-04-27 00:00:00 | 日記

昨日はなんとか辞めずに済みました。

会社の人間となるだけ会話や接触を避け、最小限の会話で私の不信感を悟らせないようにしていました。

 

信用できない相手にはなるべく私の情報を与えないようにしながら、同僚とも殆ど会話せずにいました。

その日で、会社で割り振られる仕事が違う体制になってしまったので、毎日がロシアンルーレット状態です、小心者の私には耐えられません。

昔もロシアンルーレットのような事を毎日させられる会社で仕事をしていたことがあるので、その過去の記憶とリンクして辛いですね。

 

今日、辞めずに済むかどうか、判らないですね。


今週も辛い仕事が始まります

2021-04-26 00:00:00 | 日記

今週も辛い仕事が始まります、既に会社に対して私の中では信用は全くありません。

それを周囲に表明するときは、辞めるのが近い時だと思いますし、その時間が何時になるのか予想が出来ないですが、刻一刻と近づいている事は確かです。

 

4月から、私が関わってきた仕事に、プラス肉体的(主に視力)に辛い仕事が強制的に付加されてしまい何時まで耐えられるか判らないです。

私の視力が頼れるのは片目だけなので、その目の視力の低下が認められれば生活自体に支障が出るので辞めるしかないですね。

私の目が悪くなっているのは、以前から会社を含めて周囲の人間に伝えているので、それを知った上での会社の命令ですので、事実上の退職勧告と私は受け取っています。

 

昨年から、使い物に成るのかよく判らない新人を数名、部署に配置しているので、その玉突きで会社は私を追い出したい意思が伝わってきます。

私はもう歳なので、辞めさせられたら次の仕事は探してもないと思うのですが、会社には会社の都合があるんですね。

辞める時は、何時も会社都合で辞めざるを得ない状況に追い込まれ、辞めさせられてきました。

もうこういうことが何度も経験しているので、私は 立つ鳥、思いっきり後を濁す の、心境になっていますね。