春柳 葛城山に 立つ雲の
立ちても居ても 妹をしぞ思ふ
=巻11-2453 柿本人麻呂歌集=
葛城山に立つ雲のように立っても座ってもあなたのことが思われる。という意味。
万葉で詠われた葛城山は、奈良県と大阪府の県境にある葛城連山の総称で、南は金剛山、北へ葛城山、二上山に連なる。
「春柳」(はるやなぎ)は、春芽を出し始めた頃の柳のことをいう。
春柳の枝を髪に挿して葛(かずら)にすることから葛城山の枕詞としている。
この歌は、最も短い万葉歌として大変有名。万葉仮名字の原文で表すと、
「春柳 葛山 發雲 立座 妹思」 と、10字にしかならないからである。
いわゆる「略体歌」と呼ばれる初期万葉歌の形式で表現されている。
「やなぎ」は、一般的にはシダレヤナギが普通で、奈良時代に朝鮮を経て渡来したといわれる。
高さ10~20㍍になり、細い枝がしだれるのが特徴。
3~5月、葉より早くまたは同時に基部に3~5個の小さな葉をつけた尾状花序をだす。
『万葉集』に詠まれた「やなぎ」は三十六首にのぼる。