星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

山海塾「降りてくるもののなかで ー とばり」

2011-03-06 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名    山海塾「降りてくるもののなかで ー とばり」
劇場     兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
観劇日    2011年3月5日(土) 
座席     H列

山海塾を観るのはほんとに久々。
2006年にグリーンホール相模大野で見た「遥か彼方からのーひび
き」以来5年ぶりになる。
2月12日の朝日新聞「be」のフロントランナーに天児牛大さんの紹
介記事とインタビューが掲載されていた。
「こう感じてほしいなんて言うつもりはない。ただ日常にもどっ
てゆくお客さま一人ひとりの中で、作品を見る前と後とで、何か
が変わっていてくれればいいなと思うだけ。」

1月に北九州と東京で披露された新作「二つの流れ-から・み」と
は違って、今回の兵庫公演は2008年の作品。
旧作でもなんでも関西で山海塾が観られるのはありがたい。
特に天児さんのソロを観るのは、ここ数ヶ月の私の鼻先ニンジン
のひとつだった。

以下、今回のプログラムより。

「降りてくるもののなかで ー とばり」
I.  虚空から
II.  夢の中の闇
III. 写しあうものたち
IV.  闇の中の夢
V.  夜の青
VI.  降りてくるもののなかで
VII. 虚空へ


演出・振付・デザイン:天児牛大
音楽:加古隆 YAS-KAZ 吉川洋一郎
舞踏手:天児牛大 蝉丸 岩下徹 竹内晶 市原昭仁 長谷川一郎
    松岡大 浅井信好
共同プロデュース:パリ市立劇場 / 北九州芸術劇場 / 山海塾







<舞台装置>
装置はいたってシンプル。
中央に黒っぽい大きな円板(楕円形だそうだ)があるだけ。
途中から場内が真っ暗になると、舞台奥に星空が出現する。
そこは宇宙なのか。
星空が消えた後、舞台上の円板には星空が写し出されていた。
やがて、その円板からも星々が消える。
             
<天空への旅>
冒頭は4人の舞踏手の群舞。
手首から先を折り曲げるのが鳥の嘴に見える。規則正しく同じ動作
を繰り返し、同じ方向に進んでゆくのを見て思い出したことがある。
一群の鳥のように編隊を組んだ未確認飛行物体のことだ。
その編隊は瞬時に凄いスピードで形を変えた。あれは鳥ではないと
今も思う。黄昏時の空はそういう不思議に満ちている。
舞踏手たちが上に向かって手を伸ばす。空との対話のように見えた。
今回は何かとてつもなく大きなもの、漠然としたものを相手にして
いるような印象だ。

突然やってきた星の輝き。
無数の星々が輝く、ここは天空?

気づくと4人の真ん中に天児さんがいた。
音楽が鳴り止み、しんと静まり返った場内。観客は天児さんのソロ
の動きを固唾をのんでそっと見守っている。
伏せた頭の上を追い払うような手の動き。苦しそうだ。
それは何かが降りてくるのに驚き、それを避けて下へ下へと逃げて
いくようにも見えるのに、逆に、水の中をもがきながら上へ上へと
浮上しようとする動作にも見える。
そんな動きを繰返しながら、いつしか4人が天児さんの周りを回っ
て移動していた。回転軸である天児さん自身も舞台の端のほうから
センターに向かって少しずつ進んでいる。
自転と公転のような関係といえばいいか。
1+4の有機的でダイナミックな群舞が美しい。

黒っぽい円板に星々が。まるで池か湖に星空を撒き
散らしたようなイメージ。

舞踏手たちが宇宙の星に見えてきた。
星のひとつひとつがまるで生命体のように見えてくる。
瞬いたり、揺らめいたり。
移動して交差してぶつかり合う星々。

垂直の帯状の星々。夜空にもうけられた光の道のような感じ。
その前で天児さんのソロ。
宇宙の星々の中にたどりついたのだろうか。
そこここに星はあるのに、つかめない。掬うこともできない。
声さえもすべて吸収してしまう、とてつもなく大きな闇。
ああ、なんという表情をするのだ、このひとは。
ただ体を動かして舞っているのではない。
その哀しげな眼差し、息づかいが聞こえてきそうな表情。
もっとアップで観たくてオペラグラスで捕まえる。
到達してしまった人の孤高というか、孤独に囚われてしまった人の
叫び声、いくら叫んでも届かないその虚しさ、慟哭の表情に、思わ
ず涙が・・・。

音楽はシンセサイザーやパーカッションも遣われているけれど、終
わりに向かってヴァイオリンやチェロなどの弦楽器の音色がドラマ
チックに力強く聴こえてきた印象がある。
最後は群舞。
全員が仰向けになって両手両足を少しだけ上げている状態は何を表
すのかよくわからなかったけれど、水の中で浮いている感じだった。
横になった時は飛天に見えたりもした。

私自身も宇宙服を着ないで宇宙の果てまで飛んでいった気持ち。
何を考えても、考えなくてもいい。絶対非日常の時空間だ。

カーテンコールの舞踏手の皆さん、ほんとにかっこイイ。
腰を落として片足を後ろに引いて。
天児さんは左足を引いて、右手を左胸に当てている。拍手に応えて
掌を広げたまま上から下へ、手を振りながら揺れる手。
見ながら私の体も揺れました~♪


●このブログ内の関連記事
山海塾新作『とばり』と JAPAN Tour 2008
第6回朝日舞台芸術賞グランプリは山海塾
山海塾「卵熱」DVDが完成♪
山海塾のDVD「卵熱」発売予定
山海塾「遥か彼方からのーひびき」観劇メモ
山海塾「時のなかの時ーとき」観劇メモ
山海塾の新作公演と初DVD
山海塾の2006年全国ツァーと写真集
金柑少年2005 観劇メモ
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 山海塾の公演でお久しぶりの... | トップ | エコールプランタンで愛之助... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (ぽーちどえっぐ)
2011-03-06 15:23:45
はじめましてムンバリさん。
ぽーちどえっぐと申します。
自分も、愛之助さんが好きで、いつの間にかファンになっていたという感じです。
このブログの過去の記事とか読ませていただきましたが、すごい量でびっくりです(驚)
自分の知らない情報とか載っていてよかったです。
自分は、愛之助さんの舞台はまだ見たことがないのですが、今年8月に御園座で「好色一代男」をやるみたいなので、それは絶対に見にいきたいです。
あー、愛之助さんの歌舞伎が生で見たい!!
という感じです。
写真集も買いましたが、とても充実した内容でしたね。
長々と書いてすいません(--;)
観劇レポとかアップするの、大変だと思いますが頑張ってください。
どうぞよろしくお願いします。


返信する
ぽーちどえっぐさま♪ (ムンパリ)
2011-03-07 07:42:37
はじめまして。
コメントをいただきありがとうございます♪
ぽーちどえっぐさんは舞台はまだご覧になってないのですね。
ということは舞台を観劇されたら、その10倍20倍はさらに
好き度が加速してしまうのは間違いありません。
覚悟なさってくださいまし(笑)。
愛之助さんに関するレポはダラダラした自分用覚え書きです
ので読まれる方は大変ですよね、ごめんなさい~。
8月の舞台もよさそうですが、やはりオススメは歌舞伎です♪
これからもいっしょに応援してまいりましょうね!
返信する
 (野田由里)
2011-03-08 10:21:46
本当に、偶然というより必然ともいえる再会でしたね。変らない笑顔が素敵だったよ。
「とばり」の感想、あの限られた空間に結集した人々すべてが同じ思い(非日常ともいえるひととき)を共有できたこが凄い。
終わったあと、あなたを探したけど、ミッシング!!それも、お嬢らしいなって。
楽屋へちょこっと挨拶に行き、三宮は懐かしの「どんどん」へ移動。素に戻った上島くんを囲み思い出話やら、質問やら、感想やら・・・の応酬。オリエンタル・ホテルに宿泊する上島くんと別れる頃には、日をまたぐ時間に。
久方ぶりの夜遊びに、次の日は死んでいましたが。あの宇宙と所作、表情などなどはしっかりとこの体に宿りました。
またの再会を楽しみにしているよ。元気でね。
返信する
Yuriさま♪ (ムンパリお嬢(笑))
2011-03-08 12:35:39
Yuriさぁ~~~~~~ん!!!!!
ほんとにほんとにウレシイ再会でございました♪
Yuriさんこそ、もう全然変わってないんだもん。
いまも素敵に輝いておられますよ~♪
やっぱり山海塾はかっこいいし~。
んで、そこにこぞって集まるご一同様もスンバラシイっ。
私も終演後行ったり来たり、かなり探したんですよぉ!!

> 素に戻った上島くんを囲み思い出話やら、質問やら、
> 感想やら・・・の応酬。
ギャーーーーーーーーッッッッッッ!!!
なんでワタシって上島さんとご縁がないんでしょうね。
ドキドキしながらこんなに真剣に舞台を観てるのにぃ。グスン。
大昔、三ノ宮駅に降り立った上島さんをお出迎えに
行った時の優しい笑顔が忘れられませぬ・・・。
また関西に来てください、とお伝えくださいましい。

皆さんが夜遊びされてる間にひっそり寂しく・・・
でも余韻に浸りながらこの感想を書きましたよ。
Facebookで検索したら皆さん、すぐに見つかったので
Yuriさんにすぐにメッセージを送ったのでした。

うれしいコメントをありがとうございました。
次は歌舞伎、ぜったい行きましょう!(笑)
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

観劇メモ(演劇・ダンス系)」カテゴリの最新記事