MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯835 「自治体ポイント」の行方

2017年07月22日 | 社会・経済


 7月20日の読売新聞(電子版)は、政府が、全国の地方自治体が健康増進イベントや地域貢献活動などに参加した住民に発行しているポイントを「自治体ポイント」としてマイナンバーカードに合算し、買い物や公共施設などで利用できる制度を9月にも開始することになったと報じています。

 報道によると、全国で1800ある自治体のうち、約3割に当たるおよそ500の自治体が健康ウォークや特定健診などの健康事業のほか、子育て支援や清掃などのボランティアに参加した住民に「ポイント」を発行する事業を行っているということです。

 集められたポイントは、多くの場合地域産品や商品券などに変えることができ、住民にこうした行動へのインセンティブを与える形になっています。

 一方、このような事業に対しては、従来から「自治体ごとにバラバラのポイント制は使いにくい」などの声も上がっていたということであり、総務省では専門家らによる研究会を開催し統一されたポイントカード制の在り方について検討を重ねてきたということです。

 記事によれば、今回の総務省の案は、マイナンバーカードのICチップを活用してそれぞれの事業のポイントを合算し、原則「1ポイント=1円」で使用可能にするものだということです。その大元には、こうした取り組みによって(最近どうにもパッとしない)マイナンバーカードの利用価値を高め、地域振興やマイナンバーカードの普及につなげる狙いがあるとされています。

 さて、現在のマイナンバーカードの申請・発行・交付状況を見ると、申請受付数は14,119,344件(2017年7月3日現在)、交付済み数は11,887,676件と、既に約9人に1人がマイナンバーカードを保有していることが判ります。

 これを「多い」と見るか「少ない」と見るかは意見が分かれるところですが、総務省としては2000億円を超える莫大な予算をかけ鳴り物入りで整備したマイナンバーシステムを、(この辺で)何とか普及させたいという思いがあるのは事実でしょう。(民間も含め)様々なポイント制度をマイナンバーカード1枚に集約させれば、カードの周知が進むだろうと考えたのも無理はないと言えるかもしれません。

 しかし、地域貢献などを一枚のカードに集約してポイント化しようというこの試み。思いつきとしては、ちょっと便利で悪くないような気もしますが、こうした提案に何となく「胡散臭い」ような感覚を抱く人も、もしかしたら多いかもしれません。

 きちんと納税をしている人、寄付をしている人、自治会の役員をしている人、消防団員をしている人、地元の防犯活動をしている人、そして棄権せずに選挙に行っている人。そうした個人の行動が次々とポイント化されマイナンバーによって紐づけされていく。

 その結果、そうして積みあげられたポイントの多寡で、住民が格付けされ評価されるのではないか。ラジオ体操に早起きして毎朝行く子供はいい子だから1ポイント、授業で10回手を挙げれば1ポイント、図書委員は5ポイントだけれど、学級委員をやれば10ポイントとランキングされ、内申書にトータルポイントが記されるとすればどうなのか。

 同様に、あの人はこんなに「良いこと」をしているけれど、こっちの人はちょっと…。○○ポイントたまれば公営住宅に優先的に入れるとか、役所に相談に行っても優先的に話を聞いてもらえるとか…インセンティブがエスカレートしないとは誰も言い切れません。

 役所の求めるままにポイントを貯めるとは、実はそういうことなのかもしれません。権力にとって、こうして貯まった(公的な)ポイントを一覧できるということは、言い換えれば住民を(その行動によって)「格付け」できるということにもなるでしょう。

 (少し「ひねくれている」と言われるかもしれませんが)役所の言うことをよく聞いた人には(まとめて)「ご褒美」をあげると言われても、少し眉に唾を付けて話を聞く必要があるのではないかと、今回の「自治体ポイント」の報道から改めて感じたところです。




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