MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2565 おひとり様の暮らしぶり

2024年04月01日 | 社会・経済

 最新の統計を見ると、男性の3.5人に1人、女性では5.6人に1人が生涯を未婚で通すとのこと。また、結婚したカップルの3組に一組は離婚するとされる中、この日本の社会における(いわゆる)「おひとり様」の存在感は増すばかりと言えるでしょう。

 リクルートが昨年9月に20‐40代の未婚男女を対象に行った調査では、「現在恋人がいる」人は29.7%と3割を切り、「(いずれは)結婚したい」とした人も、男性で43.5%、女性では49.3%と、いずれも半数を割っている状況です。

 もはや若い世代の間では、「一生ひとりかもしれない」というのは普通の感覚と言えでしょう。しかしその一方で、税金や社会保険などの社会制度は依然として「結婚して子どもがいる人」を中心に設計されているのもまた事実。1人暮らしは気楽という見方もありますが、若者からシニアまで独り者が(本当に)憂いなく安心して暮らせるようになるには、もう少し時間がかかるのかもしれません

 そんな折、2月29日の経済情報サイト「東洋経済ONLINE]に、ジャーナリストの山田稔氏が『「悠々自適?」家計調査に見るシニアの暮らしぶり』と題する一文を寄せているのを見かけたので、参考までにその一部を紹介しておきたいと思います。

 この論考で山田氏は、670万人といわれる単身シニア(男性)の暮らしぶりを総務省の家計調査データから検証。併せて34歳以下の平成生まれの男性シングルと消費支出の内容を比較することで、それぞれの生活実態を浮き彫りにしています。

 まず、単身シニアの生活ぶりですが、バブル景気に浮かれ、リーマンショックに青ざめたこの世代のこと。単身理由は未婚、離婚、死別とさまざまですが、その消費内容からは(案外と)腰の据わった暮らしぶりがうかがわれるとしています。

 氏によれば、彼らの年間の消費支出は186万2588円。食料費は57万2256円で消費支出の3割を占めており、(体力づくりもあって)好きな魚を中心に肉もしっかり食べているということです。

 因みに、食生活で言えば、(健康を考え)野菜も平成生まれの若者と比べて3倍も摂取。子どものころからの習性で牛乳はしっかり飲み、腸内環境を意識しているのかヨーグルト摂取も多い。さらにお酒は家飲み中心で、外食はあまりしないと氏は話しています。

 家にいる時間が多いので光熱・水道代の負担は大きく、主な情報収集源である新聞には年間2万7653円も支出。NHK受信料(1万2729円)を加えた放送受信料は2万7593円で、他世代よりも圧倒的に多いということです。

 電話も大好きで、固定電話1万5180万円と携帯5万3995円合わせて6万9175円も払っている通信費は、平成生まれの若者4万9419円を大きく上回るとされています。

 嗜好品では、たばこの年間支出額2万6236円は35-59歳の4万4086円に次いで多く、交際費は年間8万5730円。孫へのお年玉や親戚づきあいなど、贈与金も5万9880円に及ぶということです。

 一方、「失われた30年」の時代に生まれ育った25歳から34歳の男性では、単独世帯が全体の3割近くを占めています。彼ら平成生まれのシングル男性は勤労者世帯が大半で、年収の最多は300-400万円と400-500万円が拮抗。300-500万円が全体の過半(54%)を占めていると氏は説明しています。

 折からの晩婚化の進行で未婚率が高止まりする中、男性の25歳から34歳の単独世帯率は28.8%で、他世代と比べ最も高くなっているということです。

 さて、そんな世代の食生活の特徴は、外食中心で家ではあまり食べないこと。魚介類消費額は8944円で単身シニア男性の僅かに4分の1。一方、外食は24万8006円と単身シニア男性を圧倒していると氏はしています。

 好きな料理は和食、中華そば、洋食、焼き肉の順で、アルコール(家飲み)の消費額は1万2879円で単身シニア男性の3割ほど。その分、外での飲酒代は多く、5万6748円と35-59歳に次いで多いということです。

 一方、女性の眼を意識してか、彼らの世代ではファッション・美容への関心は(シニアとは比較にならないほど)高いとされています。理美容サービスに3万6559円とお金をかけ、被服及び履物に7万1242円支出している。教養娯楽にも投資を惜しまず、年間31万9750円は他の世代と比べ断トツに多いということです。

 書籍代だけで3万7386円、入場・観覧・ゲーム代5万9930円も突出している。これは単身シニアの倍以上で、映画・演劇9691円、ゴルフプレー料金8052円などを見ると、やはり若いだけにアクティブな一面が見えてくるというのが氏の認識です。

 こうして比較してみると、(「高度成長の時代」と「失われた時代」という)大きく異なる世相やカルチャーで生きてきたシニアと平成生まれの若手の消費スタイルには、それぞれ特徴があることが改めて明らかになったと氏は話しています。

 自宅を拠点に案外しっかりとした生活ぶりを見せる単身高齢者と、堅実な中にも外に目を向け、活動的な面を見せる独り暮らしの若者たち。昭和生まれのシニア、平成生まれの若者世代。いずれも特徴的な消費スタイル・ライフが、令和のイノベーション社会の中で何らかの化学反応を起こし、新たな動きにつながっていけば面白いと話す山田氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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