走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

何故差ができてしまうのでしょうか?

2017年10月10日 | 仕事
NHK の新聞記者の労災による死亡が決まったようですね。医師や研修医の異常に長い労働時間、年間に多くの人たちが過労死をしている日本。

欧米では看護介護機器の発展で自力で動けない患者の介助は大きく変わりました。日本ではそのような看護介護機器の導入も進んでいないため、腰を痛める看護師や介護士が後を絶たないとか。

何故なんでしょう?日本人の勤勉、勤労は世界でも有名です。だからと言ってこのまま仕事中に怪我をしたり病気になったり、死んでしまう人を作り続ける理由にはなりません。

欧米圏と日本の大きな違いを1つあげるならば、労働保険だと思います。

雇用主は社員のために労働保険に入っている事を義務付けられます。保険金を支払い、保険局の指導項目に沿って仕事をしなければなりません。例えば休憩時間の割合、労働時間の長さ、職場の安全性 (ヘルメットや服装、用具や靴、机の高さ、椅子の形状に至るまで)などです。

数ヶ月前シェフの息子が職場で怪我をしました。キッチンに出来た水たまりで足を滑らせ膝と足首を捻挫しました。労災です。治療費は州の保険ではなく労働保険から支払われます。保険会社は怪我の状況、職場の状況を細かく聞きます。労働環境に改善の余地があると雇用主に対して指導をします。従わない場合、保険料金が上がったり、次の社員が怪我をした場合、保険金を支払わない事にも なります。そうなると州の保険も使えないので会社が治療費を支払わなければなりません。自腹を切る痛さです。

看護師時代にこの保険にお世話になりました。患者を介助中に患者が想定以外の動きをしたために起こった事故でした。こういう事故を防ぐには介護機器の導入が一番です。労働保険会社は雇用主にそれを指導します。雇用主にとっては職員の安全もさながら、自腹を切る事を避けたい経済的理由が生まれます。それが介護機器導入のモチベーションになるのです。

日本は職場の怪我に関しても個人の責任転換をしているように思えてなりません。会社の利益のためには多少の犠牲はいとまないかの如き。自社の利益が最優先され、患者や職員の安全性は二の次のような。いやそうしたくてもそう出来ない仕組みだから (診療点数が上がるわけでもない)でしょうか?

病院でも企業でも自浄作用をとうの昔に無くした日本に、ブラック企業とレッテルを貼ったり、幹部が土下座をして謝って状況が変わるものではありません。個人ではなく雇用主自体が痛みを経験するシステムがない限り、酷い労働条件は当たり前のようにはびこるのではないのでしょうか?

なーんてここまで書いて気づきましたが、日本にもあるんですね労働保険が。ではそれは牙のない獣なのでしょうか?何故差が出てしまうのでしょうか???誰かご存知の方がいらしたら教えてください。


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