走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

放っているように見えても、、、

2017年05月20日 | 仕事
シリーズは今日もお休み。

脳の前頭葉の役割をご存知ですか?人間らしさを作り出すと言っていいほどの部分です。
実行機能。今の状況を判断したり未来を踏まえて計画したり、良いことと悪いことの分別や、問題解決能力や、社会に適合しようと言うような行動はここから来ます。

私の患者層の方々は日常生活の活動域が低下している人が多い。手足が不自由で低下しているのではなく、前頭葉の機能が低下しているから、そう言う面で社会性というか、大人らしい行動が低下しているのだ。

なので予約日に時間通りに診察に来る。こんな簡単なことさえ難しいのだ。だから私は外回りの時に患者に声をかける。診察だってする。欠けているところを補うことで健康が向上するなら無駄だとは思わない。

しかし気をつけていることもある。バランスを大切にする事だ。家に住んでいる人を診察に来ないからと言って家まで無断では押しかけない。同意をもらい家の中に入る。

しかし、ホームレスの人にとって自分の空間と外を分けるドアも壁もない。なので彼らのプライベートは侵害されやすい。だから新顔には積極的に声をかけるが他には何か目的でもない限り (検査や予約を確認とか、フォローアップのためとか) ある程度の距離から手を振ったり声をかけて自分の存在を知ってもらう程度にしている。向こうからのサインを待つと言う事。

昨日の外回り中。診療車が駐車している数メートル先で、ホームレスさんたちが多くたむろっていた。白昼堂々と薬を始めた。1人が奇怪な行動を始めたが、声をあげるわけでもなく、危害を加える様子もない。呼吸が低下すれば医療者としてしなければならない事があるので車の中から注意を払って見ていた。

一般人が車に近づいて来た。あんたナースなんだろ。放っておくのか?と。
彼は私がここにいる事を知っています。私のケアが必要なら彼はここに来るし、悪化すれば私から出て行きます、と言うと。

じゃあ何もしないんだ、と言われました。んんん、、、、

しばらくして奇怪な行動をしていた彼の呼吸回数が減り、返答も鈍くなり私は彼に拮抗剤を2本ほど投与しました。その一般人は警察を呼んだようで、警察もやって来ました。忙しい時に警察の相手もしなければならず、、、あ、こんなこと言っちゃいけませんよね。

拮抗剤投与の後も安定するまで観察して完全に回復してから、心のケアやら拮抗剤のキットのトレーニングやらなどなど、沢山の事をしてからその場を去ってもらいました。

放っておいたのではない!ってやっぱり一般人にはわかってもらえないよね。



今年はカナダ建国150年。カナダの国旗らしいチューリップ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。