走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

行き着くところまで

2015年09月27日 | 仕事
何年も高血圧と知っていながら降圧剤を飲まなかった。理由は薬代が出せないから。

季節労働者で収入に安定がない。控除を受けるためには税金の納税記録が必要。

ココ何年も申告していない。理由は課税されて収入が減ると思っているから。

明日食べることだけに注目している。他のことは全く見えていない。1ヶ月先1年先に何が待ち受けているかなんて考える余裕なんてない。そんな彼に1年ぶりに会った。免許更新の為の身体検査が必要だったから。

聞けば車の保険の更新もせず、保険の切れた車で半年も働き、警察の取り締まりで発覚。免許証の期限もとっくの昔に切れていた。免許証は没収され仕方なくやってきたのだ。

血圧は以前以上に高く、心雑音が著名。心雑音は以前なかった。レントゲンでは肥大した心臓が写っていた。

これじゃあ免許の更新できませんよ、、、。

服用を始めて血圧をコントロールして、心臓内科で心臓機能の総合評価もしてもらいましょう。眼底検査も必要ですね。

車は彼の仕事に必須なので、彼も必死。一週間に一回の診察(一週間後と薬を増量) にちゃんとやってくる。過去1年仕事を優先させ診察に来なかった時と大違いだ。

彼は免許の更新に必死だ。で、前回の診察で彼が言った。

時間がかかりすぎる。家賃の滞納で大家から催促は来ているし、ボスの車に同乗させてもらい仕事に行っていたが、拉致があかない。違法でも運転するしかない。

そんなことしたら次は車を没収されますよ。

そんな事を気にしていられるか!こっちは食うか死ぬかなんだ!

はい、あなたの病状も行く行くは生きるか死ぬかの状態なんですが。


1年前にもこんこんと説明した。服用をすれば仕事中の動悸や息切れ、めまいも無くなる。そんな体で屋根に登っていたら仕事中に転落事故を起こす。死んだら働けませんよ。服用しないことはジワジワと体を病んで行かせることなんですよ。

税金を申告すれば薬の控除もあるし、体調が崩れた時に生活保護だって受けることができる。長い目で見れば重要なことですよ。

貧乏でないあんたにはわからないよ!

はい、わかりません。私には全く理解ができません!!!と叫びたくなる。


彼は一人ではありません。同じような思考回路の患者が私のところに大勢います。健康がなくなるまで保険料は無駄金と保険料さえ滞納して保険が受けれない人もいます(アメリカと違い公の保険料は低いにも関わらず) 。きちんと段取りを踏めば政府がサポートしてくれるので収入がゼロになる市民はいないはずなのに、、、どんな状況でも最低限の暮らしは保障されているのに、、、

先述の彼は免許奪回に必死で早く早くと私を急かします。こうなることは1年前にも言ってあった。あなたの緊急事態の責任は私にはありません、と言いたくなる気持ちをぐっと抑えて今日も診察です。


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