原題 Chce sie zyc
英題 Life feels good
2013年 ポーランド
原題の意味は「ぼくは生きたい」
その通りの映画です
どうしてこんな邦題にしたのか理解出来ません!
実在の人物がモデルです
1980年代のポーランド
姉と兄の3人兄弟の末っ子として生まれたマテウシュ(ダヴィド・オグロドニク)は脳性マヒの障がいを持っていました
医師からは植物のような状態と診断され、養護施設に入れることを勧められますが、両親は希望を捨てず自宅でマテウシュを育てます
母親(ドロタ・コラク)はマテウシュを抱きかかえて歩く練習をさせ、父親(アルカデイウシュ・ヤクビク)は普通の男の子として怒りを表す方法を教えます
実はマテウシュは身体障がいはあっても知的障がいにおいては何ら異常は無かったのです
考えたことを言葉として表現することは無理でも、洞察力に優れ知的で豊かな感情を持っているのです
女性(特に胸)にだって興味はあるのです
それは、彼自身のナレーションが入ることで観客に伝えられます
しかし、現実には家族を初めとしてマテウシュの周囲の人々には伝わりません
父親が亡くなり、母親一人でマテウシュの面倒を見てきたものの、高齢となって腰を痛めてしまったこと
出産間近の姉が夫と共に同居し始めたこと、兄は軍に入隊し家を離れたこと
などが重なり、とうとうマテウシュは施設に入れられてしまいます
そこで彼が受けた扱いは全く酷いものでしたが、父親に教わった“大丈夫”の言葉を胸に耐える日々でした
映画のかなりの部分は、マテウシュの辛い経験で占められており重苦しい雰囲気に包まれていますが
終盤になって、マテウシュが人の言葉を理解出来ており、瞬きで意志を伝えることが出来ることがわかると様相は大きく変わります
その手段は『シンボル』という図柄を組み合わせたものに意味を持たせた絵を並べた紙を見せ列と行の中から、伝えたい言葉を瞬きの回数で相手に知らせるというものでした
母親の問いかけに最初にマテウシュが答えた言葉
「私 違う 植物」
この時、マテウシュは早や25歳になっていました
長い年月息子を理解してやれなかった母親の涙、ずっと辛抱を強いられてきたマテウシュの哀しみと理解してもらえる喜びに、思わずもらい泣き
映画はいくつかの章に別れており、各章の冒頭に『シンボル』とマテウシュの声で意味が伝えられます
意味を持つ絵柄なのだろうと思っていましたが、終盤のシーンと繋がっていたことが分った時は思わず膝を打ちたくなりました
父親に教わった怒りの表現、母親に手伝ってもらった歩行訓練
これらをマテウシュが自分の物としており無駄でなかったことを表すシーン
植物のような状態と診断されたマテウシュが、尊厳を取り戻し自信に溢れた表情を見せるシーン
などなど
思い出すに、実に実に味わい深い映画です
単に障がい者を描いたのではありません
民主化という大きな変化を遂げたポーランド社会を背景に、障がい者も健常者も、相手に伝える、ということの大切さに気づくべきだ、ということを伝える作品です
それにしても!
ダヴィド・オグロドニクとマテウシュの少年時代を演じたカミル・トカチの体当たり演技に感服いたしました!
主役の俳優さんの演技、本当にすごかったですね。
彼が出ている『イーダ』、是非ご覧ください。これも素晴らしい作品です。
オスカー獲れたらいいな~、と思っています。
人と人のコミュニケーション方法は何通りもあるし、なんといっても決めつけはいけませんね。
「イーダ」知ってはいますが未見です。
是非、観たいです!