徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:ピエール・ルメートル著、『その女アレックス』(文春文庫)

2015年12月11日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

このところあまりブログ更新してなかった理由は「読書にふけっていたから」、という実に単純なものですが、この本、ビエール・ルメートルの『その女アレックス』は今朝読み終えました(夜更かしした上に、出勤時間を遅くして)。
私は普段犯罪ものも翻訳ものも読むほうではないのですが、これは面白かったです。さすが 英国推理作家協会(CWA)賞インターナショナル・ダガー賞受賞作品と言うべきでしょうか。



ストーリーは3部に分かれていて、アレックスの誘拐・監禁を扱った第1部(アレックスの様子と誘拐事件を捜査する刑事ヴェルーヴェン)、独自脱出後のアレックスの行動と誘拐事件から一転「正体不明の女(=アレックス)」を追うことになったヴェルーヴェン警部を描写する第2部、そしてその裏にある事実や一連のアレックスの行動の動機を解明していく第3部という構成ですが、第3部の3分の一くらいまで読者(少なくとも私)は?????でいっぱいのまま。一度読み出したら、いっぱいの???が解き明かされないままにはしておけないストーリー展開。ミステリー・サスペンスファンには堪らない話なのではないかと思います。いろんな賞を受賞しているだけはあります。

そして日本語訳も完成度が高いですね。ウン十年前の新潮文庫辺りのフランス文学とか哲学とかの翻訳本なんて読みづらくてどうしようもなかったという印象が残ってますが、『その女アレックス』は日本語作品としてもレベルが高いと思います。ダジャレ的なものは説明的になってしまっているので、ちょっと残念な感じですが、ほんの2・3か所のことですので、「何が何でも原文を」と思ってしまうことはありません。もっとも私の初級レベルのフランス語能力で読みこなせるようなものではないという悲しい現実もありますが。

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