徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ:世論調査(2016年11月11日)~次期ドイツ大統領は?

2016年11月11日 | 社会

10月のZDFの世論調査は、副業が忙しくて2回とも飛ばしてしまいましたが、今日発表されたポリートバロメーターは、また私見を挟みつつ以下にご紹介します。

次期ドイツ大統領

ドイツでも大統領交代が近づいています。ただ、ドイツの場合大統領は直接国民に選ばれるわけではなく、国会と州の国民代表者で構成される連邦集会で選出されます。役割は象徴的なものが主ですが、政治的な発言が制限されたりするようなことはなく、かなり自由度があります。任期は5年で、再選は1回のみ許されています(基本法第54条第2項)。

現職のガウク大統領の任期が来年2月で終了するため、現在候補者選定の最中です。現政権を担う連立与党CDU、CSU、SPD3党共通の候補者を結局立てることができなかったため、まだ候補者議論が続きそうです。

世論調査では、現外相のシュタインマイヤーが次期大統領として最も支持を集めていますが、半分は「分からない」と回答しています。

誰が一番大統領としていいと思いますか?:

シュタインマイヤー 25%
ランマート 4%
ガウク 4%
クレチュマン 2%
ケスマン 2%
その他 11%
分からない 50% 

 

誰が大統領になるか、あなたにとって重要ですか?:

大変重要 17%
重要 44%
それほど重要ではない 28%
全く重要ではない 10% 

 

私にとっては、大統領が誰になるかさほど重要ではないですね。誰が首相になるかという問題よりも明らかに重要性は低いです。ドイツ大統領はクリーンで落ち着いたイメージがあれば誰でもいいんじゃないかと思います。ドイツ大統領にはなんとなく「国父」的なイメージがあるので、女性だと座りが悪いような気がしますが、どっしりとしたイメージの女性候補者がいれば、それでもいいように思います。現在の閣僚や与野党の幹部の中にはそのような女性候補者は見当たらないのですけど。

連邦議会選挙2017

もし次の日曜日が議会選挙ならどの政党を選びますか?:

DU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 34%(+1)
SPD(ドイツ社会民主党)  22% (-1)
Linke(左翼政党) 10%(変化なし)
Grüne(緑の党) 13%(+1)
FDP (自由民主党) 5%(変化なし)
AfD(ドイツのための選択肢) 12%(変化なし) 
その他 4% (-1)

 

緑の党は連邦議会選挙前にどの党と連立するつもりなのか決めるべき?:

全体:

はい 51%
いいえ 40%

支持政党別「はい」と回答した割合:

CDU/CSU 56%
SPD 45%
左翼政党 54%
緑の党 35%
FDP 52%
AfD 51% 

 

緑の党は連邦議会選挙後どの政党と連立政権を担うべきですか?:

全体:

SPDと左翼政党 36%
CDU/CSU 48%
分からない 16%

緑の党支持者:

SPDと左翼政党 63%
CDU/CSU 32%
分からない 5%

勝った政党に数合わせで連立して政権に参画する、というかつてのFDPと似たような正当に見られがちな緑の党ですが、緑の党支持者の間では比較的強い左翼傾向が見られます。かつて国民政党と言われたCDU/CSUやSPDの弱体化が顕著で、第3、第4政党の緑の党やAfDとの差が縮まって来ていますし、緑の党も結党から36年経って、弱小政党とはもう言えない既成勢力になっていますので、選挙前に連立相手を決めることの重要性はより高まっていると言えます。

 

1998年10月以降の連邦議会選挙での投票先推移:


政権満足度(スケールは+5から-5まで):0.9(前回比+0.3)


政治家評価

政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで)

  1. フランク・ヴァルター・シュタインマイアー(外相)、2.3(↑)
  2. ヴィルフリート・クレッチュマン(バーデン・ヴュルッテンベルク州首相、緑の党)、1.9 (→)
  3. ヴォルフガング・ショイブレ(内相)、1.7(→)
  4. アンゲラ・メルケル(首相)、1.6(↑)
  5. ケム・エツデミール(緑の党党首)、0.9(↓)
  6. グレゴル・ギジー(左翼政党)、0.9(→)
  7. トーマス・ドメジエール(内相)、0.7(↓)
  8. ウルズラ・フォン・デア・ライエン(防衛相)、0.6(↑)
  9. ジーグマー・ガブリエル(経済・エネルギー相)、0.5(↓)
  10. ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・バイエルン州首相)、0.3(↓)


自動車通行料金


自動車通行料金はバイエルン州首相が提唱したもので、特にドイツを通り過ぎる外国籍自動車を狙って料金を取り立てる趣旨の物でした。それが差別的で、域内の自由な交通を妨げる、とEUが異議を唱えたので、もう議題に登らないと思っていたのですが、忘れたころにEUのゴーサインが出たようで、再び政治的アジェンダに登場。

自動車通行料金は、相応の自動税減税がある場合、賛成しますか?:

全体:

賛成 53%
反対 42%

支持政党別賛成の割合:

CDU/CSU 59%
SPD 51%
左翼政党 36%
緑の党 46%
FDP 55%
AfD 57% 

 

自動車通行料金が導入されれば、負担が重くなる?:

はい 64%
いいえ 31%
分からない 5% 

一応、今のところ、建前は国内の自動車使用者の負担が増えないことになっているのですが、それを真に受けている人は少ないようですね。

 

トルコのEU加盟交渉

トルコは、クーデター未遂事件以降、エルドアン大統領の粛清政策が続き、ついに政府に批判的な新聞社Cumheriyetの 編集長および数人のジャーナリストや親クルドの政党HDP(トルコ議会で59議席を占める第3政党)の政治家数人が先週逮捕されるに至り、ドイツ外務省がジャーナリストをはじめとする政府に批判的なトルコ人に政治亡命を提供するほど(ツァイトオンライン、2016.11.08「外務省:ドイツは迫害されているトルコ人に政治亡命を提供」参照)。今日はCumheriyetの発行人およびHDPのコンサルタント5人が逮捕(ハンデルスブラット、2016.11.11.「トルコ:親クルドのHDPコンサルタント5人逮捕」参照)。HDP議員らは先週から議会ボイコット。エルドアンはどうやらHDP解体を目指しているようです。こんな事態になって、トルコが民主主義と考える人はいません。EU加盟の前提条件の一つは民主主義的価値観の共有ですが、トルコにはもうその資格はありません。「政治亡命」をドイツ外務省が提供している時点で、「安全な国」という評価も無効になり、本来なら難民をそのような国に送還することは許されないのですが。。。

トルコとのEU加盟交渉は?:

中断 45%
様子見 46%
継続 7% 

 

トルコの状況:ドイツは批判を控えるべきですか?:

はい 12%
いいえ 83%
分からない 5% 

批判を控えるべき、というのはEU・トルコ難民協定の存続を危惧している人たちからも来ているのでしょうが、実質上ディールは崩壊しています。政治的迫害がある国へ難民を送還するのはジュネーブ条約に違反します。トルコはいかなる批判も受け付けず、EUへのビザなし入国権を要求してますが、とんでもないことです。

EU加盟交渉を続けるべき、あるいはトルコ政権批判を控えるべき、という人の中には、トルコの地政学的な重要性や、IS撲滅における軍事的重要性や、トルコとロシアの接近を警戒する向きもあるかと思いますが、だからと言って、エルドアンのやりたい放題を認めてしまっては、それこそヨーロッパのダブルスタンダードとの誹りを免れないことでしょう。

トルコに関しては色々苦言したいことがたくさんありますが、ここでは控えておきます。

 

環境政策

2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が正式批准されました。ドイツではその取り組みの具体案が審議の最中です。

ドイツでは環境保護のために十分な対策が取られていますか?:

現在:

やりすぎ 9%
丁度良い 36%
足りない 52%

2014年9月:

やりすぎ 10%
丁度良い 38%
足りない 49% 

2年前に比べて「足りない」と感じる人が増えているようです。ガブリエル経済エネルギー相による改革(太陽光エネルギーの買取額の減額、風力発電設備建設助成金の削減など)の影響なのではないでしょうか。長らく環境保護はドイツのトレードマークにされてきましたが、現状はそれにふさわしい政策が取られていないと私も感じています。

 

経済状況

一般的な経済状況:

いい 58%
どちらとも言えない 36%
悪い 5% 


自分の経済状況:

いい 64%
どちらとも言えない 31%
悪い 5%

自分の経済状況を「いい」と判断している人が64%もいることに若干驚きを覚えているのですが、景気がいいことの表れなのか、多少の見栄が入った回答なのか。。。

 

ドイツの経済は今後…?:

よくなる 25%
変わらない 51%
悪くなる 20% 

8月よりは「よくなる」と回答した人が多くなっています(+7)。その分「悪くなる」と回答した人は減っていますね(-4)。

 

この世論調査はマンハイム研究グループ「ヴァーレン(選挙)」によって行われました。インタヴューは偶然に選ばれた有権者1.276人に対して2016年11月8日から10日に電話で実施されました。

次の世論調査は2016年11月25日ZDFで発表されます。

参照記事:

ZDF、2016.11.11., "Politbarometer"
Die Zeit online、2016.11.08., "Auswärtiges Amt: Deutschland bietet verfolgten Türken Asyl an"
Handelsblatt、2016.11.11., "Türkei: Fünf Berater von pro-kurdischer HDP festgenommen"