ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ショーシャンクの空に (The Shawshank Redemption)

2007年04月07日 | 映画
♪お気に入り映画23


■ショーシャンクの空に(The Shawshank Redemption)
■1994年 アメリカ
■監督…フランク・ダラボン
■音楽…トーマス・ニューマン
☆ティム・ロビンス(アンディ・デュフレーン)
☆モーガン・フリーマン(レッド)
☆ウィリアム・サドラー(ヘイウッド)
☆ボブ・ガントン(ノートン所長)
☆クランシー・ブラウン(ハドレー刑務主任)
☆ジェームス・ホィットモア(ブルックス)
☆ギル・ベロウズ(トミー)
☆マーク・ロルストン(ボグズ)


 無実の罪で終身刑を宣告されたアンディ・デュフレーン。ショーシャンク刑務所に投獄された彼はさまざまな苦難に見舞われるが、強固な意志と忍耐で自分自身を保ち続け、希望を決して捨てようとはしない。
 看守たちの所得申告を手伝ってやったり、州議会に手紙を書き続け、刑務所内の図書室あてに予算を獲得したり、希望する囚人には高卒の資格を取らせたりと、人間らしく、積極的に生きようとしている。物静かで知的なアンディは、芯の強さと誠実さで他の囚人たちから徐々に厚い信頼を得る。

 
 対するレッドは、基本的には心の温かい人物だが、「希望を持つのは危険だ。正気を失わせる」と考える。長い間の刑務所暮らしで刑務所内で生きるための価値観を身につけたレッドは、アンディと同じく終身刑である。レッドは、刑務所内でこそ調達屋としてみんなから信頼されているが、塀の外では自分はただの前科者に過ぎないことをよく知っている。
 希望を持ち続けるアンディと、希望を持たないようにしているレッド、正反対の価値観を持つふたりの間に生まれた友情と、「希望と自由」がこの映画の主題だと思う。


 アンディが決して「希望と自由」を捨てようとはしないことが分かる場面がいくつもある。
 サディスティックなハドレー刑務主任に掛け合い、ハドレーにかかる相続税への対策を講じるかわり、一緒に汗を流している囚人仲間にビールを振舞うよう頼む。これはハドレーへのご機嫌取りではなく、仕事のあとのビールのうまさを感じる人間らしい感情を囚人仲間に味あわせてやりたかったのだと思う。
 あるいは、モーツァルトの「フィガロの結婚」のレコードをかけ、懲罰房に入れられる、という場面だ。懲罰房から出てきたアンディは仲間に、「頭と心でモーツァルトを聴いていた」と言う。「音楽は決して人から奪えない。心の豊かさを失ってはだめなんだ。心の中には希望があるんだ」というアンディは、音楽を希望と自由の象徴として捉えているのだと思う。
 そのあとでレッドにハーモニカを贈ったアンディは、レッドに「希望を捨てるな」と言いたかったのだろう。


     


 年老いた図書係のブルックスが仮釈放となるが、人生の大半を刑務所で過ごした彼は外の世界へ出てゆくことに対して大きな不安を持つ。レッドはこう説明する。
「刑務所の壁はおかしなものだ。最初はそれを憎むが、次にそれに馴れてゆく。時間が経つにつれそれを頼るようになってしまうんだ」
 これが「刑務所馴れ」というものだ。ブルックスは長い間の刑務所暮らしで完全に図書係として順応してしまっている。彼は、刑務所内では存在する場所のある人物だが、一般社会では、自分の存在意義を見出すことができなかった。ブルックスは出所後の生活に順応できず、孤独と不安から自殺してしまう。
 このことがあったのちも、アンディはジワタネホ(メキシコにある太平洋に面した町)でホテルを経営することを夢みて「希望を捨てるな」と考える。しかしレッドは「そんな夢は捨てろ。今は塀の中なんだぞ。選択肢はふたつ。必死に生きるか、必死に死ぬか、だ」と言う。ふたりの価値観は正反対のままなのである。


 アンディは、ノートン刑務所長が不正な手段で作った裏金の処理と運用を任されるようになる。スティーブンスという架空の人物を作り上げ、その口座を使って裏金を"洗濯"するのである。
 そんな折りアンディは、新たに入所してきたトミーから、自分の無実を証明できる話を聞き、所長に再捜査を頼むが、不正の発覚を恐れる所長は話を聞き入れない。そのうえハドレーを使ってトミーを射殺する。このことがきっかけでアンディは脱獄の決行を決意する。
 脱獄に成功したアンディは、彼を自分の都合のいい奴隷にしたノートン所長の不正の証拠を新聞社に送り、「スティーブンス」の金を銀行から引き出してメキシコへ向かう。ありきたりの脱獄物語なら、ここで終わってしまうだろう。しかしこの作品の良いところは、その後仮釈放になったレッドが、アンディを探す旅に出るところまで物語が続いている点にあると思う。


     


 レッドも仮出所後、ブルックスと同じ「刑務所馴れ」のために、一般社会に順応できない。もう一度刑務所に戻りたいとさえ願う。しかし、アンディとの約束を思い出したレッドは、アンディに教わった場所を探す。そこにはいくらかの現金とアンディからの手紙があった。手紙には「ぼくのところにこないか」と書いてあった。レッドはここではじめて「希望」に身を委ねることを決めたのだと思う。そして「必死に生きるため」にアンディのところに向かうことを決心する。
 青い空、青い海が見えるジワタネホの浜辺で、ついにふたりは再会する。


 見終わったあとで爽快感さえ沸き起こってくる良い作品だと思う。
 この物語からは、たとえば自分が落ち込んでいる時に必要なエネルギーやメッセージが発せられている。
 アンディがレッドに言った言葉、
「心の豊かさを失ってはだめだ」「希望を捨てるな」、
 あるいはアンディがレッドに宛てた手紙の中の一節 、
「忘れてはいけない。希望はいいものだ、たぶんなによりもいいものだ。そしていいものは永遠になくならない」
 これらの言葉は、自分が厳しい局面に向き合っている時にはきっと元気をくれるだろう。



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2 コメント

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Unknown (紫苑)
2007-04-09 20:37:08
私が今まで観た映画の中で、一番良い映画だと思っています。
脱出に成功した時は、思わず一緒に叫びたい気持ちになりました。

最後になって、話の流れの中に色々と伏線があるのがわかり、
2度目、3度目と観る度に、『あぁ、あの時ああしたのね、こうなってたのね』と、
観る楽しみが増します。

今でも3ヶ月に1度くらい観ます。
ビデオが擦り切れそうなので、DVDを買おうかと考えてます。

先週『愛情物語』のDVDを買いました。
これもビデオが擦り切れそうになるくらい観たからです。
ご存知だとは思いますが、エディ・デューチンの伝記です。
デューチンを演じるタイロン・パワーが弾くピアノを、
影でカーメン・キャバレロが弾き、中でもショパンのノクターンをジャズ風にアレンジした「トゥ・ラブ・アゲイン」が有名になりました。

私はこの曲を弾くのが夢ですが、原曲のショパンのノクターンop9-2が、
やっと弾けるようになったので、これから練習しようと思っています。


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紫苑さん (MINAGI)
2007-04-10 11:26:22
壁に掘られてポスターで隠された穴が発見される場面、良かったですね。いい意味で意表をつかれました。また、脱獄が発覚した場面のあとでどのようにして脱獄したかを明かす編集も良かったと思います。
無実の罪で投獄されるという重い映画ですが、見終えたあとは爽やかな気持ちになりますね。

今はDVDも安く、手に入れやすいので助かります。

>愛情物語
 これはまだ観たことがないのです。
 でも、カーメン・キャバレロが弾く「トゥ・ラヴ・アゲイン」は高校生くらいの時から聴いてましたよ。もちろん今までに何度も演奏したことがあります。演奏するのも好きな曲です。
 練習、がんばってください。早くこの曲がマスターできるといいですね。(^^)
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