言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

民主党も勉強している

2011-05-27 | 日記
田中宇 『日本が「対米従属」を脱する日』 ( p.14 )

 09年8月の総選挙で民主党が勝つことは、事前に予測されていた。だが、政権をとった民主党が対米従属からの離脱や中国・アジア重視の方向性を打ち出すことは、選挙の直前まで明確には表明されていなかった。民主党のマニフェストには、東アジア共同体の推進や、対等な日米関係がうたわれていたが、それらの方針は詳述されておらず、選挙の争点にもならなかった。米国が金融危機に陥る前、民主党は、自民党以上に積極的な対米従属の方針をとるネオコン戦略を提唱していた。つまり民主党は、対米従属の強化から、対米従属の離脱とアジア重視へと、180度転換したことになる。
 鳩山政権は、日米同盟を重視すると何度も言っており、表向きは対米従属の離脱ではない。だが、中国との戦略関係強化や東アジア共同体の積極推進は、これまでの対米従属一本槍の自民党政権下では考えられなかったことで、全体としてみると鳩山政権の戦略は対米従属からの離脱である。そしてこれは、米覇権崩壊と多極化という、世界の今の流れに沿ったものとなっている。

 以前ネオコン戦略を掲げていた民主党が、政権をとったらなぜ対米従属からの離脱を模索しているのか、その転換の背景は明らかになっていないが、小沢一郎はリーマン倒産後、ドルが崩壊して世界が多極化していく流れを米国の中枢から知らされたのではないかというのが私の推測だ。

(中略)

 私は、08年秋のリーマン倒産からG20サミットにかけての一連の動きを見て、これはドル崩壊と通貨の多極化に向かう動きだと分析し、その記事を自分のウェブサイトで発表したり、09年1月に『世界がドルを棄てた日』(光文社)という書籍を出したりした。それを見て、民主党の二つの筋から、昼食をともにする誘いが、別々に時期をずらして私のところに来た。私が感じたところでは、彼らの両方が私に会うことを必要とした質問は、「あなたはドルが崩壊過程に入ったと分析しているが、この分析は誰かの影響で書いているのか、それとも自分で個人的に思っただけか」ということだった。私の答えは、「他からの影響ではなく、個人的に思っただけだ」というもので、両者との接触は一度ずつで終わった。
 この経験から私が考えたことは、「もしかして民主党は、ドルが本当に崩壊するのかどうか、日本が対米従属を続けられなくなる米国の覇権喪失が起きるのかどうか調べていたのではないか。その一環として、ドル崩壊を予測している私のところにも人が来たのではないか。私が米国などの筋から直接情報を得てドル崩壊を予測しているのなら、私は民主党にとって継続的に会った方がよい人になったかもしれないが、私が公開情報をもとに一人で勝手に分析しているだけだったので、再度会う価値はないと判断したのではないか」ということだ。私は何年か前には、内閣調査室の筋と思われる人から昼食を誘われ、遠回しに「あなたの情報源は何ですか」と尋ねられたことがある。その人も、私が全く一人きりで分析していると知ると「それは偉い」と言ったものの、面会は一度きりだった。
 民主党に関する以上の考えは私の憶測であり、民主党政権がどんな経緯で対米従属の離脱を模索することにしたのかは定かではない。だが、少なくとも言えるのは、日本は自民党から民主党への政権交代によって、絶妙なタイミングで対米従属からの離脱を模索し始めたということだ。日本の政権交代は09年9月中旬だが、その2週間後には米国ピッツバーグでのG20サミットで、世界の経済的意志決定の中心機関がG8からG20に移転したことが宣言されるという、多極化の顕在化が起きている。
 09年8月末の選挙で、日本の有権者のほとんどは、対米従属を脱するために民主党に投票したわけではなく、単に自民党政権が行き詰まっているので一度民主党にやらせようと思っただけだろう。だがその結果、日本は国際的にみると見事な転換を成し遂げ、多極化する世界の中で東アジア共同体を提案する存在になっている。日本人は、自覚しないうちに自国の方向転換を決めていたことになる。歴史が変わる時というのは、こうして静かに訪れるのかもしれない。


 民主党は09年8月の総選挙に勝ったあと、対米従属の強化から対米従属の離脱・アジア重視へと方向転換した。「小沢一郎はリーマン倒産後、ドルが崩壊して世界が多極化していく流れを米国の中枢から知らされたのではないか」と推測している。民主党の二つの筋から、「あなたの情報源は何ですか」と尋ねられたこともある、と書かれています。



 著者は「ドルが崩壊する」「アメリカは覇権を失う」と予想されており、その予想が「正しい」という前提で書いておられるので、上記引用にみられるような文章を書かれたのだと思います。

 しかし、「資本の論理によるアメリカの自滅戦略?」や「民主化が前提の「政治面での多極化・核兵器のない世界」」で述べたとおり、著者のいう「アメリカは自ら、アメリカの覇権喪失を画策している」という主張には、まるで説得力がありません。

 このような私の考えかたを前提にすれば、「小沢一郎はリーマン倒産後、ドルが崩壊して世界が多極化していく流れを米国の中枢から知らされたのではないか」という著者の推測は、「考え過ぎ」だということになります。そんなことは、まずありえないと思われるからです。



 「米国の中枢から知らされたのではないか」という著者の発想は、「陰謀論」的です。「資本の論理によるアメリカの自滅戦略?」にも書きましたが、著者はなぜ、「陰謀」で話を進めようとするのでしょうか? それが不思議でなりません。



 また、「民主党の二つの筋」が「あなたの情報源は何ですか」と尋ねたというのは、たんに、民主党も「勉強している」ということでしょう。民主党も、「内閣調査室の筋と思われる人」も、勉強しているわけです。それだけ日本のことを、真剣に考えているということだと思います。

 著者が「全く一人きりで分析している」とわかると、以後のコンタクトはなかったのはなぜなのか、それはわかりませんが、

 「個人の推測なら価値がない」と判断された可能性や、「本当に、米国の自滅戦略が行われているのであればともかく、たんなる個人的推測であるなら、あまりにも(著者の)主張内容がおかしいので論外」だと判断された可能性などが考えられます。



 しかし、どのような事情であるにせよ、私としては、
日本は国際的にみると見事な転換を成し遂げ、多極化する世界の中で東アジア共同体を提案する存在になっている。
という方向に行き過ぎないことを願うばかりです。私には、

   独裁国家を中心として協調する東アジア共同体

など、とても考えられません。なぜなら、これは

   日本がみずから、中国の属国になることを選び、
           その歩みを推進するに等しい

からです。

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