MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

敵が見えない

2016-11-17 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
外国人医療において、一番の困難は言葉の問題だと思っていました。
だから、良質な医療通訳を配置することで
医療のアクセスを確保できると信じていたのです。

でも、最近、そうでないケースがあまりにも山積みなので
だんだんわからなくなってきました。

思えば、以前は闘う相手がはっきりしていました。
「闘う相手」が必ずしも悪いというのではなくて、
法律や制度や通訳というツールやそういうものを駆使すれば
交渉したり解決したり、合意したりできたのです。

相手は、ブラック企業だったり、やくざまがいの派遣会社だったりもあったし、
労働基準監督署だったり、国保の窓口だったり、入国管理局だったりでした。
自分を通訳者という道具として最大限使うことで
問題解決の糸口がみつかっていました。
医療現場でもそれに近い状態だったと感じます。

最近では、「言葉」の問題に、「貧困」がからみ
そして「家族」が絡んできます。

医療現場で、日本語ができないだけでなく、お金がないだけでなく、
母子が夫から捨てられる、親が子どもをネグレクトする、
認知機能が落ちて判断ができない、遺棄に近い状態もあります。

こうなってくると、医療にアクセスする機会以前の問題なのです。
やはり、母子保健と精神疾患は時間がかかります。

外国人医療で通訳していると
そもそも病院にたどり着くまでが困難であるケースが少なくありません。

誰も悪くない。
患者の過去を批判することは、今やることではない。
だから、闘うべき敵が見えないのです。

ぐったり疲れて家に帰り
同じ言語の友人に話を聞いてもらいました。
やっと眠れました。
やはり、困ったとき医療通訳者の頼りになるのは同じ通訳者だよなあと思います。
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