MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

なぜ、医療通訳者になったのか

2006-01-25 16:02:44 | 通訳者のつぶやき
医療通訳をしている人たちに、

「なぜ、医療通訳者になったか」

と聞くと

「そこに患者さんがいたから」

という答えが返ってきます。
私も同じです。通訳をやるなら、もっと楽しい観光やイベントの通訳をやりたい。

目の前に患者さんがいて、周りを見回して自分の通訳が一番「まし」だから、自分がやるしかない。「質」がどうとか言われても、まったく日本語のできない患者さんが一人で行くよりは、ついていったほうがいいからついていっているのです。だから、これはもう人道上の問題として医療通訳をやっているわけです。
この話をすると、医師は驚きます。そんなレベルの通訳がついてきているのかと。すべてのケースとは言いません。でも、多くの場合それが現状です。本当にそれでいいのでしょうか。

知らない人から突然電話がかかってきました。
「子供が風邪を引いているから、すぐ病院に来て。」
だけど、私は今日仕事を休むわけにはいきません。電話で通訳をしてあげるといっても病院が嫌がるからだめといいます。インフルエンザかもしれないといわれると、予防接種をうっていないので、感染も怖いです。何とか都合をつけて週末ならばついていってあげるといっても、待てないといいます。結局、「死にそうな病気でないと来てもらえないのか!」との捨て台詞を残してこの人は電話を切りました。

後味の悪い、嫌な感情が残りました。

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1月がくるたびに

2006-01-18 10:10:33 | 通訳者のつぶやき
今年も1月17日がやってきました。

昨年、広島に行ったとき、この街は昭和20年8月6日のことを忘れていないと感動したことを思い出しました。
神戸も平成7年1月17日を忘れていません。
でも、街はどんどんきれいになって、いつまでもあの日のことを思い出しているのは、いけないことのような錯覚を覚えます。
きれいになった街に、心だけが取り残されている人がたくさんいることを気づいているはずなのに。

新潟の被災地の友人から、今年も年賀状が届きません。年賀状を忘れるくらい、元気でいてくれればいいんですが。

ところで、各地の外国人施策を担当する方と、この非常時の通訳システムについてお話をすることがあります。そのとき、いつも感じることなのですが、その中には被災者の視点がかけていると思います。私は、震災時すでに外国人相談窓口の担当者だったのですが、自分自身が被災してしまい、すぐに救援活動にうつることができませんでした。当日は、頭から毛布をかぶり、歩いて三宮の事務所までいっても事務所は倒壊しており立ち入り禁止。資料も辞書も電話もメモも(ついでにメガネも)手元にありません。つまり、支援者となるべきものが被災者になってしまうのが災害なのです。そのとき、以前から親交のあった大阪市の相談員や大阪のNGOが連絡してきてくれたことがどんなにうれしかったか。防災は広域で連携していかなければ意味がありません。被災の中心地では想像しづらいとは思いますが、人の支援どころではない状況が展開します。
私は今でも1月がくるたびに、自分ができなかったことの多さを悔やんでいます。
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同意書違い

2006-01-11 16:21:24 | 通訳者のつぶやき
いつも明るくて元気なAさんが相談にやってきました。「胃の手術をすることになったので、昨日、手術の同意書にサインしたんだけど、少し気になって、一応確認しておこうと思って」とても、元気なので手術と聞いて驚きましたが、ご本人が落ち着いているので、あまり心配しませんでした。
とりあえず、同意書の確認をしようと思い、Aさんは同意書の控えを持ってきていなかったので、ご本人から病院に電話してもらいました。担当の看護婦さんはてきぱきと「あれ?昨日サインしてもらったのは輸血の同意書ですよ。ご本人は、はいはいってサインしてらしたから、ちゃんと理解しているものだと思っていました。」と答えてくれました。説明すると、本人は「輸血」と聞いて、自分の手術が危険なものなのだと思い気の毒なくらい狼狽しています。
「手術の同意書にはサインしないと手術をしてもらえないと思って、あまり内容はわからなかったけど先生を信頼しているから大丈夫だと思った。輸血の同意書をとるとは予想していなかった」とAさん。
日本人でも細かく書かれていることのすべてを理解してサインしているわけではないかもしれません。もちろん同意書を読まずにサインをしてすべてを医師に任せるというのも選択肢の一つかもしれません。
しかし、読むことができれば、わからなければ聞くことができます。「知る権利」を放棄するかどうかは本人の責任です。そこに書かれている内容をまったく理解できずにサインするという状況とは少し違います。
結局、看護師さんに読み上げてもらって、輸血同意書を通訳しました。本人にとってはかなり怖い内容がかかれてあったのですが、最悪の状況の説明であることも伝えたうえで了解してもらいました。ここでもし、この人の信じる宗教が輸血を禁止していたなら、輸血を受け付けない体質であったら、大変なことになります。
日本では、理解しないものにはサインしないでくださいと何度も伝えていますが、一刻も早く手術して欲しいという気持ちが、内容を確認しないままの同意書サインになったのだと思います。
医療現場で外国人患者さんに渡した日本語の文章やお知らせが、100%患者さんに伝わっているとは限りません。重要なことは是非言葉で確認していただけたらと思います。
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はじめまして

2006-01-04 16:27:34 | はじめにご覧ください
はじめまして。医療通訳研究会(MEDINT)の代表をしています村松といいます。スペイン語の相談員をしています。

このブログにはじめて訪問いただいた方のために、簡単に医療通訳研究会(MEDINT)のことを少しご紹介しておきたいと思います。

医療通訳研究会は日本における外国人医療の問題を「言葉」と「医療」の視点から考えるために2002年10月に発足しました。
 
活動の3本柱は
1)医療通訳者のエンパワーメント
2)医療通訳ユーザーのトレーニング
3)医療通訳についての情報発信

最終的には、すべての外国人にとって、医療の現場で良質の通訳を利用できるための社会システム作りを目指します。

そのために現在は以下の活動を行っています。

1:医療通訳者のための医学基礎講座
2:医療従事者のための通訳ユーザートレーニング
3:外国人医療支援者のための基礎講座
4:外国人医療支援団体とのネットワーク作り
5:医療通訳を専門職として確立するための政策提言

活動に興味のある方は是非HPをご覧になってください。
http://medint.jp

このブログでは、医療現場で通訳がどんなことを感じているのか、また医療通訳の現場でどんな問題が発生しているのかを具体的に書いていきます。ただ、プライバシーの問題がありますので、いくつかの事例を混ぜてみたり、本人が特定できないように加工されて書かれています。ご了承の上読んでいただければと思います。1週間に一回の更新を目標にしています。
原則、コメントは受け付けていませんが、もしコメントのある方は、この記事のみコメントが入るようにしておきますので、ここに書き入れてください。ただ、ブログの趣旨から反するものについては削除させていただきます。

よろしくお願いします。
コメント (24)
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