MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

Think Locally

2011-02-28 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
姫路市国際交流スプリングフェスタに行ってきました。

姫路市に登録している国際交流17団体が参加して、
日頃の活動の成果を発表したり、交流したりするもので今年で第7回になります。

午前中、ひめじ発世界が「多文化共生のまちづくり~外国人医療」をテーマに
シンポジウムをされたので参加しました。

姫路市では大学のゼミを対象に政策提言をする研究助成を出していて、
近大姫路大のゼミの方が、外国人医療をテーマに取り上げました。
以前から生活相談や健康相談をされているひめじ発世界と共同で、
姫路市の外国人医療問題を考えるという試みです。

久しぶりに、地域に根付いた話を聞くことができました。
本来は、地域地域で外国人の国籍や仕事や生活環境が違うのに、
同じように論じるのはとても難しいと感じています。
医療通訳についてもそうで、
集住地区であれば病院に通訳を設置することも可能ですが、
外国人の少ない地域であれば遠隔通訳のほうが効率的です。
また、姫路市は7割が製造業についている外国人なので、
平日はもちろんのこと土曜日も病院にいくのが大変とのこと。
外国人生活相談会は日曜日に設定するなどの工夫をされています。
また、ボランティアを募集するとほとんど英語の方が集まるけれど、
姫路の場合は、ベトナムやブラジル、ペルー国籍の人が多く、
通訳もそうした言語のほうが需要があるのでボランティアの人とのマッチングが難しいとのこと。
言語も地域によって違うなあと感じます。

実は、この団体には以前お世話になりました。
相談者のAさんは電話でいつも痛みを訴えていて、
こちらでは病院への受診をすすめていたのですが、
なかなか自分からは病院へ行ってくれませんでした。
数値や症状を聞くと命の危険のあるものと感じたので、
「首に縄をつけて病院に連れて行ってもらう」ということを
ひめじ発世界の方にお願いしました。
もし、ご家族がいらしたり、身近な友人がいればその方にお願いしたかもしれません。
こちらの団体の方は地域の情報にも詳しいですし、
通訳の方も探してくださり、丁寧に受診につなげていただきました。
Aさんと命の恩人だねと話しています。

「Think Globally Act Locally」という言葉があります。
この言葉の意味は地球規模に考え、地域で行動するという意味です。
でも時には自分の住む地域を想うことの大切さを痛感しました。

医療通訳は、日本の中で誰でも使える制度として確立を目指しますが、
地域での需要や形態については一律とは言えない状況です。
今一度、自分の地域について見直してみませんか?

板ばさみ通訳

2011-02-21 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
「通訳をお願いします」

普通の通訳ならいいのですが、
慣れてくると時々「あれ?なんかおかしいぞ」と虫の知らせがします。

ちゃんと日本語で話していたり、
英語のできるスタッフがついているのに通訳を介入させようとするときです。

もちろん、言葉がきちんと伝わっていないから
確認のために通訳をつかうというならば理解はできます。
でも、そうでないこともあるのです。

それが「通訳お願いします」に
相手を説得してくれ!という両者の要望が入っている場合です。

外国人は自分と同じ言葉を話す通訳者だから自分の味方に違いないと思い、
病院側は、ちゃんとした通訳者なのだから日本の医療事情は理解できるはずと思う。

話を聞いてみると、案の定、両者の言い分は理解できている模様。
後は相手を自分の意見に説得するのみ。

そんな場所にいれられた通訳者は悲惨です。

医療通訳者の仕事は通訳のはずなのに、
いつの間にか両者の代理人にされている・・・。
罠にはめられた気分です。

医療者と話をしていると
医療通訳者に外国人との橋渡しを期待していると感じます。
それは日本の医療事情に通じない外国人を説得して
郷に入れば郷に従う患者にしろという要望だったりします。

外国人患者も負けてはいません。
通訳を使って、できるだけ自分の要望を通そうとします。
直接なら、とても相手に向かっていけないような厚かましい言葉も、
通訳の口を借りるのですから平気です。

かくして通訳者は板挟みになります。

慣れてくると、こうした交通整理もよくあることになり、
どちら側にも就かず淡々と通訳ができるようになるのですが、
慣れていないと、患者家族や他の医療スタッフも交えての議論になることも。

結局は、どちらの味方にもならなかった通訳者は
どちらからの賞賛を得ることもなしに仕事を終えるのです。
こんな時は誰か褒めて・・・と言いたいけど(笑)。

MEDINTの活動が朝日新聞に掲載されました

2011-02-14 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
MEDINTの医療英語分科会の様子が、先週の朝日新聞に掲載されました。

http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000141102090002

兵庫版なので兵庫県内の朝日新聞読者の方しか見ていないと思います。
是非(たぶん掲載は少しの間だと思いますが)上のネット版をご覧くださいね。

紙面も大きかったので反響も大きく、
今日までに入会お申込みを含めて、30件近くのお問い合わせをいただいています。

ちょうど3回くらい前のブログで医療英語分科会の話をかかせてもらったんですが、
本当にレベルが高く、雰囲気のよい勉強会で、
コンロイ先生、坂尾先生のお人柄だなあと思います。

MEDINTのほかの言語分科会も、
よい講師の先生にお願いすることができていて
この医療英語分科会に匹敵するよい講座が行われているのですが、
事務局の広報不足でなかなか広まっていきません。

中国語とポルトガル語、スペイン語分科会にも
是非見学にいらしてください。

見学についてのお問い合わせをいただくのですが、
MEDINTの言語分科会は原則、医療通訳を目指す分科会ですので、
講義はすべて外国語で進行することを前提としています。
ですので、まだ初級レベルの方や日常会話以下のレベルの方には
少し難しいので一度見学していただき確認の上会員になっていただくようお願いしています。

もちろん、ロールプレイに参加しないオブザーバー参加であれば
授業に影響をもたらさない(その方のレベルにわざわざあわせませんよ)ということなら
医療従事者の方や外国人支援をされている方に限りますが
参加を承認しているケースもあります。

基本的には誰でも勉強できる場所を目指しているので、
どなたでも参加していただきたいです。

3月は申込者が増えたので、いつもより大きめの教室にしました。
たくさんの方のご参加をお待ちしています。

月曜の朝は・・・

2011-02-07 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
月曜の朝かかってくる電話は緊張します。

土日の間に問題が起こって、
月曜まで待っていたものが多いからです。

今朝の電話も土曜日、子供を救急に連れて行ったという話でした。

幸い大事には至りませんでしたが、
言葉がわからない状態で、どんなに子供さんも親御さんも心細かったか。

病院に経緯を説明する手紙を書いてFAXして、
精密検査をしてもらって、やっと一息つきました。
同時にこうした場合の外来のかかり方や
救急車の呼びかたの説明もしておきました。

いつも医師の近くにいて、完璧な通訳をこなす通訳者がいればいいですが、
それは今の日本社会では夢のような話です。
今の態勢で100%の通訳を求めることは不可能です。
100-0の議論ではなく、
少しでも医療現場で言葉の問題が解消するようにしたい。
だから同席できなければ電話でもいいんです。

24時間対応できるような全国レベルの電話医療通訳のシステムを作れないものか・・。
救急で運ばれてきた人や家族への対応ができないものか・・・。

誰か仕組み作りをやってくれませんか?