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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

鮮血の美学NO.1⇒演劇「ドラクル」(シアターコクーン)

2007-09-17 | 吸血鬼
「ドラクル」
■日時:2007年9月8日(土)
■劇場:Bunkamuraシアターコクーン
■作・演出:長塚圭史
■出演:市川海老蔵、宮沢りえ、永作博美、渡辺哲、他
■演奏:DRACUL QUARTET

東急文化村で開催されていた「ルドンの黒」展の情報をHPで見ていたら、同じ施設内のシアターコクーンで市川海老蔵、宮沢りえのコンビによる「ドラクル」を上演することを知った。

ドラクル?あの吸血鬼ドラキュラのことか。実は吸血鬼ドラキュラに何故か興味を持ってみてしまうボクなのですが、ドラクルとは悪魔または龍の意味がありドラキュラのモデルである串刺し公として怖れられたヴラッド・ツェぺシュのお父さんの別称でもあるのだ。

ポスターを見ると、市川海老蔵の口元には2本の牙が、これは吸血鬼ものに違いないと重い、すぐさまチケットの申し込みをしたのでありました。人気俳優の競演だけあって、すでにチケットは完売に近い状態。わずかに3階の桟敷席が残っており、ベストな状態では見る事ができないので迷いはしたもののその席を購入しました。

役者は揃っているのでこの芝居が面白いかそうでないかは、戯曲と演出にかかってくる。それを担当するのは長塚圭史という方で、俳優の長塚京三の息子さんで「阿佐ヶ谷スパーダース」という劇団を率いる新進気鋭、今注目の若手演出家のようです。ボクは彼の存在については全く知りませんでしたが、これが中々の力量の持ち主でじっくりと見せてくれました。

さて吸血鬼となるとボクなどは、人では全く歯が立たない強力なパワーをもつ悪魔であり、“善悪の彼岸”に住まう超人的存在といったイメージがあるが、この「ドラクル」に出てくる市川海老蔵演じる吸血鬼レイは、やたらと自分の侵してきた行為を悔やみ(そうは言っても吸血鬼は人間に生血が食用で、吸血行為がないと存在もままならなくなるのですか)、神に祈ることさえする弱々しい吸血鬼となっています。

そうなってしまったきっかけは宮沢りえ演じるリリスとであったからです。彼女は自身の抱える悩みから吸血鬼のレイに理解を示します。人が忌み嫌うことによって存在しているレイが、よりによって美しい女性から愛の手を差し出される。レイは彼女の力によって改心し、神に祈る生活へと転換し、家畜などの血をすすって生き延びている。よってそのパワーも発言も本来の持っているものからは半減している様子。これって肉食を中心とする人種と草食を中心とする人種との比較にも見えてしまうのですが・・・。

その吸血鬼レイは、宗教が大きく社会を支配し影響力を及ぼしていた時代においてその社会体制を維持しようと異常に合理的な考え方の持ち主である司祭にいとも簡単に捉えられてしまいます。

レイは怒りに震え一瞬は悪魔の本領を見せるものの基本的には、悩み苦しむ“人間的な、あまりに人間的な”様相を見せる弱々しい存在として描かれています。改心した吸血鬼という異形のものが悔恨する、ちょっと捩れた視点から人間を見つめる構成になっており、最後は『ゆるし』といった寛容のテーマが見えてくるも、それが果たして本来の許しとなりえているか?神の存在証明や人間の自己都合な本質などを吸血鬼というモチーフを使った一風変わっているものの骨太なドラマとなっていました。

ちなみに、吸血鬼のレイは、ジャンヌ・ダルクに使えその後狂気の嬰児殺しの大量殺人を犯したジル・ド・レ公、つまり青ひげのことである。この青ひげ、さきに寺山修司の芝居「青ひげ公の城」を6月に観たばかりであった。また、澁澤龍彦の本「異端の肖像」にもこの青ひげは登場し、えらく青ひげに縁があるなと妙に思ってしまうのでありました。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トラバありがとうございます。 (yuki)
2007-09-18 10:04:47
ご訪問&トラバありがとうございます。
吸血鬼のレイは青ひげ公爵だったんですね。
とても参考になりました。
また遊びにいらして下さい。
返信する
コメントいただき (飾釦)
2007-09-19 12:03:38
ありがとうございます。

ドラクルとはドラキュラのお父さんのことだったので、レイという名前やジャンヌ・ダルクが出て来てその時に青ひげとわかりました。
返信する

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