江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者
製作:1976年・日活
監督:田中登
主演:宮下順子、石橋蓮司
数ある日活ロマンポルノの中でも名作として位置づけられている本作品。私が学生時代の頃はビデオデッキが市場に出回った頃で、ロマンポルノも後期の時代に入っていた。そんな翳りのみえたロマンポルノ、学生時代は暇にかこつけてよく日活系映画館に足を運んだのだった。しかし、この作品のことを知っていたが観る事はなかった。
それは、当時はまったく江戸川乱歩に関心がなかったことや(興味を持ったのは今年に入ってから、つい最近のこと)、好みの女優が出演しているかどうかが選択の大きな基準であったため、本作品主演の宮下順子の大人の魅力は、20代前半の私には十分感受することができなかったということに違いない。
さて、舞台は東栄館(下宿)。共同の洗面場が出てくるので、おそらくは共同便所、共同炊事場があるような今では殆どお目にかかることはできない昔ながらの共同アパート。とはいっても、女中がいたりと(昔は下宿にいたのでしょうか?)建物も中々立派な木造建築である。
主人公の郷田はいきなり屋根裏を徘徊する散歩者として登場する。彼はこの東栄館の住人を覗き見するのだが、される側の人物やそこに関わってくる人物が、何というか少し変というかズレが生じている輩ばかりなのである。懺悔と称して女中に性的イタズラをする宗教家、前衛的作品に励むレズ女流画家、ピエロと情事に耽る貴婦人、おまけにその貴婦人の運転手は“人間椅子”願望を持っているといった具合にだ。やはり、こういった映画の場合は、そのようなステレオタイプ的人物を配置せざるえないのか。
兎に角も本作品は“眼”なのである。“見つめる”(郷田)、その視線に気が付いた“見られる”(貴婦人)は、“視線”を介すことによって共鳴・共振し、殺人ゲームへと迷い込んでいくのである。(特に「人間椅子」になったマゾ運転手を焼死させてしまうところには、なるほど椅子に入れば逃げ場はないよなと感心してしまった。)
ラスト、この二人は屋根裏に上り情欲に耽るのだが、突然関東大震災が襲い、すべてが崩壊する。廃墟に残された井戸からでる水がやがて血となってくる・・・。
世間的規範、イメージとしての正常からズレる(しかし何が正常なのかは判断がつかないが)ことでしか我が身の“生”を全うできない人間たちの煩悩を包みこんできた大地と庶民の歴史、井戸から出る血を見て、そんな印象を受けたのである。
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数ある日活ロマンポルノの中でも名作として位置づけられている本作品。私が学生時代の頃はビデオデッキが市場に出回った頃で、ロマンポルノも後期の時代に入っていた。そんな翳りのみえたロマンポルノ、学生時代は暇にかこつけてよく日活系映画館に足を運んだのだった。しかし、この作品のことを知っていたが観る事はなかった。
それは、当時はまったく江戸川乱歩に関心がなかったことや(興味を持ったのは今年に入ってから、つい最近のこと)、好みの女優が出演しているかどうかが選択の大きな基準であったため、本作品主演の宮下順子の大人の魅力は、20代前半の私には十分感受することができなかったということに違いない。
さて、舞台は東栄館(下宿)。共同の洗面場が出てくるので、おそらくは共同便所、共同炊事場があるような今では殆どお目にかかることはできない昔ながらの共同アパート。とはいっても、女中がいたりと(昔は下宿にいたのでしょうか?)建物も中々立派な木造建築である。
主人公の郷田はいきなり屋根裏を徘徊する散歩者として登場する。彼はこの東栄館の住人を覗き見するのだが、される側の人物やそこに関わってくる人物が、何というか少し変というかズレが生じている輩ばかりなのである。懺悔と称して女中に性的イタズラをする宗教家、前衛的作品に励むレズ女流画家、ピエロと情事に耽る貴婦人、おまけにその貴婦人の運転手は“人間椅子”願望を持っているといった具合にだ。やはり、こういった映画の場合は、そのようなステレオタイプ的人物を配置せざるえないのか。
兎に角も本作品は“眼”なのである。“見つめる”(郷田)、その視線に気が付いた“見られる”(貴婦人)は、“視線”を介すことによって共鳴・共振し、殺人ゲームへと迷い込んでいくのである。(特に「人間椅子」になったマゾ運転手を焼死させてしまうところには、なるほど椅子に入れば逃げ場はないよなと感心してしまった。)
ラスト、この二人は屋根裏に上り情欲に耽るのだが、突然関東大震災が襲い、すべてが崩壊する。廃墟に残された井戸からでる水がやがて血となってくる・・・。
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