永遠の妖女＃２９・・・ムンクの「サロメ」

ムンク「サロメ・パラフレーズ」（１８９４／９８年）

この１月に国立西洋美術館の開催された「ムンク展」を見て、ブログにも連続して書いていった著名な画家。実はサロメも描いていたんですよね。「サロメ：パラフレーズ」と題した絵は、けっこう明るさを帯びた真っ赤な色を背景に、まるで髪の毛のお化けのようにも見えるサロメが手にしているヨハネの首というシンプルな絵柄であります。

“不埒な女だ、お前の娘は、不埒な女だぞ。いづれにせよ、あれのしたことは大きな罪なのだ。おれたちの知らぬ神に、あれは罪を犯したのだ。”（※サロメ／ワイルド／福田恆存訳／岩波文庫より引用）とサロメがヨハネの首を望みどおり手にいて接吻している様を見て、サロメの怪物性に仰天したヘロデ王の台詞を具現化したような、ある種抽象的な絵に見えてこないだろうか？

ムンクは「吸血鬼」「マドンナ」といった代表的な作品において髪の毛を象徴的に描いている。この髪の毛、生命力や力のシンボルであるとともに、長く垂らした髪は結婚適齢期を表わすという。またその髪の毛は、ヴェールの役割も果すこともありその象徴的意味がが一致することもあるそうだ。そうなるとサロメが見せた踊りの部分と関連性が見えてくるのかも知れません。ヴェールの象徴的意味合いを調べると、暗黒、夜明け前、光に敗れる闇、不可解性、秘儀的知識・・・といったことが出てきました。それらの言葉を見ているとサロメ⇒ヴェールの連想は、無意識の象徴的側面で通底してるところがあり、見方によってこのムンクの絵は実にそのあたりを敏感に感じとり描いたとも言えなくはないだろう、とボクは思うのであります。そういった観点から見るとムンクのこの絵はよく描かれた作品だなーと密かにですが思います。（※象徴性に関する部分は「世界シンボル辞典」Ｊ・Ｃクーパー蝶（三省堂）を参照にしました）



また、ムンクは別の構図のサロメも描いており、こちらのものはヨハネはサロメの髪の毛に同化しまいそうな勢いです。しかし、こちらのサロメは先の髪の毛のお化けのようではなく、どこか母性的な印象を受けます。憂いを含んだ目がなんともたまらないのですが。首のないヨハネと首が長いサロメの取り合わせがユニークです。

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ムンクのサロメは、水木しげるの漫画に出てきそうなサロメでありました。


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※ムンクのサロメは中々画集にも掲載されていないのですが、こちらのものにありました。

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