Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

ANDREA CHENIER (Thurs, Mar 29, 2007)

2007-03-29 | メトロポリタン・オペラ
なぜだか人気度においてBクラスに甘んじているこのアンドレア・シェニエ。
とってもよいアリアが随所にある上に、
音楽的にも決して悪くなく、
正しい演出とキャストさえ得られれば、すばらしい公演となるのに、
なぜか演奏される機会が少ない。

私のおばは、マリオ・デル・モナコとレナータ・テバルディというキャストで(NHKから映像も出ている、あの、1961年のイタリア歌劇団の来日公演です)、
このシェニエを見たことがあるというからうらやましい限り。
私も40年早く生まれたかった。

さて、そのなぜ演奏される機会が少ないかという謎が、
今日の公演で少し明るみに出たように思うので、まとめてみます。

今日のシェニエを歌ったのは、現役のテノールで、最も実力のある1人、ベン・ヘプナー。

今日も、その声の美しさにうっとりしたのですが、
しかし、なんだか、熱い政治思想に走るシェニアの役にしては、上品すぎる、というのか。。
贅沢にも、できるなら、違う役で聞きたかったな、なんて不謹慎にも思ってしまったのでした。



そして、ウルマナのマッダレーナは。。うーん。。。



マッダレーナって、フランス革命の渦の中で、
お母様を失い、貴族という皮がはがれて、
そして最後にはシェニエへの思いを貫きながら死んでいく。。
という波乱万丈の人生を生きた人のはずなのに、
なんだか、ウルマナが歌うと、その波乱万丈さが伝わってこない、というか、
退屈ですらあり。。
アリア”La mamma morta 亡くなった母を”だけが異常に完成度が高かったんですが、
アリアさえうまく歌えたら、それでOKなんて考えているとしたら、それは甘い!
随所に役作りの甘さが残っていたように思います。
ジョコンダの時もそうだったのですよね。
厳しいことをいうと、声自体も他の有名ソプラノ、
あるいは最近新進ででてきはじめている逸材のソプラノと比べると、
際立った魅力があるわけではないし、それ以外の部分で強みを作っていかないと、
生き残れないのでは。。と、心配です。

声でむしろ存在感があったのは、Mishuraのマデロン。
まだザジックやら、ボロディナの影に隠れて、一級のメゾの役を表キャストで歌う幸運に恵まれていない、不運のメゾですが、
小さい(少なくともそう見える)体から出てくる深いメゾ声はなかなか魅力的。
いつも同じ配役ばかりでなく、彼女にもチャンスを!!

ジェラールもかなり重要な役ですが、Delavanが、まさにそつなく、といった感じでこなしていました。



私の中では、CDで聞けるモナコ、テバルディ、バスティアニーニのコンビが永遠不滅。
あの熱い血のたぎり、濃ゆい感じを出せる人は、もう今のオペラ界にはいないのでしょうかね。



(そして音質最悪の、確かスカラ座での海賊ライブ盤で、
モナコ&カラスなんていうカップリングもあり、
このときのカラスの、”亡くなった母を”は素晴らしすぎて、歌ったあとの、
観客がたてる歓声、轟音がすさまじい。
観客からして、濃かったのですね、きっと当時は。。我々も見習わなくては。)

問題点1。今のオペラ界で、ベル薔薇真っ青のこの熱いストーリーを、
そのまま伝えられる熱い歌手がいない。技術があったとしても、
ロブストな声を持っているか否かという、先天的なファクターもあるので、
そう簡単な問題ではありません。

そして、問題点 2。このオペラにおいて、演出を軽んじてはいけないが、
往々にして、予算カットのためか、寒いセット、寒い演出になってしまう。
今回の公演もしかり、メトにあるまじき、けちけちセット。



最後のシーンの、白い銅像にLiberteの赤いスプレーの文字はどうでしょう!
ブロンクスかっての!!
新しいプロダクションを手がけていきます、というメトの意気込みはいいけれど、
新しいプロダクションってのがこれなら、ちょっと悲しい。
ゼフィレリか誰かの演出で見たいなあ。


Ben Heppner (Andrea Chenier)
Violeta Urmana (Maddalena de Coigny)
Mark Delavan (Carlo Gerard)
Irina Mishura (Madelon)
Conductor: Marco Armiliato
Production: Nicolas Joel
Dr Circ A Odd
ON
***ジョルダーノ アンドレア・シェニエ Giordano Andrea Chenier***

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