NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#368 ロイド・プライス「Stagger Lee」(ABC)

2024-04-08 08:55:00 | Weblog
2024年4月8日(月)

#368 ロイド・プライス「Stagger Lee」(ABC)






ロイド・プライス、58年リリースのシングル・ヒット曲。プライス本人、ハロルド・ローガンの作品。ドン・コスタによるプロデュース。 

黒人シンガー、ロイド・プライスは1933年、ルイジアナ州ケナー生まれ。

10代の頃、近隣のニューオリンズに出てバンド活動をしていたところ、著名なバンドリーダー、デイヴ・バーソロミューに認められ、スペシャルティレーベルと契約。

52年3月、最初のシングル「Lawdy Miss Crawdy」がR&Bチャート連続7週1位と大ヒット、幸運なスタートを切った。

その後兵役に就いたものの、57年に復帰。以降はコンスタントにヒットを出し、ロックンロール全盛期を代表する、スター歌手のひとりとなった。

その後ロックンロールのブーム終焉に伴い、人気も退潮し、70〜80年代はほとんど音楽活動を行わない時期が続いた。

90年代からは、往年のスターたちと組んだヨーロッパ・ツアーや地元のフェスティバルといったイベントに出演するようになり、健在ぶりを見せた。

プライスは、後半生はミュージシャンとしてより、自身の立ち上げた建設会社や食品会社の経営に注力したが、かつての活躍ぶりを評価されて、1998年にロックの殿堂入りを果たした。2021年に88歳でこの世を去っている。

ある意味、最後まで申し分のない「成功者(ゲイナー)」としての人生を送ったプライスだが、一番輝いていたのはやはり、57年から60年ごろまでのヒット連発時代であろう。この時期はどんな曲を出しても、間違いなくヒットしたのだから。

彼の数多いナンバーの中でも、われわれリスナーの耳に残っているのは、デビュー曲の「Lawdy Miss Crawdy」、57年リリースの「Just Because」、そして本日取り上げた、58年リリースの「Stagger Lee」、そして59年リリースの「Personality」といったあたりだろう。

それぞれに、多くのアーティストがカバーしている。筆者的に強く記憶に残っているのはエルヴィス・プレスリーによる「Lawdy Miss Crawdy」、ジョン・レノンによる「Just Because」のカバーバージョンで、共にご本家プライス版よりもずっと前に聴いていた。後年、ようやくオリジナルを聴いて、「もともとはこんな歌だったんだ」と深く感慨したものである。

プライスは単に人の曲を歌うだけでなく、自身で曲を作るソングライターでもあった。デビュー曲以来、数多くのオリジナルを歌っている。

「Stagger Lee」という曲はプライスと、彼の親友でレコード会社の共同経営者でもあったハロルド・ローガンとの共作とクレジットされているが、その実体はちょっと複雑だ。

もともとこの曲は、「Stack O’ Lee Blues」という題名で歌われていたフォーク・ソングだった。

1895年のクリスマスに、ミズーリ州セントルイスで起きた殺人事件をモチーフとして作られたこの歌は、一般的には1923年にリリースされたワーリングズ・ペンシルバニアンズのシングル「Stack O’ Lee Blues」でよく知られるようになった(クレジットとしては、レイ・ロペスの作品となっている)。

以降、さまざまなジャズやブルース、フォーク系のアーティストが録音し、タイトルやメロディも改変されたりして、無数といってもいいほどのバリエーションが生まれたのである。

その後、この曲の代表となるのが、ミシシッピ・ジョン・ハートが28年にレコーディングしたバージョンであるが、そこからちょうど30年後、まだ装いを変えて再登場させたのがロイド・プライスであった。

歌詞の方は、それまでの「Stack O’ Lee Blues」のものをほぼそのまま使っているが、メロディは完全に別物になっている。ハート版と聴き比べていただければ、それは一目瞭然だろう。

多くのジャズ・ソングのように、ゆったりとしたテンポのヴァース(Verse)から始まる構成。これがなかなかイカしている。

そこから一転、リズミカルなテーマが始まる。男女のコーラスも加わって、賑やかで楽しげなムード。あまり明るいとはいえない歌詞も、この曲調で見事にカバー、リスナーのハートをガッチリと掴んだのである。

結果、全米1位、R&Bチャート1位、全英7位という、大西洋をまたがる超特大のヒットとなった。

プライスの作るキャッチーなメロディ、その少しハスキーでタフな歌声、軽快なアレンジ。それらが一体となって、R&B史、いやポピュラー・ミュージック史に燦然と輝くヒットを生み出した。

多くの白人リスナーもとりこにした、プライスの歌声。70年近く経った今でも、その魅力は充分伝わると思う。エヴァーグリーンな一曲、ぜひ聴いてみて。




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