極楽とんぼは風まかせ

東は東、西は西。交わることなき二つとはいえ、
広い太平洋、東の風が吹き、西の風が吹き・・・

聞こえて来る音を迷惑な騒音と感じるかどうか

2016年03月05日 | 今日の風の吹きまわし
気が付いたらあっという間に2月が終わっていて、もう3月。年を取るほどに時間の経つのが早くなるよう
な気がする(なんて、もう何年も言っている来がするけど)。大事業だった引越し作戦が無事に終わって、
マンション暮らしに腰を落ち着けてからもう7ヵ月になる。振り返ってみると、去年の今ごろは新居探しの
真っ最中で、降って来る仕事の合間を縫って、引越しに同意しておきながらやたらと抵抗するカレシと大
げんかをしながら、新居になる物件を見て回っていたんだった。つまり、ものの弾みも同然に引越しを決
めて動き始めたのは1年前のことだったわけか。何だかずいぶん昔のような気がするから不思議。

自分で設計した一戸建ての家に27年住み慣らした後で集合住宅での生活に飛び込んだわけだから、
生活様式の変化は大きいと予想はしていたけど、思ったよりもすんなりと切り替えができたのにはちょっ
とびっくりだった。戸惑いもけっこうあったし、目からうろこのような経験もあったけど、いろいろと学ぶこと
も多くて、大仰な言い方をすれば「社会的な視野がちょっと広がった」感じがする。特に、環境の変化に
対するストレス耐性がわりと低いカレシがあっさりと新しいルーティンに落ち着いてしまったのはまったく
の想定外。根っからの宵っ張りだとばかり思っていたら、引っ越したその日から真夜中前に就寝。でも、
体のリズムに反した早起きの連続で疲れているからで、そのうちずるずると15年続いた「午前4時前後
就寝、正午前後起床」のパターンに戻るだろうと思っていたら、一向にその気配がない。それどころか、
ほぼ7ヵ月経った今でも普通に「午前零時前後就寝、午前8時前後起床」。

おかげで日のあるうちに家事も用足しも余裕でやれるようになって、ワタシにはうれしい誤算。特に日の
短い冬なんか、それまでは起きて朝食が終わって、さて・・・と思ったらもう夕暮れが迫っていたのに、今
は空が金色に染まって太陽が昇って来るのを見て感動したり、刻々と変化する雲の形や色に飽きずに
見とれていたり、外に出て日々の暮らしを営むいろんな人たちとすれ違って何気なくスマイルを交わした
り、他愛のない世間話をしたりすることができる。そういうことをすべて日が暮れる前にやってしまえると
言うのがとっても新鮮で、カレシの退職以来15年に及んだ「モグラ暮らし」はいったい何だったんだろうな。
カレシがどれだけ早く新しい生活に順応できるかが大きな懸念だったから、何だか拍子抜けした感じがし
ないではない。

洋の東西を問わず、集合住宅での一番大きなトラブルは「騒音」。そのあたりは、昔(木造の)賃貸タウン
ハウス時代に隣人のピアノ演奏に悩まされたことがあったし、雑誌でマンション騒音問題の記事を読ん
だことがあったから、新居探しを始めると同時にいろいろと調べて、鉄筋コンクリートの建物でも問題があ
るのは承知していた。でも、実際に生活を始めてみると思ったよりも静かで、それも真上のユニットに双
子の男の子(現在14、5ヵ月)がいるにも関わらずだから、ここでもちょっと拍子抜けの感。特に、日本語
で検索するとものすごい数のヒットがあって、そのほとんどが(多くは子供関連の)「生活騒音」だったので、
思わず住み替えを躊躇することもあった。まあ、どれも日本語サイトの記事だったから、マンションの造り
や建築基準も違うだろうし、「東京のマンションでは生活騒音が大きな問題」ということなのかもしれない
けど、ずいぶん違うもんだと、少々びっくり・・・。

もちろん、いつもし~んとしているほど静かなわけじゃない。ユニットの配置が良くできているのか、我が
家の床面積がわりと広いせいかはわからないけど、隣の音はまったくと言っていいほど聞こえない。聞こ
えるとしたら、隣の(一人暮らしらしい)若い人が飼っている犬がたまにドアのすぐ内側や廊下で吠えると
きくらい。我が家のマンションでは犬や猫を一定の大きさ(小型)以下なら2匹まで飼っていいことになっ
ていて、エレベーターでよく犬連れの人に出会うけど、いかにも血統書付きといった犬を連れているのは
ほとんどがアジア人(たぶん最近渡来した中国人)なのがまたおもしろい。ちなみに、お隣さんの犬はミニ
チュアシュナウザーという種類だそうで、まだ子犬なのにおじいちゃんみたいな風貌だけど、よ~く見ると
子犬っぽいかわいい顔をしている。

つまり、壁を通しての騒音はまだ経験していないんだけど、コンクリートの天井からの衝撃音はけっこう
響く。昨今の高層マンションはラミネートのフローリングが主流で、新築で売り出すときは寝室だけ標準
仕様をカーペットにして、買い手に寝室も同じフローリングに「アップグレード」するオプションを売りつける
ケースが多いらしい。もちろん「アップグレード」というからにはその分価格が高くなるってことにだろうな。
カーペットに比べてフローリングは何となくおしゃれな感じがして、高級感らしきものを醸し出しているの
はたしかなんだけど、カーペットのように衝撃を和らげてくれないもので、床への衝撃はかなりシャープな
音として階下に響くことになる。内覧に行ったある築10年のマンションでは午後10時以降の食洗機や掃
除機、洗濯機の使用はダメ、ハイヒールや底の硬い靴で歩き回るのもダメと規約で規制していたけど、こ
のあたりの分譲マンションの管理組合が発足時に採用する標準規約にはないところを見ると、苦情が多
くて手に負えなくなったということかもしれない。

それでも、まだ新しいマンションなら音の静かな最新の食洗機や洗濯機、乾燥機がついているので、今
のところ家電の音は聞こえないし、キャビネットもソフトに閉まる蝶番を使っているので、戸棚を開け閉め
する音も聞こえない。トイレを流す音やシャワーの音も聞こえない。ブラインドを上げ下げしたり、窓を開
け閉めする音も聞こえない。フローリングの下には遮音性能の等級が一定以上のアンダーレイを敷くこ
とになっているから、「普通」の足音なら響いて来ない。もちろん、人間は、どんなに注意していても手に
持っているモノを落っことすことがあるから、ときどきはゴトン、カラン、コロコロという音はするけど・・・。

そういうわけで、覚悟はしていたけど、何だ意外と静かじゃないの~と思っていたら、11月の末ごろに、
朝の7時過ぎから寝室の上でガタン、バタン、ドタン、ドタドタと大きな音(掃除かな?)がするようになった。
当然目が覚めるけど、せいぜい15分ほどのことなので、何ともぶきっちょな人もいるもんだと呆れつつ、
静まったらうとうとを繰り返しえいるうちに、クリスマスが近づく頃、午前4時のドタバタを最後に頭の上は
24時間し~ん。たぶん母国に赤ちゃんのお披露目をしに帰省したんだろうけど、静かになってみると今
度はあまりにも静か過ぎるのが気になって来るのが人間。1月半ばに家族が帰って来て、ガタン、ドタン、
ドタドタが再開したときは妙にほっとしたような気分だったから不思議。実は、目覚ましドタバタとドッタドッ
タという足音の主は(たぶん奥さんの育休開けに備えて雇われ)中国人の若いナニー(あるいはメイド?)
だったんだけど・・・。

それがこの数日、そんな朝の「目覚ましドタバタ」がなくなっていることに気がづいた。日中のゴトン、カン
カン、コロコロはまだときたま聞こえて来るけど、朝の寝室ではたまにコトッ、コトッという程度の音がする
だけで、足音もそれほど響いて来ないそ。日中でも子供がおもちゃを床にぶつけているようなコンコンと
いう音がしてもすぐに止むようになった。どうやら騒々しいナニーをクビにして、フィリピン人ナニーに変え
たようで、通いらしく、経験のありそうな中年女性。ナニーを雇うのはプロフェッショナルな共働き夫婦だっ
たりするので、単なる子守りじゃなくて、基本的な躾などある意味で親のステータスにふさわしい「子育て
サービス」まで求められることも多いらしい。母親らしい女性はいかにもキャリアウーマンという印象だっ
たから、ナニーに子育て方針を示して子供たちをきちんとしつけるように言いつけてあるのかもしれない。
それでも午後7時半ごろになるとしばしドタバタするようになったのは、寝かしつけのバトルが始まったの
かな。もう半年もすればTerrible Twos(魔の2歳児)になるから、これからどう展開するか・・・。

聞こえて来る音から他人さまの生活様式がおぼろげながら想像できてしまうというのもマンション暮らし
の特徴なんだろうと思うけど、そういう環境をどう思うかは個人の人間観や住人のコミュニティ感覚の程
度によって違って来るんじゃないかと思う。管理組合の総会では、苦情が一番多いのは「6番ストリート
の早朝の配達トラックの音」だと言っていたけど、商業地区のど真ん中に建ったマンションなんだから、閑
静な住宅地のような環境なわけがない。(高層階の我が家ではほとんど聞こえない。ちなみに、旧居は
「閑静な」住宅地区だっただけど、朝っぱらから何かと騒々しかった。)ま、少なくとも私たちには、今のと
ころは予期していたよりもずっと、ずっと静かだし、ご近所さんたちも管理人さんもとってもフレンドリーだ
し、日常生活のあれこれが便利すぎるくらい便利だし、街中のマンション暮らしってのも悪くないなあとい
う感じかな。