極楽とんぼは風まかせ

東は東、西は西。交わることなき二つとはいえ、
広い太平洋、東の風が吹き、西の風が吹き・・・

長い道のりだったけど、もうすぐ引越し

2015年07月20日 | 今日の風の吹きまわし
新居の購入契約が確定したのが5月の半ば。でも、売主が7月明け渡しを希望して、こっちも売れた家に
ガラクタ整理の目的で8月半ばまで居座っているので、最終決済は7月20日、明け渡しは翌日21日と
いうことになって、その日がとうとうやって来た。金曜日のうちに、購入金額(ざっと8900万円)に移転登
記税160万円、明渡し後の164日分の固定資産税と7月の管理費の11日分を加算して、不動産会社
の信託口座に預けてあった頭金を差し引いて、弁護士事務所の手数料を加算した合計額を銀行手形に
して、弁護士のリチャードのところに持って行き、書類にサインをして準備は整っていた。5月初めに家の
売却の方を決済して即席ミリオネアになった私たちだけど、銀行の残高はみごとに桁がひとつ減ってい
て、「ミリオネア」はあっさり2ヵ月半で終わり。(実感する暇は全然なかったな。)

そして今日午後3時過ぎ、決済と移転登記の手続きを担当したパラリーガルのキンバリーから「すべて完
了しました」のメール。やっと新居の決済と所有権の移転登記の手続きが済んだわけで、これで私たち
の「家なき子」状態にもやっとピリオドを打って、めでたく「ニューウェストミンスター市のアップタウン地区
にあるタワーの23階、床面積137平方メートル+バルコニーとルーフデッキ合わせて約70平方メート
ルのコンドミニアム」が我が家になった。明け渡しは明日の正午。激流に押し流されて来たような5ヵ月半
だった。カレシは想定外のことに直面して「できない」と思った瞬間に轍にはまってしまって、誰の言葉も
耳に入らなくなるところがあって、カレシがペースの速さについて行けなくて不安障害のようになった時期
もあったし、このまま15年前の地獄に戻るのではないかとワタシまでが情緒不安定になったときもあっ
たし、ワタシとカレシの40年があっけなく空中分解してしまうのではないかという一触即発の場面もあっ
た。ワタシが引っ越したいと言い出したきっかけが15前に私たちを苦しめた事件のフラッシュバックだっ
たのがカレシにはショックだったようだけど、大げんかを繰り返すうちに少しずつそれぞれの気持に向き
合うことができたから何とか2人でここまでたどり着けたんだと思う。

カレシもワタシが窓のないベースメントの仕事場で25年も働いて来て、空が見える生活がしたくなった気
持をわかってくれたらしい。今はカレシの気持が揺らぐたびに「キミのために引っ越すんだからね。キミに
ハッピーでいてもらいたいからなんだよ。キミがハッピーにならなかったら引越しは失敗ってことになるん
だからね」とまるで呪文を唱えるようなことを言っている。掃除くらいは引き受けるから、楽しいことをする
資金を稼ぐくらいのペースで仕事を続けたらいいとまで言ってくれて、心境の変化の大きさに多少の戸惑
いを感じないでもないけど、これからの生活に前向きになってくれたのはすごくうれしい。新居に落ち着い
たら、仕事はほどほどにして、カレシのために毎日新鮮な食材を買って来て、おいしい料理を作ってあげ
よう。義理の姪のサンドラが「新しい出発ね」と言ったけど、まさに私たち夫婦の「新たな出発」・・・。

モノを「捨てられない人」のカレシも、セルフストレージを借りたことで、納まり切れないモノも手放さなくて
もいいのだとわかって安心したのか、前向きに引越し準備にとりかかるようになった。庭はなくなるけど広
い北東から南東向きのルーフデッキがあるし、南東から南に伸びる広いバルコニーもあって、日当たり
は十分。ルーフデッキにはプランターをいくつも置いてこれまでとはちょっと違ったガーデニングに挑戦す
ればいい。そう決めて、ガレージにずっと放置してあった材木を使ってプランターを作り始め、試行錯誤
の末にけっこうしゃれたプランターができあがった。

     

ワタシは電動ドリルの使い方を指南しただけだから、不器用で手仕事が苦手なカレシとしてはすごい快
挙だし、おかげでかなり自信がついたようでもある。このプランターで摘み菜にする野菜を育て、屋内の
キッチンのすぐ外に置く園芸スタンドではマイクログリーンを育ててくれるという話。いろんなことが変わる
ということだなあ。ごく普通の老後生活に一歩近づくのかもしれない。ここまで来るのに私たちは40年か
かったということだけど、引越しを10年先まで待たなくて良かったとつくづく思う。

新居が決まって最初に気づいたのが、持って行ける家具がないと言うことだった。ワタシが自分で設計し
た家だから、作り付けのものが多くて、引越しするからといって外すわけには行かない。なぜ何もかも作
り付けにしてしまったのかは記憶が飛んでしまって覚えていないけど、考えてみると私たちはまともな家
具を持ったことがなかった。結婚してアパートからタウンハウスに引っ越したときは、食器戸棚やコーヒー
テーブル、ナイトスタンド、ワタシのデスクをすべて自分で作ったものだった。普通の勤め人だった頃の私
たちには上等な家具を揃えるお金がなかった。不細工な家具でも作って使い始めてしまったら、新しいの
を買うのがめんどうで結局はまともな家具を買わないまま、新築ついでに作り付けにしてしまったのかも
しれない。デザインを選んで寸法や仕上げを指定できる家具店が郊外にあって、カスタム家具の製作に
ついて問い合わせたら、オーナーから「ご相談に乗ります。電話してください」との返事だったので、ここ
で新居の家具をまとめて新調することにした。個人経営の小さな会社だけど、湿度の高いアジアからの
輸入品を冬は暖房で乾燥する環境で使っていたら、椅子など数年でぐらついてしまったから、BC州やカ
ナダ東部産のカエデやオークの無垢材を使って地元で製作しているところが魅力。家具の全面新調なん
てこれが最初で最後だと思えば、ン百万円の出費も大いに価値があるというもの。

私たちが住むことになるニューウェストミンスター市はバンクーバーの隣の隣の小さな町。カナダ西部で
最初に市制を敷いたところで、1866年にバンクーバー島植民地と合併した際に首都の地位をビクトリア
に取られたり、カナダ横断鉄道の終点がバラード半島北側に行ってしまったりの不運?に遭ったけど、2
0世紀の初めにバンクーバー市に抜かれるまで現在のメトロバンクーバーで最大の都市だった「由緒あ
る」ところ。現在の人口は7万人足らずで、面積は15.3平方キロ。隣のバーナビー市との境界からフレ
ーザー川の岸までは直線距離で3キロもなくて、何となく周りの大きな都市の発展で取り残されて、ひっ
そりと母なるフレーザー川の懐に抱かれて眠っているという感じもする。だからこそ昔の面影が色濃く残
っていて、市政も市民に密着しているように見える。私たちの新居があるアップタウン地区の東はクィー
ンズパーク地区、西はブラウオブザヒル地区で、どちらも住民参加で「歴史遺産」の保護に熱心だし、高
齢者や障碍者に優しい都市作りに積極的なようだし、芸術や文化活動にも熱心だし、どうりで住んでいる
人たち、住んだことのある人たちが口を揃えて「好きだ」と言うはずで。ワタシも住んでみたらきっと好きに
なると言う予感・・・。

明け渡しが済んだら、コントラクターのマイクにペンキ塗りなどの内装工事をしてもらって、8月6日に引
越し決行。あと2週間とちょっと、本腰を入れて「荷造り」をしないと・・・。