
”SWEET SIXTEEN”by KOLLINGTON AYINLA
あの1970~80年代、フジ・ミュージック全盛のナイジェリアにおいて、創始者アインデ・バリスターと火の出るようなイスラム吠え王合戦を演じ、フジ・シーンを大いに盛り上げていたカミソリ歌手、コリントン・アインラの、傑作と名高いアルバムがCD化され、こうしてここになんとか私も手に入れることが出来ているという事実を、とりあえず喜んでおきたい。
CDを回転させると、まず飛び出してくるコリントンのアカペラ・ボーカルの、まさに鋼鉄の如き研ぎ澄まされたコブシ回しにドキリとさせられる。そうなんだよ、このヤバさが良い。フジとはこうでなくてはいかん。灼熱のナイジェリアの大都市ラゴス、その闇に蠢く人々の欲望を一固めに捏ね上げたようなヤバイ黒光りを込めて屹立する異物。その脈打つ禍々しさがフジの命なのだ、と遠方より勝手に決め付けさせていただく。
バックに控える、トーキング・ドラムが引っ張るパーカッション群も、地獄の底から響いてくるようなディープな重苦しさを孕みつつのたうち、絡み合い、深いビートを織りなして行く。その重心の低さがもたらす強烈な覚醒に打ちのめされたまえ。
良いねえ、この頃のフジは。無敵だった。
やっぱり、という成り行きでナイジェリアにおける過去の名盤のCd復刻状況など、まるで分かりはしない現状なのだが、まるで噂を聞かなかったコリントンのアルバムも、最近になってCD化が行なわれ始めているようだ。私が入手できたのは今のところこの一枚だけだが、まあ、今後に期待をしましょ。これが内容の良い盤で、音も例外的に(?)良い、とのことなんで、何とか許せる気分。
とはいえ、昔からのファンだってこんなタイトルのコリントンは知らない、と首をひねるのが当然で、実はこの盤は彼の82年度作品、“AUSTERITY MEASURE”がCD化に際して改題されたものである。このタイトルなら記憶にあるでしょ、あの植物繁茂するジャケ写真。私としてもこの盤はコリントンとの初対面だったので思い出は多い。
それにしても何でこんなタイトルに変えたのかな?確かコリントン、80年代に、ある少女歌手との間にロリコン不倫疑惑かなんかがあり、いろいろマスコミの芸能面を騒がしていたんではなかったか。その辺のゴシップでまだ話題つくりをしているのか、とすると呆れるしかないが。なんせ相手はあのナイジェリア芸能界だ。そうでもしなければ商売にならないのかも知れないが。
などと思いを巡らせつつ、オリジナルとはまるで様相の違うジャケ写真を見る。老醜、という表現を使うよりない年老いた今のコリントンの顔がある。こんなのだったら昔のジャケをそのまま使った方がマシだったじゃないか、なんてのも外野からの余計なお世話なんだろうけど。
残念ながら、このアルバムの音はYou-tubeにはないようなので、だいたい同時期くらいのコリントンの盤の音を、下に貼っておく。