”Guzo”by Samuel Yirga
エチオピアから若きジャズピアニストのデビュー作、と聴いて、そりゃ気になりますが、どう対処すりゃいいものか、なんて困惑してしまうのだが。
それはそうです、まず、かの国の音楽が、大阪は八尾市の郊外にエチオピア高原が広がっていました、みたいな”音頭なアフリカ”とでも言うしかない奇妙なものである、という事実がまず存在する。
さらにその上に、評判になったエチオピア音楽の新譜を聴いて、うむなるほど見事なものだと感心したのはいいけれど、よく事情を聞いてみればそれはフランス人やアメリカ人によるエチオピア音楽模倣バンドによる演奏だった、とか、どうもどこまで本気にしたらいいのかと首をかしげるエチオピア大衆音楽の今日であったりするのであって。
でもまあ、あれこれ言うより聞いてしまうのが早いよ、この盤、グダグダ言ってた私も一発で気に入ってしまった見事なエチオピア・ジャズだったのだ。ともかく主人公のSamuel Yirga 自身が、バッチリ決まったジャズをカマしてやるぜ、とのどす黒い決意を揺るがせることなく貫き通しているのが良い。
エチオピアの非常に特徴ある、ある種機械な音楽性は、ここでも聴くことができるが、それは音楽の特異性に寄りかかりすぎることなく、といってそれをひた隠すでもない、クールな手つきでそれは料理されている。
「俺の土地には、そのような音楽もある。あるからやる」要するにそれだけのこと。それを自らの音楽に取り込んだ結果に関しては、つまらない計算はダサいし、やらない。それより俺自身のジャズをビシッと決めることだ、そんなタフで昔気質のバンドマン魂が、東西文化の衝突とかワールドミュージックの今日とかを軽く乗り越えて、クールに脈打っている。そこがかっこいい。それだけだ。