言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

映画『しゃぼん玉』を観る

2017年11月12日 11時07分45秒 | 映画

 

しゃぼん玉 [Blu-ray]
林遣都,市原悦子,藤井美菜,相島一之,綿引勝彦
ギャガ 

 

 

しゃぼん玉 (新潮文庫)
乃南 アサ
新潮社

 たまたま雑誌でこの映画のことを知り、どうしても見たくなつた。

 宮崎県椎葉村の話である。宮崎県出身の家内が教へてくれたのであるが、今月DVDになつたといふのでツタヤで借りて観ることにした。私も宮崎県で六年間働いてゐたので、愛着がある。椎葉村には行つたことはないが、山の中の風景を懐かしいと感じるほどのその土地への知識とその土地について話した記憶とがある。

 出演は、市原悦子と林遣都。市原の声は「漫画日本昔話」の声のやうでもあり、山村の中にはまつてゐる。「坊はいい子や」と繰り返す言葉が、親に捨てられ傷つき犯罪を繰り返す青年(林遣都)の良心を呼び覚ます。林の演技は素晴らしかつた。

 内容は、しゃぼん玉をご覧ください。

 青年の葛藤を、掻きむしられ、苛立ちささくれ立つ内心を正確に描いた作品が好きである。それを観ることで多くの人が生きる支へを感じられると思ふからである。もちろん、解決などない。しかし、さう分かつた上で、生きていくことの力を与へられる、さういふ経験は悪くない。

 「しゃぼん玉」といふ少々メルヘンチックな表象がこの映画のタイトルにふさはしいかどうかは分からないが、すぐに弾けてしまふ危うい存在の隠喩としてはとても良いとは思ふ。

 108分である。いい時間であつた。

 翌日もまだ余韻が残つてゐる。

コメント (2)
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