小谷野さんの『評論家入門』の續きである。面白さは繼續してゐる。だが、やや穩當さを缺くやうに思へる部分もある。山崎行太郎と大西巨人との論爭についての件は、そんなに批難するほど山崎さんは「キチガイ」であるとは思へない。江藤淳の文章にたいする大西さんの理解は、やはり適切ではなく、正確さが必要であつただらう。つねづね小谷野さんは「意見よりも事實を」といふのであるから、むしろ山崎さんを擁護すべきであると感じた。これでは、山崎さんに何か個人的な感情があるのではないかと思つてしまふ。
ところで、第6章に松原正氏の『夏目漱石』についてのコメントがあつたのには驚いた。松原氏がなんと小谷野敦さんの『夏目漱石を江戸から讀む』を引用、批判してゐたのである。私も松原氏の本書は讀んだが、その頃は小谷野さんのことを知らずに素通りしてゐたやうだ。小谷野さんがまた松原氏を讀むと言ふのも驚きで、讀書の幅の廣さにこれまた驚いた。
意氣軒昂、干されても鬪ふ批評家として松原氏を擧げてゐるのは、好感が持てた。
ところで、第6章に松原正氏の『夏目漱石』についてのコメントがあつたのには驚いた。松原氏がなんと小谷野敦さんの『夏目漱石を江戸から讀む』を引用、批判してゐたのである。私も松原氏の本書は讀んだが、その頃は小谷野さんのことを知らずに素通りしてゐたやうだ。小谷野さんがまた松原氏を讀むと言ふのも驚きで、讀書の幅の廣さにこれまた驚いた。
意氣軒昂、干されても鬪ふ批評家として松原氏を擧げてゐるのは、好感が持てた。