大阪に住んで六年になる。何度となく、來るんぢゃなかつたと思ふ場面があつた。
地下鐵のホームで電車が入つてくるのを待つと、電車が近づくとどこからかおじさんやおばさんが入つてくる。それも慣れた足取りで、これ以上なといふほどのタイミングと入り方とである。最初は呆れて、あるいはその巧みさに驚いて見守るだけであつたが、それが重なると、嫌な感じだけが殘る。大阪が發展しないのは、かういふ「社會契約」の不備にあるのだらうなと思ふ。また電車に乘れば、女子高生がカップラーメンを食べてゐる姿も見たこともある。六人掛けのシートには、五人で座るのが常識。かういふところにも、大阪といふ都市の特徴がある。
だが、東京には太陽の塔がない。東京へのノスタルジアは強いが、今もこの地に留まつてゐる理由にはあの塔の魅力がある、といふのは、半分は冗談でもあるが、半分は本氣でもある。
太陽の塔への憧れは、もちろん小學生の二年生のときのバンパクに始まる。靜岡に住んでゐたので、行けなかつた。父が長男だけを連れて行つて來て、繪葉書を買つてきてくれた。その繪葉書は、今も大事に取つてある。引越しをする度にどこかに紛れてなくさないやうに注意をして運んできたから、今もすぐ手にとどくところに置いてある。中學生のころには岡本太郎の『にらめっこ問答』といふ本を買つて讀んだ。何だか不思議な人だなと思つたが、言葉に魅力があるのを幼心に感じてゐた。
なぜ惹かれるのか、を考へてみようとも思はない。理由がいらないほど惹かれるからである。
そして、今囘PHP新書の『岡本太郎』を讀んで、さらにその思ひが深くなつた。書かれてゐることに特に新しいことはなかつたが、あらためて丹下健三の大屋根をぶち拔いて太陽の塔を作り上げた岡本太郎の「ベラボー」さに感嘆した。藝術家になりたくて作品を作つた人ではなく、作りたいものがあるから作つたと素直に言へる人が、結果的に歴史に遺るといふ「藝術の宿命」と言ひたくなるやうな經緯をその生涯から感じた。丹下を含めて權威者たちの建造物はことごとく壞されたが、太陽の塔だけは遺つた。美しい譯でもない。時代の先端を行つてゐたからでもない。何かの機能を持つてゐたからでもない。作りたいと本氣で思つた人が作つたものが遺つたのである。それが信念とも信仰とも言へるやうな精神のかたちであらうと思ふ。
さういふ心の疼きを持つてゐないから、あの塔に少し學ばうとして今もまだ大阪にゐるのかもしれない。太陽の塔は何度でも訪ねなければならないと思つてゐる。
エキスポのエキスポ
EXPO×EXPOS ~国際博覧会のあゆみ、そしてこれから~
日程:9月19日(土)~10月18日(日)
時間:9時半~17時 ※入場は16時半まで
場所:自然文化園 鉄鋼館1階ホワイエ
料金:無料 ※別途、自然文化園入園料が必要です。
「エキスポのエキスポ・EXPO×EXPOS」は、国際博覧会150年の歴史と功績の解説展示と、これから開催される「2010年上海万博」「2012年麗水万博」「2015年ミラノ万博」を紹介する世界巡回展です。
2008年2月にミラノでスタートし、ヨーロッパの国際博覧会開催地を巡り、今回、日本に上陸。
また、大阪万博を含め、過去に日本で開催された博覧会についても、コンパニオンユニフォームの展示や、大阪万博当時の鉄鋼館で展示実演されていた「池田フォーン」の復元展示、歴史的価値の高い資料の展示など、見ごたえのある内容となっております。
世界で開催された博覧会が、時間と空間を越えて一堂に集結します。この機会に是非お越しください。
●“エキスポのエキスポ”ご来場記念 オリジナルピンバッジプレゼント!
鉄鋼館において、9月19日(土)から“エキスポのエキスポ”開催期間中、ご来場記念としまして抽選くじで当たりがでれば、オリジナルピンバッジをプレゼントします。
※ピンバッジは1日お一人様1個です。
※数に限りがありますのでなくなり次第終了します。
○主催:博覧会国際事務局
○共催:(財)地域産業文化研究所
○協力:(独)日本万国博覧会記念機構
○特別出展:(財)日本ユニフォームセンター
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