宇宙の始まりなんて、そんな気宇壮大なこと考えてどうすんの、ともいいますが、
宇宙というのは、今ここ、わたしたちの鼻先にある空間だって宇宙の一部。
宇宙を、気宇壮大な遥か彼方の別世界と考えるのではなく、
私たちのいる「今、ここ」の理(ことわり)だと思えば、極めて身近な話。
しかも、この空間を占めているエネルギーの70%以上が、
未だ解明されていない「暗黒エネルギー」と呼ばれるもので占められ、
相対論や量子論が示す事柄は、仏教の世界観にもつながるような、時間や存在の根源の謎に迫る面白さに溢れている。
わたしにとっては、ノンフィクションのミステリーのような世界。
ミステリーに対する科学的なアプローチは、具体的に高みを垣間見せてくれるよな気になる。
理屈抜きで高みを知るにはまだ小僧にすぎる。
Alan Parsons - One Day To Fly
さて、前稿で取り上げた「この時空の最小単位であるプランクの長さ」からどのようにしてこの世が生まれたのか、です。
"宇宙のはじまりは何も無かった(真空であった)"と言われています。
しかし何も無かったといっても、虚無=空っぽというわけではなく、
"「真空」の時空上の各点ごとに場の値があり、それに対応したポテンシャルエネルギーをもつ"のです。
ポテンシャルエネルギーの高い状態から基底状態(下図の山のてっぺんから谷の状態)に移ると、
そのエネルギーが解放され、実在の粒子(クオーク、あるいは超ひも)が振動し励起され誕生する、と考える。
横軸に空間の最小単位である「プランクの長さの空間」をとると、
その空間の各点の場の値は下のようなポテンシャルエネルギーを持つ。
プランクの長さより小さい粒子というのはあり得ませんから、ちょっとおかしな図のように思えますが、
真空から粒子(宇宙のタネ)が” ぷっ”と誕生するイメージが湧いてきます。
粒子の全エネルギーは位置エネルギーと運動エネルギーの和で表され、
粒子のエネルギーが時空の持つポテンシャルエネルギーより低い場合には、
ちょうどエネルギー曲線の山が壁(バリヤー)のようになって、バリヤーの向こうに抜け出すことはできません。
しかし、量子の世界では、ある確率で、不可能なはずのポテンシャルエネルギーの山の向こうに抜け出す現象が観測され、
これをトンネル効果と呼んでいます。
抜け出した粒子は、ポテンシャルエネルギーの山を転げ落ち、
エネルギーが解放されて、宇宙が大きくなっていくという。
量子の世界では、「不確定性原理」というものがあり、
量子の速度と位置を同時に正確に測定することができない。
ΔX (位置の曖昧さの幅) × ΔP (運動量の曖昧さの幅) > h(プランク定数)
(↓)「ホーキング、未来を語る」より。
振動数は波長の逆数ですから、低い振動数の波(=長い波長の波)で粒子を測定すると、
速度の正確性は高まるが、位置はより曖昧さ(不確定さ)を増すことになる。
実際に素粒子を枠で囲い込むと、
そこでは粒子の「位置」が狭い範囲で決められたことになり、「運動量」の曖昧さが増すことになる。
その結果、しばらくすると、粒子がじわじわと広がって、枠の外に滲みだす。
ニュートン力学にしたがえば、物体の位置と速度がわかれば、その後の位置や速度も分かるが、
素粒子、ミクロの世界では通用しない。
ミクロの世界まで細かく見ていくと、
粒そのものがボヤけ始め、個でありながら、波のようになって正確な存在位置や運動スピードも分からなくなっていく。
個として局所的に実在するのではなく、非局所的な広がりをもって、あたかも幽霊のごとく存在する。
「トンネル効果」に見られるように、物質の内部を透過してしまうという不思議な現象が事実起こる。
ノーベル賞を受賞した江崎玲於奈博士のトンネル・ダイオードもこの現象を利用した技術。
どんな物理メカニズムで起こっているのかは分からない。
哲学的・科学的思考に走らず、実際に起こる現象を技術に応用している。
近い将来には、量子コンピュータや超光速の同時通信技術だって、わたしたちの日常生活に応用され、現実のものになるかもしれない。
ボーアの唱えたコペンハーゲン解釈が唱えるのは、
「現象を科学として認める」のが第一の原則で、本質的な解明はその後、ということ。
あえて、数学的に説明すると、
ホーキングよろしく またも虚数という概念が出てくる。
ポテンシャルエネルギーは空間、すなわち時空の関数になる。
虚時間として時間を与えてやると、物理的メカニズムの説明というわけにはいかないが、
数学的には説明がつく。
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