ヒカルはミサキを攻めるつもりなどなかった。だが、意識の奥底で感じていた劣等感とも言うべきものがミサキに対する語気をいくぶん荒くした。ヒカルは緊張と驚きで自分が何だか、小さく感じた。ミサキの言葉が救ってくれたのに、自分自身の劣等感ゆえに、どこかで自分を、自分の自尊心を守ろうとして、ミサキに対して、攻撃的になってしまった。
ヒカルの表情をミサキが寂しそうな顔で見た。
そのミサキの表情をヒカルも見た。
ヒカルは、顔を伏せた。
「ゴメン、ミサキ、力になろうと思ってきたのに・・・。」
「ううん。」
ヒカルはミサキの手をグッと握った。
「ヒカル、聞いて。」
「なあに。」
「私、東京に行ってから、はじめてのことばかりだったの。あの団体に入ってからの時間は今、思うと、とても長くて短かったように思うわ。私は、恋もしたことがなかった。皆に守られて、何も知らなかった。
だから簡単だったのかもしれないな。騙すのが・・・・。
ふふ、いまは騙されたと思えるけど、あのころは自分が一番汚くて、自分がすべての不幸の元凶だと思っていたの。
そこから、ヒカルが救ってくれた。
あなたに恋をした。
私はほんとに人を好きになったことがなかったの。
そう、気付いたの。
あなたのためにと思うこと。あなたがいると思うこと。
全ての不安が消えていく時間。
あなたと一緒にいれば、何も怖くない。
そう思えるの。」
ヒカルは涙腺が開いていた。考えてみれば、もし、あの時、ミサキでなかったら、自分はこんな大胆な行動に出れただろうか、そう、ミサキだから、ミサキが自分を強くしてくれたのだ。
「ミサキ。」
ミサキの手を取り、立ち上がった。抱きしめた。今度は、ミサキをくるっと回して後ろから抱きしめ、膝の上にのせて座りなおした。
「私ね。ヒカルと「ベース」に移れた事、すごく、嬉しかった。「ベース」にいけたから、自分を取り戻せたんだと思うわ。不思議だった。あなたと私は独立しているのに、全体で一つの家族のように思えた。ほんとうの家族より、ずうっと、ずっと近い家族のように思ったの。
特にね、新しい仁が生まれてから。
そして、今度のことがあった。私の家族がここにもいることに気付いたの。今、こちらの家族がね、困っているの。だから、力になってあげたいの。「ベース」で感じることができた温かさをね。私がまわりに向けられたら、家族の形も変わるように思えるの。」
「そう。」
ミサキがヒカルの手をグッと握り締めた。身体をよじるようにして振り向いた。
「ヒカル、私のわがままを聞いて。」
「いいよ。」
「何があっても、私と一緒にいて。」
「えっ。」
「もし、ヒカルと別れなさいって言われたら、私を連れて「ベース」に逃げて。」
「何をいうんんだよ。こちらの家族・・・・。」
「もし、こちらに戻れといわれたら、ヒカルも・・・・。」
「わかった。ミサキ、僕も同じだよ。ミサキと離れるつもりはないよ。」
ミサキはくるっと全身をヒカルのほうに向けた。そして、二人はキッスした。
ヒカルの表情をミサキが寂しそうな顔で見た。
そのミサキの表情をヒカルも見た。
ヒカルは、顔を伏せた。
「ゴメン、ミサキ、力になろうと思ってきたのに・・・。」
「ううん。」
ヒカルはミサキの手をグッと握った。
「ヒカル、聞いて。」
「なあに。」
「私、東京に行ってから、はじめてのことばかりだったの。あの団体に入ってからの時間は今、思うと、とても長くて短かったように思うわ。私は、恋もしたことがなかった。皆に守られて、何も知らなかった。
だから簡単だったのかもしれないな。騙すのが・・・・。
ふふ、いまは騙されたと思えるけど、あのころは自分が一番汚くて、自分がすべての不幸の元凶だと思っていたの。
そこから、ヒカルが救ってくれた。
あなたに恋をした。
私はほんとに人を好きになったことがなかったの。
そう、気付いたの。
あなたのためにと思うこと。あなたがいると思うこと。
全ての不安が消えていく時間。
あなたと一緒にいれば、何も怖くない。
そう思えるの。」
ヒカルは涙腺が開いていた。考えてみれば、もし、あの時、ミサキでなかったら、自分はこんな大胆な行動に出れただろうか、そう、ミサキだから、ミサキが自分を強くしてくれたのだ。
「ミサキ。」
ミサキの手を取り、立ち上がった。抱きしめた。今度は、ミサキをくるっと回して後ろから抱きしめ、膝の上にのせて座りなおした。
「私ね。ヒカルと「ベース」に移れた事、すごく、嬉しかった。「ベース」にいけたから、自分を取り戻せたんだと思うわ。不思議だった。あなたと私は独立しているのに、全体で一つの家族のように思えた。ほんとうの家族より、ずうっと、ずっと近い家族のように思ったの。
特にね、新しい仁が生まれてから。
そして、今度のことがあった。私の家族がここにもいることに気付いたの。今、こちらの家族がね、困っているの。だから、力になってあげたいの。「ベース」で感じることができた温かさをね。私がまわりに向けられたら、家族の形も変わるように思えるの。」
「そう。」
ミサキがヒカルの手をグッと握り締めた。身体をよじるようにして振り向いた。
「ヒカル、私のわがままを聞いて。」
「いいよ。」
「何があっても、私と一緒にいて。」
「えっ。」
「もし、ヒカルと別れなさいって言われたら、私を連れて「ベース」に逃げて。」
「何をいうんんだよ。こちらの家族・・・・。」
「もし、こちらに戻れといわれたら、ヒカルも・・・・。」
「わかった。ミサキ、僕も同じだよ。ミサキと離れるつもりはないよ。」
ミサキはくるっと全身をヒカルのほうに向けた。そして、二人はキッスした。