職員室通信・600字の教育学

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★卒業式が終わると、隊長が隊長でなくなる、コックがコックでなくなる。寂しいような、拍子抜けするような

2012-03-19 14:28:54 | 僕のモンマルトル日記

 

2012

03.19
卒業式・式辞。「本日の佳き日にあたり」


★昔、ローハイド(Rawhide・米CBS制作)というカウボーイドラマがあった。
 毎週土曜・夜10:00。
 提供は、アンクルトリスのサントリーだった(*^_^*)。

 南北戦争後の1870年代のアメリカ西部が舞台。
 テキサス州のサンアントニオからミズーリ州のセタリアまで、「フェイバーさん」を隊長とするカウボーイたちが、3000頭の牛を運ぶという大長編ドラマ――。

◆小学生だった僕が一喜一憂しながら観たのは、今残っているローハイドに関する記録と照合すると、第1シーズン~第8シーズン・全217話のうち、観はじめたのはどこからだったかははっきりしないが、終わりのほうは、第3シーズンの、目的地であるセデリアに到着する様子が描かれている67話「甦る愛情」、そして、旅を終えた隊長フェイバーが、中学生の長女、小学生の次女が暮らす東部フィラデルフィアを訪れる68話「欺かれた同情」あたりまで。
 その後は記憶にない。
 僕の地域(大阪市)で放送しなくなったのか?
 僕が観なくなったのか?
 たぶん、前者だと思うが、正確なことはわからない。

◆67話のことはよく覚えている。
 毎週、毎週つづいた、この旅も、もう終わりなんだ……来週からは、隊長のフェイバー、副隊長のロディ、偵察員のピート、コックのウィッシュボーン……等々、なじみの人々の姿がみられなくなるのか……と、ずいぶんがっかりした。
 そのさびしさが、何十年もたった今でも脳裏に刻まれている。

 それに68話。
 隊長が隊長でなくなる……、コックがコックでなくなる……これまで慣れ親しんだ人と人との堅固な関係が溶解するという、悲しいような、寂しいような、拍子抜けするような、不思議な感覚も(>_<)。

◆大人になって中学校の教員になった僕は、3月の卒業式・修了式・人事異動発表……の頃になると、よく、ローハイドの67話、68話を想起した。

 牛を狙うインディアンや強盗との戦い。
 日照り・雷雨・洪水・砂嵐といった自然との戦い。
 仲間同士のトラブル。
 あるいは、通過する土地土地の人々とのトラブル。
 これらを克服しながら、道中、牛に草を食べさせ、成長させるカウボーイの旅は、中学校教師の1年間に酷似している^^;^^;。
 ただ、これはひそかに思っていることだ^^;^^;。
 口にすると、「ということは、生徒は牛か?!」とひんしゅくを買ってしまうから(*^_^*)。

◆ちょうど、今の時期が、そうだ。
 卒業式が終わると、組織の溶解が一気に進み、二重に三重の枠組みが撤去され、寂しいような、うれしいような、悲しいような、春3月の、明るい空がひろがっていく……。

◆〈卒業式・式辞〉
 本日の佳き日にあたり、日頃、本校に何かと、ご支援・ご援助を賜っております、多数のご来賓のご臨席を得まして、卒業証書授与式が盛大に行えますことを心より感謝申し上げます。
 本日、公民館長さん、社会福祉協議会会長さんはじめ、安協、防犯、町内会、子ども会、老人クラブ、婦人会などのみなさまに、お出でいただいたことによって、卒業生たちは、15年間、多くの方々に支えられ、ここまで生きてきたということを実感していると思います。
 本日、本校を卒業しますけれども、これからも地域の方々のご指導を得て、さらに大きく成長してくれることを願っています。
 地域のみなさま、卒業生のこと、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

◆さて、卒業生のみなさん、おへそをこちらに向けてください。
 卒業おめでとう。
 きょうは、みなさんにとっても、また、わたしたち教職員にとっても、3年間の中で、特別な日です。
 今、わたしの胸の中を、いくつかの感情が、行ったり来たりしています。
 その感情の強い順に、3つだけ言います。
 1つ目の感情は、みなさんが、「新しいMINAMIの歴史を創った卒業生」であるということです。
 わたしが、いつも、言いつづけてきことに、いい学校というのは、これまでの、先人たちの努力を、しっかりと受けとめ、それを自分たちの力で1ミリでも、0.1ミリでもよくして、それを、次の代に伝えていく……こういうカタチが、しっかりしている、くっきりしている、目にみえる、それが、いい学校なんだ……という話をしてきました。
 しかし、これは、ほんとうにむずかしいことです。
 それをみなさんが、「自分たちの力で、いい、MINAMI中を創るんだぁ~」と、毎日の授業を通し、生徒会・委員会活動を通し、合唱を通して、がんばってきました。
 その努力と気概に、ま、校長として、こういう言い方をするのは変かもしれませんけれども、心を打たれました、感動しました。
 ほんとうによくがんばりました、ほんとうにありがとう……という感情です。

 2つ目の感情は、毎日、つづいた、みなさんの連続ドラマが、きょうで終わるというさびしさです。
 朝、6時55分、チャンネルを「MINAMI」に合わせると、玄関には、いつも村岡君がいる、井端君がいる、そのうち、磯島君がやってくる、そして、8時20分になると、各学級から魂の合唱が聞こえてくる。
 これが、いつまでも、つづいていくような気持ちでいたのですが、遂にきょうで終わり……、明日からは、もう玄関に村岡君はいないし、合唱も聞こえてこない。
 こういうさびしさの感情が、わたしの胸の中にあります。

 3つ目の感情は、義務教育終了という、みなさんの、人生の、ひとつの、節目に、こうして、卒業証書が渡せる喜び、および、このおめでたい場所に、みなさんと、みなさんを育ててこられた方々と、地域の方々と、わたしたち教職員とが、いっしょに、こうして、存在できるという喜びです。

◆きょうは、みなさんにお話できる最後の機会です。
 今の3つの感情に、わたしの、最後の念押しとして、もう1つ加えます。

 中学という時代は、育ててくれている人の保護から、人生、独立に向けて、第一歩を踏みだす時期です。
 この「第一歩」に、わたしは、2つのポイントがあると思っています。
 1つは、独立する気持ちはあるんだけれども、まだ実力はありませんから、その一歩一歩は、実に不安定です。
 わたしも覚えがあります。
 気持ちと、現実とが、かみあわない。
 思い通りにならない。
 だから、いろいろ悩む。
 迷う。
 失敗の連続です。
 生きることの意味がわからなくなることも、あったと思います。
 こういう不安定さの中で、友人や親、先生などと魂を交流させる……これが人生にとって大切なんです。
 これが1つのポイントです。

 もう1つのポイントは、こういう不安定さの中から、「よし、わたしはこういて生きていく」「こういう人間になるんだ」……と決意する。
 わたしは、よく「人生の1段ロケットは中学時代だった」といいますが、この中学のときの決意が、みなさんの一生を一生支えます。
 まとめます。
 中学という時代は、「不安定さ」の中から、一生を支えるエネルギーを獲得する時代です。

 冒頭、「MINAMIの歴史を創った卒業生」と言いましたけれども、「歴史を創った学年」といわれるくらい、名誉なことことはありません。
 みなさんの創った「歴史」は、今度の3年生に、その次の3年生に、またその次の……そして、今は、まだ生まれていない、MINAMI中生にまで伝わっていきます。
 このことがMINAMIの力になるとともに、MINAMIでわたしたちはこんなふうに生きたのだという自信が、みなさんの新しい世界を拓いてくれるものと信じています。

 MINAMI中の卒業生であることの、喜びと誇りを胸に、新たな一歩を、力強く踏みだしてくれることを願い、卒業生へのはなむけのことばとします。

◆最後になりましたが、保護者のみなさま、お子様のご卒業、おめでとうございます。
 卒業生たちは、これからの人生、このMINAMIを精神のふるさと、魂の原点として、「MINAMI中生でほんとうによかった」「MINAMI中の卒業生であることを誇りに思う」と力強く生き抜いていってくれると信じています。
 3年間、PTA活動、すこやかみなみネット事業などを通して、本校、本校区の教育に参画してくださいましたことに心から感謝申し上げ、卒業生の限りない前途を祝し、式辞といたします。


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