踊る小児科医のblog

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憲法の言論・出版の自由とは

2009年12月29日 | 禁煙・防煙
憲法が禁じているのは政府(またはそれに関連する権力(者)・組織)が出版社や個人に対して出版禁止や言論統制を行うことであり、
憲法に違反することが出来るのは政府だけです。
この点をはき違えている方が多いことは常々感じていました。(この件に限らず)
また、言論・出版の自由とは誰が何を言っても出版してもいいということではありません。
当然、公共の福祉に反するものは規制されることになります。
毎年受動喫煙でも国内で約2万人もの人を殺しているタバコがそれに該当するのは自明のことで、好き嫌いなどという問題とは関係ありません。
日本はタバコ規制の最も緩やかな(放置されている)国ですが、タバコ規制枠組み条約(FCTC)を遵守しているタイでは日本などの海外アニメの喫煙シーンにモザイクが入るなど、厳しい規制がなされています。
これは、政府がタバコの害およびタバコ産業の活動から国民、ことに子どもたちを守ろうという姿勢のあらわれです。
(逆に、規制が緩やかな国は政府が子どもたちを守ろうとしていないということです)

現在のような先進国で最も遅れているタバコ規制政策を「行き過ぎ」などと感じる人が数多くいるという事実には、政府やメディアの姿勢だけでなく、国民のメディアリテラシー不足を痛感します。

わが国では京都議定書を知らない人はいませんが、FCTCはその意味どころか存在すらほとんど知られていません。
これは第一には政府が意図的にとも言えるほど消極的に対応し、広報すらしていないことにあります。
本来敏感であるべきメディア、出版関係でも同様で、今回も指摘されてからこの問題についての認識が足りなかったことに気づいたような節があります。

子ども向けの雑誌として、このような表現は編集段階までに当然配慮されるべきであったはずのものが(たとえば暴力や飲酒などと同様に)、フリーですり抜けて出版され子どもたちの手元に届いてしまうという状況自体が、いまの日本のタバコ問題に関する状況を端的に反映したものと言えます。

今回の福音館書店の対応については、編集長と数回のメールのやりとりもしており、子どもの本の出版社として当初よりこの問題について重大に受け止めて、真摯に対応していただいたということを報告しておきます。
福音館書店はこの絵本を子どもに読ませることの悪影響を正しく認識し、販売中止することによる損害を考慮してもなお、子どもの本の出版社としての伝統と信用を守ることを選択しました。
その判断に敬意を表します。

今回の件でFCTCの存在とその意義がより広く理解されることを期待します。

【参考】

● タバコ規制枠組み条約(FCTC) 第三条 目的
この条約及び議定書は、(中略)、タバコの消費及びタバコの煙にさらされることが健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護することを目的とする。
http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/gaiko/treaty/treaty159_17.html

● たばこ規制枠組条約 社会的資格も“剥奪” ガイドライン追加採択で厳格対応
(産経新聞 2008.12.19)
 たばこ規制枠組条約の締約国会合が新たに3件のガイドラインを採択し、近く世界保健機関(WHO)から修正文書が示され、厚生労働省が初めて概要を邦訳して公開することが10日までに分かった。たばこ産業の広告、販促、支援活動の全面禁止だけでなく、研究助成や人道支援を含む社会的活動の全面規制を求める厳しい内容だ。(以下略)
http://sankei.jp.msn.com/life/body/081219/bdy0812190819000-n1.htm

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