踊る小児科医のblog

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第25回東北北海道小児科医会連合会報告

2005年11月11日 | 禁煙・防煙
「第25回東北・北海道小児科医会連合会総会」報告
日時:平成17年11月5日(土)~6日(日)
会場:ホテルニューオータニ札幌
主催:東北・北海道小児科医会連合会
担当:北海道小児科医会

<プログラム>
依頼講演「化学過敏症と子どもたち」
           渡辺一彦小児科医院 渡辺一彦
特別講演1「テレビ漬けがつくる言葉遅れ-しゃべらない、笑わない、遊べない、キレる、多動-」
         川崎医科大学小児科教授 片岡直樹
特別講演2「アイヌ文化と子どもたちの生活」
         札幌大学文化学部助教授 本田優子

シンポジウム「子どもの健全な成長発達を阻害する生活要因」
1.お母さんや学校の先生とタバコ
       たむら小児科医院 田村 正(北海道)
2.青森県における中高生の喫煙状況と喫煙予防活動
     くば小児科クリニック 久芳康朗(青森県)
3.こども病院における禁煙活動と今後の課題
      宮城県立こども病院 堺 武男(宮城県)
4.当院における禁煙支援の取り組みとアンケート調査結果
    佐久間内科小児科医院 佐久間秀人(福島県)
5.虐待-「育てられる時代」に「育てることを学ぶ」
       みうら小児科 三浦義孝(岩手県)
6.少年非行の現状と家庭裁判所付添人弁護士等による背景要因解析について
       山形県小児科医会 佐藤哲雄(山形県)
7.「函館・性と薬物を考える会」の生い立ち
        児島小児科医院 児島宏典(北海道)
8.子どもの不慮の事故
   さけみ小児科クリニック 酒見喜久雄(秋田県)
9.災害後の子どものこころのケアと子育て支援-中越大震災の経験を通して-
 新潟大学医歯学総合病院小児科 田中 篤(新潟県)

<シンポジウムの概要と感想>

 札幌市でも10月より「ポイ捨て」防止条例が制定され、札幌駅から大通公園やススキノを含む広い範囲が路上喫煙禁止区域となったが、実際には数名の喫煙者の姿を目にした。

 シンポジウム前半は喫煙予防関連であった。札幌市の教職員の喫煙率は男性41.6%、女性8.6%、小児科医院における調査で母親の喫煙率が28.6%等の結果が報告された。宮城県こども病院では開院当初より敷地内禁煙で、職員も非喫煙者は採用しない方針を取っているが、親の禁煙にまで結びついておらず、駐車場内の父の喫煙や行き帰りの車内での受動喫煙を防げていない現状や、両親が喫煙すれば人工乳が多くなっているなどの課題が残されていた。青森県からの発表については下記に抄録を再掲する。

 討論では、社会的規制と個人へのアプローチを車の両輪として対策を進めていかなくてはいけないことや、社会のリーダーとして医療機関の敷地内禁煙が必要であること、母親の喫煙の影響が深刻であり、喫煙予防活動も子育て支援の一環であることなどが確認された。

 函館の10代の妊娠中絶が全国の倍にも達しており、思春期の性の問題は薬物や喫煙と表裏一体であることから、医師・助産師・看護師・薬剤師等による出前授業を実施している現状と、今後はより小さいころからの少人数での系統的な教育が効果的だろうとの報告がなされた。

 秋田県における子どもの事故調査では、男児が女児の1.5倍多く、乳幼児が全体の60%を占めていることや、様々な機会における小児科医による事故防止活動などが報告された。年間100名程度いる家庭での溺死事故を防ぐために「溺水ゼロ」キャンペーンをという発言もあった。

 中越大震災では、家庭環境の変化や経済不安などによる家族のストレスの中で、一番弱い子どもにストレスが重なっていく二次被害が重要な問題であり、震災後6か月から12か月過ぎても親や子どもの精神症状は減っていないことや、支援のニーズのある場所に直接行って巡回や乳幼児健診などを行う「アウトリーチ活動」の重要性などが強調された。

 虐待や少年非行の実態から、子どもたちの健全なコミュニケーション能力が育まれず、いわゆる問題行動のベースに「厳しいしつけ」という名の虐待があることや、赤ちゃんや園児との体験学習の中で人間関係を育てる試みなどが報告された。討論の中で「赤ちゃん抱っこを全ての中学生に」という発言があり、八戸でも人数の限られる沐浴実習だけでなく、全ての中学生が赤ちゃんを抱っこして命の重さと愛おしさを感じる機会を与えられたらと感じた。

 子どもたちは、今回報告された様々な問題をかかえる家庭環境や社会環境のなかで、孤独に苦しみ助けを求めている。アウトリーチ活動は、タバコや虐待、事故予防、そのほか小児科医が行うあらゆる育児支援に必要な手段であると考えられた。

<抄録>
「青森県における中高生の喫煙状況と喫煙予防活動」     青森県小児科医会 久芳康朗

【はじめに】青森県は最短命県であるだけでなく、喫煙率もワースト1を争っている。平成13年県民健康度調査によると、30代男性の喫煙率は72.4%、20代女性は55.0%という高さであり、弘前市の看護学生の喫煙率が男性57%、女性49%という調査結果(2005年)もこれを裏付けている。また、むつ保健所の調査では妊婦の30.8%が妊娠後も喫煙しており、夫などによる受動喫煙も67.1%に達していた(2000年度)。「健康あおもり21」に掲げられた妊婦と未成年の喫煙率0%という目標は、画餅に帰することが危惧されている。

 八戸市と市医師会では、産婦人科医と小児科医が中学生に思春期の性と命を中心とした教育を行う「いのちをはぐくむ教育アドバイザー事業」を実施している。演者は与えられた時間の半分を防煙教育にあてているが、2005年度に実施した喫煙に関するアンケート調査の結果と、弘前大学で実施した津軽地域の高校における調査結果、学校禁煙化の現状などとあわせて県内の中高生の喫煙状況と課題について検討し、医療・教育・行政の連携による禁煙活動を目標とした青森県タバコ問題懇談会の活動もあわせて報告したい。

【方法】八戸市内25中学のうち4校の全学年、1497名(95.7%)にアンケート調査を実施した。方法や設問は厚生労働省研究班の調査(2000年)に沿ったものとした。

【結果】   喫煙経験率(%)
     1年 2年 3年 全学年
  男子  7.2 13.4 10.7 10.5
  女子  4.7  6.6  8.9  6.7
  合計  5.9  9.8  9.9  8.6
       月喫煙率(%)
     1年 2年 3年 全学年
  男子  0.4  2.4  0.8  1.2
  女子  0.0  0.0  2.1  0.7
  合計  0.2  1.2  1.4  0.9

 喫煙経験率は全学年平均で8.6%と予想を下回るもので、1か月以内の喫煙率は0.9%に留まっていた。しかし、家族に喫煙者がいる生徒は全体の65.4%にも達し、その内訳は父51.4%、母22.4%、祖父9.3%、祖母2.9%、兄6.2%、姉3.3%であった。喫煙する友人がいる生徒は7.2%で、喫煙経験率は「喫煙家族あり」で10.7%、「なし」で4.4%、「喫煙友人あり」で37.0%、「なし」で6.4%であった。喫煙家族の内訳による喫煙率では、母や祖母、姉など女性の家族が喫煙すると喫煙経験率も女子の割合も高くなっていた。

 初回喫煙年齢は小学校入学前が11%で、小4までに40%、小6までに70%が喫煙しており、年少児ほど家族の影響が強い傾向がみられた。週1日以上朝食を抜く生徒は12.4%で、その喫煙経験率は17.7%と毎日食べる生徒の7.2%の2倍以上の高さだった。

=参考=
アウトリーチ 【outreach】
〔広げる・伸びる意〕
(1)学習したいという意欲をもっていない人たちに学習の機会を与え,学習に対する要求や行動を誘発しようとする活動。
(2)芸術活動の一。芸術に接する機会や関心がない人々に対し,芸術への興味と関心をもたせるために芸術家・企画者側から働きかけるさまざまな活動。音楽家が学校や病院などの音楽ホール以外の場所に出張して行う演奏活動や,美術館・博物館の館外活動など。
out・reach
━━ v. …の先まで達する; 策略にかける; 広げる, 伸びる.
━━ n. 伸ばすこと; 伸ばした距離; (市民運動や福祉活動の)対象者のすそ野を広げる活動.
━━ a. (市民運動や福祉活動の)すそ野拡張の.

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