蒲田耕二の発言

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『アーリー・コンゴ・ミュージック1946-1962』

2019-07-15 | 音楽

バブル景気が頂点に達した1980年代末、日本を席巻した音楽はワールド・ミュージックだった。そのワールド・ミュージックの中心を担ったのが、セネガルのンバラやアルジェリアのライ、スペイン/フランスのルンバ・フラメンカなどとと並んで、コンゴのリンガラ・ミュージック、ルンバ・コンゴレーズだった。シンセをマリンバ風に鳴らす軽快で愛くるしいサウンドが、いまも耳に残っている。

『アーリー・コンゴ・ミュージック1946-1962』は、ルンバ・コンゴレーズ(だけじゃないけど)の成立過程を当時のオリジナル音源でたどった超貴重なアルバムだ。一昨年、同じEl Surレーベルから発売された奇蹟の2枚組『パームワイン・ミュージック・オヴ・ガーナ』と同じく、この分野の碩学、深沢美樹氏の労作である。

オレは彼と違ってこの方面にはまるで不案内だが、学術的・資料的関心を除外しても演奏自体にエンタメとしての力があるので、2枚2時間半のリスニングに退屈はしなかった。中にはアフリカン・マンボと呼びたいスタイルの演奏や「オブラディ・オブラダ」の母型じゃないかと思いたくなる曲もあって、なかなか楽しい。『パームワイン』同様、古い録音にもかかわらず歪みもノイズも極少のマスタリングに驚嘆する。

懇切丁寧な解説も相変わらず。いろいろと教えられるところが大きい。もっともCDジャケット・サイズのブックレットに6ポ大の活字でビッシリてのは、オレみたいなトシ寄りには拷問だけどね(笑)。

ワールド・ミュージックが下火になって、はや四半世紀。思えばあれは、平和を象徴する音楽だったよな。冷戦構造の崩壊とともに興隆し、湾岸戦争の勃発をきっかけに衰退が始まった。1991年から数年間、横浜で開かれたウォーマッドは、文字どおり平和のフェスティバルだった。本質的に異民族間のせめぎ合いであるオリンピックと対照的に、異文化が歩み寄り、調和を図るイベントだった。

トランプが世界中で分断と対立をあおってる現状では、ワールド・ミュージックの再興も夢だろうなあ。

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