蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

エリザベス女王

2022-09-10 | 国際
この人の訃報に、思い出したことがある。かなり話題になったエピソードなので誰か追悼文に書くかと思ったが、誰も書く様子がないので書く。別に、追悼文を読み漁ったわけではないが。

イギリスでサッチャーが首相を務めていたころ、バッキンガム宮殿にホームレスか何かの男が侵入した。するとエリザベス女王は慌てず騒がず、男の話し相手になって夜を明かしたそうだ。

男がいとも易々と宮殿に侵入したこと、女王が落ち着き払って対応したことが話題となり、以後、警備がぐんと厳しくなったと聞く。

このエピソードを、故サトウサンペイさんが当時朝日に連載していた四コマ漫画で取り上げた。あの漫画がなければ、事件はオレの記憶に残らなかったかもしれない。

漫画の初めの二コマは、女王が男に対応する様子。三コマ目では、サッチャーにそっくりの中年女性が窓を開け放ってベッドに寝ている。四コマ目は夜明け。中年女性が上体を起こして嘆息する。「ダメか!」

イキな漫画だったよなあ、「フジ三太郎」って。
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痴漢

2022-09-09 | 社会
50年前ぐらいの昔、「木下恵介アワー」(だったかな) というテレビのドラマ番組があった。たしか火曜10時台の放送で、山田太一らトップクラスのライターが脚本を書いていた。

そのうちの一つに、主役の少年が肝試しに電車の中で痴漢を働く、というエピソードがあった。被害に遭う女子高生を演じたのが、デビューして間もない桃井かおりだった。女子高生といっても普通ではなく、いわゆるスケ番である。

で、そのスケ番女子高生がどう反応したかというと、少年を叩きのめすのではなく、少年の度胸が気に入って惚れてしまうのである。

同じ頃、東海林さだおが週刊誌に連載していたサラリーマン漫画では、主人公が怪我したふりをして三角筋で腕を吊り、その陰でこっそり痴漢を働く。1982年の映画『転校生』では、主役の少年がスカートめくりをする。ほとんどギャグ扱いである。

あの頃、痴漢は大した犯罪ではなく、バカな男の他愛ないいたずら、みたいに見られていたのではないか。恥ずかしいこと悪いこと、という意識はあまりなかったと思う。

それが建前だけでも変わり始めたのは、今世紀になってからだった。東京の下町で、アメリカ人女性が自分に痴漢を働いた男を自力で捕まえ、交番に突き出した。するとお巡りさん、こいつもどこそこへ行ってればこんなマネをしなくて済んだろうに、などと言って笑い、調書も取らずに男を釈放してしまった。「どこそこ」というのはアメリカ人女性が聞き取れなかったからで、おおかた「ソープへ行ってれば」とでも言ったのだろう。

女性は悔し涙に暮れ、普及し始めたばかりのEメールで告発文を大使館、区役所、警察庁、内閣府、外務省その他、ありとあらゆる部署に送りまくった。こうしてことは警視庁だか警察庁だかの長官も知るところとなり、国辱ものだとしてようやく関係者が処分された。外国人ではなく日本女性の告発なら、うやむやで済まされたかもしれない。

日本は伊藤詩織さんのケースのように、明白な性犯罪さえ大目に見る、どころか、あろうことか被害者の女性を非難までする社会なのだから。

それから何十年も経った今朝、報道によると新宿駅で「痴漢は多くいらっしゃいます」「痴漢をされたくないお客様は後ろの車両へ」と駅員が繰り返しアナウンスしたそうだ。一瞬、時間が巻き戻ったのかと思った。

「いらっしゃいます」はお笑いで済むとしても、このアナウンスに透けて見える痴漢行為の犯罪性に鈍感な意識は笑って済ませるものではない。。日本の男の意識は結局、本質的には変わってないんだね。スマホの盗撮も後を絶たないし、やってる男たちにそれほど罪の意識があるとも思えないし。
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