木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

審査基準と三段階審査(3)

2011-08-10 16:58:20 | Q&A 憲法上の権利

というわけで、法令審査全部書くのって、めんどうですよね。

おまけに、適用例が二つしか想定できない条例でこの始末。

なので、法令審査の途中式が全て書かれる判例なんて、めったにお目にかかれません!!


・・・・。それはさておき(おくんかい!)、
途中式みてみると、法令審査って、法文を手掛かりに想定された
個別の処分の合憲性審査を複数回やってるだけなんですよね。

なので、法令審査と処分審査で、違憲審査基準が変わるか、っていうと
基本的な考え方は変わりません。


ただ、ちょっとだけ注意が必要なのは、
法令審査で、この処分は・・・、次の処分は・・・と判断していく中で、
ある処分を審査する基準と、別の処分を審査する基準が変わるケースはあります。

例えば、「デモ行進はしてはならない」っていう条例について
A:他と平等に、修習生給費性を訴えるデモ行進を規制すること
B:原発反対を訴えるデモだけを狙い撃ちして規制すること
という適用例が想定される場合。

Aは内容中立規制、Bは内容規制なので、
Bの審査をするときは、基準がより厳しくなる。
こういうケースもあるはずです。

ええ、まとめると、

法令審査の場合の審査基準っていうのがあるわけではなくて、
法令の文面から想定される処分の種類に応じて、
審査基準は使い分けるはず。

その使い分け方は処分審査の場合と同じ。

こうなるはずです。



PS 二段階審査

因みに、法令審査(じゅうらい文面審査とよばれてきたもの)って、
その法令の全適用例を想定し、審査するものなので、
それをやっちゃうと、処分審査をやる意味がなくなります。
(え、ここよくわからないの方は、外科手術の比喩を参照して下さい^-^)

ちうことはですね、
よく答案例で見かける法令+処分の二段階審査をするためには、
最初の段階で、今見たような法令全体の審査をしちゃ、
理論的に残念な事態になっちゃいます!

というわけで、二段階審査をする場合、
一段階目の審査は、
典型的な適用例だけ、
あるいはもっとも違憲の疑いの弱い適用例だけ、を審査して、

「典型的用例orもっとも違憲の疑いの弱い適用例ですら違憲なのだから、
 法文全体も違憲だろう」

あるいは

「少なくともこの適用例は合憲なので、法文自体は違憲ではない。
 では、この処分は?」

と流すしかないのです。

あのですね、これ、理論的に考えると、こうならざるを得ないのに、
ここを理解してくれない人、けっこう、多いのですよ。

昔は、講義のあとに、
「木村先生は、二段階審査のやり方、まちがってますよ。」
とか言われたり(・・・遠い目)。

はい。でも、こうおっしゃられた学生の方と、
きちんとお話しをしたら、わかってくれました(・・・良い思い出です)。

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6 コメント

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Unknown (たっつみー)
2011-08-27 13:30:43
記事を読んで、疑問に思うことがありまして、コメントさせて頂きます。

処分審査を当該処分を基礎付ける法令の審査と考えると、処分審査の場合の審査基準を決定する際に、内容規制といった規制態様を加味しづらいように思いました。

例えば、、、
「デモ行進をしてはならない」という条例がXさんの原発反対を訴える平穏なデモだけを狙い撃ちして規制された場合、条例の文言自体は、表現の内容には着目していません。それでも、内容規制と評価できるのでしょうか?

私なりに考えたのですが
「特定の表現内容を伴う平穏なデモへの規制」という審査対象を想定し、条例のうち、このような規制を基礎付ける部分を審査する、という審査方法を採るのでしょうか?

ご返事お願いします。
>たっつみーさま (kimkimlr)
2011-08-27 21:10:06
こんにちは。

おっしゃる通りの対応です。

その法令のうち、
<内容に着目した処分を許容している部分>を審査すればよいので、
法令のうちその処分を基礎づけている部分の審査だと、内容規制論を加味できないということにはならないと思います^-^>
Unknown (たっつみー)
2011-08-27 21:39:00
ご返事ありがとうございます。

自分なりに考えた結論だったのですが、少し違和感があるんですよね。

おそらく、、、
法令自体は表現内容には着目していないのに、行政機関等による適用行為が表現内容に着目した場合に、それを法令に違憲部分があるとして無効にしてしまうことへの違和感だと思います。

この違和感は問題にならないのでしょうか?
>たっつみーさま (kimkimlr)
2011-08-27 22:05:35
違和感ごもっともです。

ただ、本来であれば立法者は
「この法律の適用対象を表現内容を理由に
 選別してはならない」とか
そういう明文規定をいれておくべきであり、
それが入っていない以上、
合憲限定解釈なり部分無効なりの論理で
処理しなくてはならない事態が生じる
ということになるかと思います。

まぁ、立法者もあえて内容着目適用をさせるつもりで作ってるわけではないのでしょうが、
やはり内容着目的に適用できる法文というのは、
立法技術的に甘い部分(内容着目的に適用できることへの無頓着)が残っているということなのでしょう。

そういう意味で、刑法130条(住居侵入罪)のような規定が、
<内容に着目していない=中立適用を義務付けた>規定だと言い切れるのか、微妙で、
<内容着目規制として使われるかどうかに
 着目していない>規定だと理解せざるをえないかと。

というわけで、違和感は、私の理論というより、
そういうものに無頓着で進んできた
これまでの立法技術に対するものなのではないかなと、思います。

・・・。どでしょ^-^>
Unknown (たっつみー)
2011-08-27 22:30:08
なるほど!

最初は法令には瑕疵がないのに、その一部を無効にするのはおかしいなと思っていたのですが、「内容着目規制として使われるかどうかに着目していない」という瑕疵があると考えることができるのですね。

丁寧なご説明ありがとうございます。
疑問が解消できました!
今後もブログや著書、論文等でのご活躍を楽しみにしています。
>たっつみーさま (kimkimlr)
2011-08-27 22:49:34
^0^>

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