私にとっては青天の霹靂という他ない出来事が起りました。
昨年の春に、出版した拙著『現代工芸論』(市川文江編集、蒼天社出版刊)が、なんと東京都立高校の入試問題に採用されてたんです。
昨日出版社から連絡を受けましたが、今朝は新聞の都立高校入試特集で確認しました。
国語の第4問で、「取り合わせの美」について書いているところを引用して、5つの問題を設定しています。
設問は4番目までが4択問題で、読解力を試すもののようですが、5問目は「取り合わせの美」についての受験生各自の意見を2百字程度で書けというものです。
高校入試なので実質中学卒業段階の子どもたちに向けた問題としては、かなり難易度が高いのではないかと思われます。
みなさんも挑んでみられてはいかがかでしょうか?
他に採用されているのは、原田マハ、梅原猛、能楽師の大槻文蔵と能楽研究家の天野文雄さんの対談本といったエスタブリッシュメントな人たちの本からであるのに対して、私の場合は、『現代工芸論』が昨年出版されたばかりの唯一の著書である、 工芸の評論家で一美大の講師でしかないので、非常に驚きでもあるし、またとても光栄に思えることでもあります。
そして社会的にほとんど知られていない本を、敢えて入試問題の材料に選択された問題制作者の「英断」に、満腔の敬意を表したく思います。
私にとって何よりも一番嬉しいことは、「現代工芸論」という、世間的には特殊的と見なされている分野のことを書いたと思われがちな論述が、義務教育を卒業した段階の子どもたちでも読解可能であるという判断を、相応の見識のある人によってしていただけたということです。
私自身、「誰でも読める・誰でもが読むべきである」本を目指して、業界用語なども極力使わないことを意識して書いたものなので、わが意を得たりの感慨があります。
この本は、工芸業界の中では興味を持って読む人は少ないようですが、業界外のいわゆる「一般的読者」の方々からの反響は悪くありません。
これを機に、みなさんにも是非一度目を通していただくことを、これからはもう少し自信をもってお奨めしていきたいと思います。