モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

玄米を炒る――「わん一式展」異聞

2011年02月12日 | 食の愉しみ
かたち21のHP


先月の瑞玉さんでの「わん一式」展では、会期中、来場された方々に
玄米粥を撥高台型飯碗に盛ってふるまったところ、これが大変好評でした。
毎日約20食分ほどでしたが、食した人で「おいしい」と言わなかった人はいなかった
というのは、大げさではなく厳然たる事実です。



おかかちりめんをトッピングして。飯碗は森野清和作の撥高台型。
うえやまともこ作の木のスプーンもとても好評でした



このお粥は料理研究家の辰巳芳子さんによる玄米スープのレシピに基づいたもので、
水の量を減らして、備前焼の陶芸家の制作による土鍋で炊きました。
ポイントは玄米を30分ほど炒るあたりにあって、
そのために香ばしくて心身を癒すような味覚が口中に広がるのです。


 
炒った玄米の香りが会場全体に香ばしく立ち込めました。土鍋は備前の星正幸作


さて、食した人の多くがこのお粥の作り方を尋ねられたので、お答えすると、
だれもが「やっぱり、手間がかけられてますね」と言うのです。
特に、玄米を30分ほどつきっきりで炒るというのが、
「手間がかかっている」という印象になるようです。
しかし私自身は、30分という時間はそれほど長い時間とは思えないので、
手間をかけているというふうにも思えず、いたって簡単にできるもんだなと思っていました。


30分という時間は、テレビを見たり、音楽を聴いたり、
ゲームに興じたりしているとあっという間に過ぎる時間です。
だからそういう時間の長さと思って玄米炒りに取り組めば、なんということもありません。
あるいは、なにもつきっきりで炒ることもないわけで、
音楽を聴きながらとか、雑誌に目を通しながらとか、
別な料理を作りながらとかでも炒ることはできます。
(途中で一旦止めることもできます。)
だからたいそうなことではないのです。


とはいえ辰巳さんは、丁寧に気持ちを込めて炒ることが大切と言っているので、
つきっきりで炒るのがベストであることはいうまでもありません。
玄米を炒ることに専念する30分という時間とは、どういう時間でしょうか。
多くの人々が、そういう時間がなかなかとれないと言い、現代人の多忙さを言い募ります。
あるいは、ただ玄米を炒るだけの30分という時間が、
もったいないという受け止め方もあるようです。


しかし玄米を炒ることによって、いわば「シンプルだけど贅沢」な食事を摂ることができ、
それが心身の養生と育成に貢献するのであるから、
これは実はとても重要な営為と考えるべきではないでしょうか。
食料を得るために動き、動くエネルギーを得るために食料を摂取する、
これが生き物の「生きる姿」の基本です。
この意味で、玄米を炒るという行為に象徴されるような調理の下ごしらえの時間を
おろそかにせず、むしろ大切な、そして贅沢な時間と考えたいものです。

香ばしい香りが部屋じゅうに立ち込めます。
お試しください。



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初がつおに山椒のつくだ煮

2009年05月02日 | 食の愉しみ


「かたち21」のHP



目には青葉 山ホトトギス 初がつお
「庭には山椒の香りかな」と勝手に続けて、鰹と山椒の取り合わせを愉しみました。




かつおの真ん中あたりの黒っぽいのが山椒
ガラスの器は林孝子作



青々と繁った山椒の葉っぱを摘んできて、佃煮ふうに煮ます。
『女わざ』第7号(1989年発行)に掲載されている「山椒を食べる」から
「葉のつくだ煮」の項を紹介しますと、





1.ほどよく成長した葉を摘み、水洗いしてから指先で一枚一枚はがす。
2.フライパン(か厚手のナベ)で炒る。弱火で。
3.こげそうになったら水を加える。
4.葉がクルクルと丸まってくる頃に醤油で味をつけ更に炒る。(ユックリ、目をはなさず)


とあります。(同じ頁に「木の芽味噌」の作り方も書かれています。)
葉っぱを1枚1枚はがすのに結構時間がかかるのが、
醤油で煮るとほんの僅かな量に変貌するので、とても貴重なものに思えてきます。
鰹は刺身にして酒と醤油に浸けておきます(つまりヅケですね)。


かつおのヅケに山椒の佃煮をほんの少量のせて、口の中に運ぶと……。
で、これに淡麗辛口の吟醸酒が絡んできて、
さわやかな初夏の夕べを堪能させていただきました。


冒頭の写真のガラスの器は林孝子さん(前回の記事参照)の作になるものです。
上の方に写ってるのはカブと新たまねぎを
マヨネーズとヨーグルトで和えたサラダです。


「女の手仕事5人五様」展(6月5日ー9日 町田市・可喜庵にて)
(林孝子さんのガラスの作品も出品されます。)
詳細はこちらから




ついでですが、キンピラごぼうにも山椒をのせてみました。
これもなかなかイケてたことは、言うまでもないでしょう。



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レモンマートルは高いか?

2009年02月21日 | 食の愉しみ

「かたち21」のHP



〈2月7日の記事からの続きです。〉
うちの近所のお店では、レモンマートルのティーバッグを2袋126円で売っています。
それを聞いて何人かの人が、「ああやっぱり高いんですね」というような顔つきをされました。
しかし1袋63円そこそこで少なくともカップ3~4杯分はおいしく飲むことができるので、
市販のペットボトルのお茶や自動販売機の120円の缶コーヒーや缶紅茶と較べても、
うんと安いと私は思いますけどね。

最近は格差社会とかワーキングプアとかいった言葉が飛び交ってますが、
テレビの取材を受けた「ワーキングプア」とされる人が缶コーヒーや、
ペットボトルのジュース・お茶などを飲んでいたりするのを見かけることがあります。
私などはそういうシーンを見たりすると、
ずいぶん高価なものを飲んでるんだなと思ってしまいます。

あれらの商品の価格は、人件費とか地代とか設備投資とか宣伝広告費とか運送費とかで成っていて、
体に入ってくる飲料の原料費とか加工費とかはほんの2~3%でしかない、
ということを聞いたことがありますが、そういった仕組みで私たちの
「貨幣経済社会」というものが運営され、「雇用」がまかなわれているわけですね。

ちなみに我が家では、ペットボトルや缶ジュース・コーヒーの類いは
自分で買うのは年に数回程度で、よほどのことがない限り買わないことにしています。
外に出るときは、携帯用の魔法瓶にコーヒーやお茶を詰めて出かけます。
おいしさを味わうという点からもその方が有効です。
これはある意味では反社会的な行為ですが、
ものづくりを志す人の基本的な心がけであるとも思います。

レモンマートルよりはるかに安いティーバッグのお茶があると言われるかもしれません。
しかしそれを口に含むと「気が満ちてくる」というような感覚に浸れるようなことはありません。
「お金に換えられない要素」ということも、考えなければならないと思います。




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レモンマートルと金子司のティーカップ

2009年02月07日 | 食の愉しみ

「かたち21」のHP




私は本来がコーヒー派なので、コーヒーであればインスタントのものでも文句ありませんが、
紅茶となると、以前には、どこがおいしいのかまったく理解できませんでした。
若いときにイギリスやインドで飲んだ紅茶はさすがにおいしくて、
紅茶はこの味という基準ができてしまったので、
日本ではずうっと長い間見向きもしなかったのです。
しかし最近は、上手に淹れた紅茶はそれなりに飲めるものだと認められるようになってきたし、
国内でも無農薬で栽培した茶葉で、イギリス・インドに比肩する
紅茶を生産する業者がおられることを確認しています。

さらに女性の間で人気が高いとか言われているハーブティーになると、
何度か飲む機会がありましたが、あまりインパクトを受けなくて、
つい最近まで興味が持てないでいました。
ところが今年に入って、「レモンマートル」と呼ばれるハーブティーに出会って、
私の中のハーブティに対する認識が一変したんですね。
というか、レモンマートルの味覚にはハーブティーのイメージを超え出る
一種独特の存在感を感じるのです。








レモンマートル(Lemon Myrtle)はオーストラリアに自生する植物で、
「シトラール」という柑橘系芳香成分を多量に含んでいるということです。
オーストラリアの原住民アボリジニは昔から飲み物や薬剤として利用していましたが、
白人が目をつけて商品化されるようになるのが1990年代、
日本に入ってきてまだ10年そこそこといったところのようです。

例によってヒーリング効果とか抗菌作用とかが宣伝の謳い文句になってます。
しかし私なりに表現させてもらいますと、シトラールの香りに品が感じられ、
口に含むと「気が満ちてくる」ような気分になれる、とても格調の高い飲み物です。
1月24日の可喜庵での名倉亜矢子さんのコンサートの後のティーパーティでも、
日本の三年番茶と、上述した「イギリス・インドに比肩する国産の紅茶」と一緒に、
レモンマートルをサービスしましたが、
名倉さんはじめ、参加された女性達のハートをしっかりとつかんだようです。



 



さてこのレモンマートルを心ゆくまで味わうには、
金子司さんのティーポットとカップがふさわしく思われます。
薄茶色の透明な液体が淡い肌色のカップの中を満たします。
レモンマートルの格調の高さとストライプ模様の軽快な気分が、不思議に合っているんです。
気が満ち、そしてさらにはずんでいくような感覚を、
ゆったりとした時間の流れの中で味わえます。







金子 司さんのティーポット&カップはこちらで。
3月末までにティーポットまたはカップソーサ(2客)をお買い上げの方には、
レモンマートルのティーバック2袋入りをプレゼントします。
是非お試しください。




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