栃木美保さんはアロマセラピストの資格を持っていて、造形表現の中に“香り”を取り入れることを試みたりしています。
造形表現にとって“香り”がどういう意味なり役割を果たしうるかということは、なかなか難しい問題ですが、
たとえば「スサノヲの到来」という美術展では、麻布を裂いて紐状にしたものを天井から垂らして結界を作り、中心に、四季の草花や種子、葉などを小さな瓶の中に塩漬けしたものを据えたインスタレーション風の作品を発表していました。
「スサノヲの到来」は2014年秋から2015年夏にかけて東日本の5軒の公私立美術館を巡回して開催された展覧会ですが、
西洋的な造形論理を逸脱していわば純日本的な造形論理を求めていこうとすることを趣旨とした展覧会でした。
“香り”という感覚的な素材を造形表現の中に取り込んでいくことは、「純日本的な造形論理」を見出していく作業に通じるものがあるということかもしれないと、「スサノヲの到来」展の栃木さんの出品作を見て思ったりしました。
ところで、日本の古典文学のある研究者によると、草花の香りに対して日本人の感性が細やかにはたらきはじめるのは、平安時代に入ってからで、
万葉の時代に詠まれた歌には、草花の香りに寄せる趣向のものはあまりないそうです。
『古今集』をひもとくと梅の花や女郎花(おみなえし)や菊など、草花の香りに寄せた歌を散見することができます。
それらの歌を詠んでいくと、“香り”という感覚的な素材を純日本的な造形論理というものがどういう姿において立ち現れてくるかということが、そこはかとなく感じとられるような気がしてこないでもありません。
次回かたち塾では、「古今集」に収められた和歌から、草花の香りを詠ったものを蒐めて、参考資料としてお渡ししたいと思っています。
申し込み詳細は前記事をご覧ください。