山田宗樹著「百年法」読了。
まずは舞台設定の大勝利。項立てもおそらく意識的に頻繁に行っていて、様々な登場人物の視点で語られるシーンの連続が、映画の頻繁なカット割りのごとく緊張感とテンションの維持に大きな役割を果たしている。その一方、部間で大胆な時間経過が度々ある、その緩急も心憎い。
前に「ジェノサイド」や「屍者の帝国」を読んだ時も思ったけど、映画の表現方法がCG技術によって飛躍的に広がったいまなお、それを(読者の想像力を借りてではあるが)凌駕してやろうというエンタメノベル界の目論見は全体として成功していると思う。
ただ、舞台設定系の小説は一度読んで筋が分かってしまうともう一度読もうとはなかなか思わない。読んでいる間は作品世界に没入できるけれど、自分を取り巻く現実世界が読書前後で少し違って見えてしまうようなボーダレス的体験とも無縁だ。
面白くて久々に寝る時間を削ってまで読みきった。でも、舞台設定が別に凝っていなくとも腹の底にずしんと居座ってしまう何かを読後に感じるような、そしてそれが何かを確かめるためにもう一度読み返してしまうような作品にもまた出会いたい。