差し戻し控訴審判決2008/4/22を前に…【4度目の判決 光市事件が問うたもの(中)】死刑の是非

2008-04-19 | 光市母子殺害事件

産経ニュース【4度目の判決 光市事件が問うたもの(中)】死刑の是非

 「これからは2人殺害の事案では、よっぽど被告人に有利な事情がない限り死刑を科さなければならない。これは最高裁の意思だ」
 刑事裁判官の経験が長いある判事は、平成18年6月に言い渡された山口県光市の母子殺害事件の上告審判決をこう受け止め、担当した事件の判決にも反映させたという。
 上告審判決は「各犯罪事実は1、2審判決の認定するとおり揺るぎなく認めることができる」とした上で、「特に酌量すべき事情がない限り死刑の選択をするほかない」と指摘。「無期懲役の量刑は甚だしく不当で破棄しなければ著しく正義に反する」と結論づけた。
 戦後、量刑不当を理由に無期懲役の2審判決が破棄された事例はこれまでに2件しかない。だが、この判事が判決を重く受け止めたのは、単に異例のケースだったからではない。従来の量刑基準から厳罰化へと大きく舵を切ったものだったからだ。
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 死刑適用の是非をめぐる裁判所の判断は、昭和58年に連続4人射殺事件の永山則夫=平成9年死刑執行=への上告審判決で示された「永山基準」に基づいている。動機や犯行態様、被害者の数、遺族の被害感情など9条件を列挙し、「それらを考慮してやむを得ない場合には死刑の選択も許される」としたものだ。9条件の中でも、最も重視されるのが「被害者の数」。1人なら無期懲役、3人以上では死刑、2人の場合はそのボーダーラインというのが、量刑の“相場”とされてきた。
 ところが被害者が2人、しかも未成年による犯行だった光市事件を、最高裁は「死刑が相当」と判断したのだ。さらに判決は、永山基準の一節を引用しながらも、「死刑の選択も許される」から「死刑の選択をするほかない」へと表現を強めている。
 元最高検検事で白鴎大法科大学院院長の土本武司は「死刑がやむを得ない場合の『例外』から、特別な理由がない限り適用される『原則』へと逆転した画期的な判決」と指摘する。
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 昨年9月に開かれた光市事件の差し戻し控訴審第10回公判。遺族として意見陳述を行った本村洋(32)は10分余りにわたった陳述を、こう締めくくった。
 「人の命を身勝手にも奪った者は、その命をもって償うしかない。それが私の思う社会正義です」 本村の言う「私の思う社会正義」が国民の多くにとっても共通する認識であることは、死刑制度をめぐる各種世論調査の結果をみれば明白だ。内閣府による平成16年の調査では「賛成」が80%を超えた。裁判所の厳罰化の姿勢を後押ししているのは、本村ら犯罪被害者をはじめとしたこうした世論に他ならない。
 だが自身が死刑を宣告する立場になったら、確信をもって判断することができるだろうか。だれもがその判断を迫られる可能性がある裁判員制度は、来年5月21日に始まる。
 今年2月、強盗殺人などの罪に問われ1、2審で無期懲役とされた男の上告審決定で、裁判官5人の意見が3対2の二つに割れる極めて異例の事態が起きた。少数意見の死刑相当を主張した才口千晴は決定書で「裁判員制度を目前にして、死刑と無期懲役の基準を明確にする必要がある」との提言を付した。
 土本は期待をこめて語る。「光市事件の判決では、裁判員への指針となりうる判断を示してほしい。また、そうなるべき事件だ」
(敬称・呼称略)
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差し戻し控訴審判決2008/4/22を前に…【4度目の判決 光市事件が問うたもの(上)】被害者を取り巻く環境 2008-04-19 
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