岐阜 中津川の家族5人殺害〈原平被告〉 一審判決を支持し、二審も無期懲役 名古屋高裁2010/1/26

2010-01-26 | 死刑/重刑/生命犯

中津川一家殺傷、二審も無期
 2010年1月26日 中日新聞夕刊
 岐阜県中津川市で2005年2月、家族5人を殺害、1人にけがを負わせたとして殺人などの罪に問われた元市職員の原平被告(62)の控訴審判決が26日、名古屋高裁であった。片山俊雄裁判長は「5人の命を奪った責任は重大だが再犯のおそれは考えがたく、死刑にするにはためらいが残る」と述べ、一審岐阜地裁の無期懲役判決を支持、死刑を求めた検察、有期懲役刑を求めた弁護側の控訴をそれぞれ棄却した。
 判決理由で片山裁判長は「(殺害した)母親から、妻が常軌を逸した嫌がらせを受けていた」と動機に言及。「一家心中を考えた経緯には酌量の余地がある」と述べた。犯行に周到な計画性がなく、被告が反省を深めていることや、前科や前歴がなくまじめに社会生活を送ってきたことを指摘。「残りの人生を全うさせ、被害者らの冥福を祈らせ償いにささげさせることも不合理とは言えない」として死刑を回避した。
 遺族の一人が控訴審になって死刑を求めたが「謝罪を受けることで被害感情が癒やされる可能性もある。今の感情をよりどころに死刑にするのは、相当ではない」と退けた。妄想に支配された犯行とする弁護側主張も「計画に沿い慎重に実行している」と退けた。
 一審判決によると、原被告は05年2月27日、母チヨコさん=当時(85)=が妻をいじめるのを自分への嫌がらせと思い込み、母の殺害を決意。長男正さん=同(33)=や長女藤井こずえさん=同(30)、孫の孝平ちゃん=同(2つ)、彩菜ちゃん=同3週間=らも「殺人者の家族として生きていくのは気の毒だ」と考え、5人の首をネクタイや手で絞めて殺害。こずえさんの夫藤井孝之さん(44)を包丁で刺し、2週間のけがを負わせた。
 原被告自身も首を刺して自殺を図った。
 一審判決は「一家心中が目的で、計画性はない。再犯可能性も低い」と死刑を回避し、検察と弁護側の双方が控訴していた。
 控訴審で検察は「無期懲役は軽すぎる」と死刑を求め、弁護側は有期刑を求めていた。
 松井巌・名古屋高検次席検事の話 検察の主張が認められず遺憾だ。判決を慎重に検討し、対応を決めたい。
被告の反省重視
 名古屋高裁判決は、真摯(しんし)に反省する被告が遺族に謝罪することで被害感情が癒やされる可能性や、再犯のおそれがないことを重視し、死刑回避の結論を導いた。
 死刑の適用は、最高裁が1983年の判決で基準を提示。動機や手口のむごさ、被害者の数、遺族の処罰感情など9項目に照らし、やむを得ない場合に限るとされている。
 「2人死亡がボーダーライン」(刑事裁判官)といわれるように被害者数が指標として定着しており、5人を殺害した今回は、いや応なく死刑に傾く。ただ一家心中のケースは死刑を避ける傾向にある。最近は最高裁の基準にない「被告の更生可能性」を重視する判決もあり今回も流れに沿った結論となった。
 控訴審では、殺された長女の夫が二審になって死刑を求め、検察主張の柱になったが、高裁は「残りの人生で被害者の冥福を祈らせ償いにささげさせることも不合理とは言えない」と、立ち直りに望みを見いだした。
 多くの命が失われた事件でも、被告の命を差し出すことだけが償いではない。旧来の指標に縛られない、柔軟な判断だった。 *リンクは来栖
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「一家心中」背景、控訴審も考慮 岐阜の家族5人殺害
 産経ニュース2010.1.26 12:22
  家族5人を殺害するなどして殺人罪などに問われた元岐阜市職員の原平被告(62)に対し、無期懲役の一審判決を支持した26日の名古屋高裁判決は「5人殺害という極めて重大な結果を生じさせた」と被害人数を重視しながらも、母親から精神的に追い詰められた上で一家心中を図ったという背景を考慮した。
 死刑か否かの判断は、昭和58年の最高裁「永山基準」が示した動機、殺害方法の残虐性など9項目で判断され、特に被害者数は重視されてきた。しかし近年は被害者が1人でも残虐性などによっては死刑が言い渡されるなど、厳罰化の流れが加速している。
 5人殺害にもかかわらず無期懲役を選択した判決は異例ともいえるが「家族間の犯罪で、被告は母親の言動に長年苦しんでおり、同情の余地がある」と述べ、事件の背景から判決を導いた。
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中津川一家殺傷、2審も無期判決 
 2010年1月26日 13時17分
 岐阜県中津川市で2005年2月、家族5人を殺害、1人にけがを負わせたとして殺人などの罪に問われた元市職員の原平被告(62)の控訴審判決が26日、名古屋高裁であった。片山俊雄裁判長は「5人の命を奪った責任は重大だが再犯のおそれは考えがたく、死刑にするにはためらいが残る」と述べ、一審岐阜地裁の無期懲役判決を支持、死刑を求めた検察、有期懲役刑を求めた弁護側の控訴をそれぞれ棄却した。
 判決理由で片山裁判長は「(殺害した)母親から、妻が常軌を逸した嫌がらせを受けていた」と動機に言及。「一家心中を考えた経緯には酌量の余地がある」と述べた。犯行に周到な計画性がなく、被告が反省を深めていることや、前科や前歴がなくまじめに社会生活を送ってきたことを指摘。「残りの人生を全うさせ、被害者らの冥福を祈らせ償いにささげさせることも不合理とは言えない」として死刑を回避した。
 遺族の一人が控訴審になって死刑を求めたが「謝罪を受けることで被害感情が癒やされる可能性もある。今の感情をよりどころに死刑にするのは、相当ではない」と退けた。妄想に支配された犯行とする弁護側主張も「計画に沿い慎重に実行している」と退けた。
 一審判決によると、原被告は05年2月27日、母チヨコさん=当時(85)=が妻をいじめるのを自分への嫌がらせと思い込み、母の殺害を決意。長男正さん=同(33)=や長女藤井こずえさん=同(30)、孫の孝平ちゃん=同(2つ)、彩菜ちゃん=同3週間=らも「殺人者の家族として生きていくのは気の毒だ」と考え、5人の首をネクタイや手で絞めて殺害。こずえさんの夫藤井孝之さん(44)を包丁で刺し、2週間のけがを負わせた。
 原被告自身も首を刺して自殺を図った。
 一審判決は「一家心中が目的で、計画性はない。再犯可能性も低い」と死刑を回避し、検察と弁護側の双方が控訴していた。
 控訴審で検察は「無期懲役は軽すぎる」と死刑を求め、弁護側は有期刑を求めていた。
 ■松井巌・名古屋高検次席検事の話 検察の主張が認められず遺憾だ。判決を慎重に検討し、対応を決めたい。(中日新聞)
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「謝罪の気持ち伝える努力必要」 中津川一家殺傷判決
 2010年1月26日 13時08分
 「人の手を借りてでも、遺族に謝罪の気持ちを伝える努力が必要です」。名古屋高裁で26日、言い渡された岐阜県中津川市の一家殺傷事件の控訴審判決。乳児を含む家族5人の殺人などの罪に問われた元市老人保健施設事務長原平被告(62)を無期懲役とした名古屋高裁の片山俊雄裁判長は、言い渡し後、被告にこう呼び掛けた。山あいの一家を襲った惨劇から5年近く。遺族は、傍聴席で複雑な表情を浮かべた。
 灰色のジャージー姿で、頭髪を短く刈り込んだ原被告は、身長153センチの小柄な体を前かがみにしたまま片山裁判長が読み上げる判決理由に、じっと耳を傾けた。
 朗読では、最も信頼していたはずの家族に命を奪われた犠牲者の無念な思いの指摘も。原被告は時折、事件を思い出すようにまばたきし、うつむいた。
 一審は「追い詰められた末の一家心中。酌量の余地はある」として無期懲役としたが、この日の控訴審判決も「残りの人生を全うさせて亡くなった被害者らの冥福を祈らせ償いにささげさせることも不合理な選択とはいえない」と指摘した。
 昨年11月の被告人質問で一審判決について「命を助けられた。このまま生きていていいのかという気持ち。死んでしまった方がいいとも思う」と述べていた原被告。
 最後に裁判長に向かって2度頭を下げたが、昨年1月の岐阜地裁での一審判決の時と同様、謝罪を望む遺族のいる傍聴席には目を合わせず、法廷を後にした。
 原被告の近所に住み、死刑回避を求める嘆願書を集めた鉄工所経営の男性は「悔い改める良い機会を与えてもらった。ありがたい判決だ」と喜んだ。
 男性は「まじめできちょうめんな人。犯行の時は、精神的に相当追い詰められ不安定な状態だったと思う。早く正常な状態に戻ってほしい」と述べた。
 ただ「母親が憎いというだけで、あんなにひどい事件を起こしたのは、どうしても解せない。原被告の心の内面を解明してほしかった」と話した。(中日新聞)
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◇ 岐阜 中津川 家族5人殺害事件 原平被告 無期懲役確定へ 最高裁2012/12/3付け 
◇ 岐阜 中津川の家族5人殺害〈原平被告〉謝罪の手紙 事件から5年 2010-02-28
中津川一家5人殺害事件 原平被告 検察が上告 2010-02-09 
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