いま、小沢一郎が考えていること--国税庁・年金機構廃止、歳入庁創設、宗教法人課税強化 『週刊ポスト』2012.3.2号

2012-02-20 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

いま、小沢一郎が考えていること--国税庁・年金機構廃止、歳入庁創設、宗教法人課税強化
週刊ポスト2012 MAR.3.2号
 「最後のご奉公です。文字どおり『最後』です」
 小沢一郎・民主党元代表は、本誌新春合併号のインタビューでそう語った。
その最後の戦いの火ぶたがついに切って落とされた。増税、年金改悪、対米従属、大メディア癒着、そして霞が関支配---野田政権の最低最悪の政治に堪忍袋の緒が切れた「壊し屋」が挑む決戦の秘策が、いま明らかになる。
■増税と小沢公判の奇妙な符号
 党員資格停止で蟄居させられ、“疑惑の法廷”で被告席に座っていた小沢一郎・民主党元代表が、ついに動き出した。
「大改革もしないで増税するのは、国民を愚弄する背信行為だ」
 これまでほとんど出なかった大手メディア(共同通信)のインタビュー(2月4日)で消費増税への反対論を展開したのを皮切りに、ネット番組やBS放送に相次いで出演し、増税反対運動を強力に展開している。
 2月9日には小沢グループ新しい政策研究会の会合に約100人を集め、2月10~13日には自ら塾長を務める「小沢一郎政治塾」を開催するなど、活動を本格化させた。
 その理由は、足枷となってきた自身の政治資金規正法違反事件の公判が大きな転機を迎えたことだ。
 公判では検察の捜査報告書にある元秘書・石川知裕代議士の供述がでっちあげだったことが検事への証人尋問で明らかになった。石川供述は、検審会が小沢氏を強制起訴と議決した際の有力な根拠とされたが、それが覆された。さらに検審の審理にあたった検察が小沢氏に有利になる捜査報告書を選別して隠し、提出していなかった事実も発覚している。
 弁護側は「虚偽の捜査報告書を根拠にした議決は無効」として公訴棄却を要求している。
 公判は裁判所が2月17日に問題の捜査報告書などの証拠採用の判断を下した後、3月9日に論告求刑、同19日に弁護側の最終弁論を経て結審し、4月中に判決が出される見通しだ。
 だが、小沢氏は判決を待つつもりはない。側近のベテラン議員はこう語る。
「判決を待っていては消費増税のレールが敷かれてしまう。小沢さんは証拠採用の対応を見極めた後、小沢派120人に増税法案を阻止するための号令をかけ、増税派に政策論争を挑む覚悟を決めている」
 一見無関係な小沢裁判と増税論は、水面下で表裏一体となって進められてきた。増税派が最も恐れるのは野党でもマスコミでもなく、小沢氏だったからだ。
 増税論が最初に浮上したのは10年の参院選前。検察の強制捜査で小沢氏が幹事長を辞任し、「小沢排除」を掲げて財務大臣から首相に就任した菅直人氏が突然、消費税率の10%への引き上げを打ち出した。参院選に敗北した菅首相に小沢氏が代表選で挑むと、なんとその投票日に検審会が強制起訴を議決して小沢氏の首相就任を阻止するというわかりやすい展開に。やはり財務大臣から首相に上り詰めた野田佳彦氏は、いっそう増税にのめり込み、昨年10月から始まった公判で小沢氏が身動き取れない間に、党内で「一体改革素案」を決定した。
 そしていま財務省を中心とした増税派は、なんとしても小沢判決前に増税を既定路線にしようとしている。
「たとえ罰金でも小沢氏が有罪になれば党内の増税反対派は総崩れになるが、有罪が無理なら判決前に増税路線を後戻りできないところまで進めなければならない」(野田側近議員)
 野田首相がどう見ても勝算のない消費増税をゴリ押ししているのは、背後にいる財務省が小沢復権を恐れているからに他ならない。
 それをよく知っている小沢氏は、「敵の嫌がることをせよ」の兵法通り、判決を待たずに勝負に動いた。
 決戦の火蓋は切って落とされた。
 小沢氏が増税反対をぶち上げると、野田首相は対抗策として党内締め付けに出た。与野党協議を1回も開かないまま見切り発車で消費増税大綱の閣議決定を急ぎ、ご丁寧にその閣議決定を、先述した小沢公判の重大局面である2月17日朝に設定した。
 さらに民主党執行部は翌2月18日から300選挙区で順次、車座集会を開き、「消費税紙芝居」を使って増税キャラバンを始める。これも共同通信の小沢インタビューが報じられた直後の党常任幹事会で突然方針が伝えられたものだ。
 政府は既に安住淳財務相、岡田克也副首相らの増税全国行脚をスターとさせており、今度は党主催所属議員全員にそれを強制しようというのだ。
「いったん車座集会に出れば、増税に反対できなくなるから、これは反対派や中間派への踏み絵だ。党のカネで票を減らす増税キャンペーンなど気がおかしくなったとしか思えない」(増税反対派の若手議員)
 そうした締め付けに、増税キャラバンの責任者にされた小沢グループの広野允士党広報委員長(参院議員)は辞表を叩きつけた。広野氏が語る。
「車座集会で有権者の意見を聞くという建て前だが、実際は増税賛成派を集めて『大きな反対はなかった』とアピールする“やらせ”です。一般有権者は『民主党は嘘をついた』と増税に反対しており、地元の会合でもそれを肌で感じる。政治理念として増税に反対だから、広報委員長として増税キャラバンに加担するわけにはいかない」
 広野氏は辞表を出す前夜、小沢氏に進退を報告した。「小沢さんからは、『おお、そうか。それは政治判断だから重く受け止める』と言われました」(広野氏)
 辞任は小沢氏の承諾の上だった。
 しかし、増税反対を叫ぶだけでは、増税礼讃の大メディアから「財源はどうする」「無責任」と集中砲火を浴びることは明白だ。
「そんなことは百も承知。増税が必要だという霞が関のウソを暴かなければ有権者への説得力はない。小沢さんは政策論争で増税派を論破する準備をしている」
 小沢側近は自信満々の言い方をした。必要なのは、増税なしでこの国を立て直すビジョンと理念である。小沢氏は反増税の対案を示して、この国の「新しい形」を語れるのか。
■18兆円の財源を生む秘策 歳入庁創設で財務省を「武装解除」
 税は国家の基本といわれる。小沢氏は政権交代前から、増税ではなく、「統治機構の改革」と「総予算の組み替え」によって財源は生まれると主張してきた。
 BS11の番組(2月10日放送)でこう語っている。
「政権交代をするときに、統治の機構という言い方をしますが、行政を根本から変えなくちゃいけないと我々は主張したわけです。地域主権というのは明治以来の中央集権、官僚を中心とした行政の在り方を変えることです。そのことを主張して、公平・公正な行政を行うと同時に、無駄に使われているお金を全部洗い出して財源に充てると国民に言ったわけです」
 その統治機構改革の象徴が、小沢氏が09年総選挙のマニフェストに盛り込んだ「歳入庁」の創設だ。
〈社会保険庁は国税庁と統合して「歳入庁」とし、税と保険料を一体的に徴収する。所得の把握を確実に行うために、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する〉---マニフェストにはそう明記されているが、この改革を実行すれば税収面で大きな効果を生むことは間違いない。
 どういうことか。
 国税庁に税務申告している企業、医療法人などの総数は全国約262万社(10年度末)にのぼるが、このうち厚生年金に加入している事業所数は約175万社(同)。その差、87万社は年金保険料を納めておらず、社員は無年金か、自営業者と同じ国民年金などに加入させられている。これは違法行為である。
 歳入庁をつくれば、税金だけ納めて保険料は払わないということはできなくなるから、保険料徴収漏れを一気に解決できる。
 民主党議員の勉強会で歳入庁の重要性を説いてきた元財務官僚の高橋洋一嘉悦大学教授が指摘する。
「175万社の厚生年金の保険料収入は年間約32兆円。未加入の87万社の徴収漏れはざっと10兆円と推計される。野田政権が社会保障財源のためといっている増税がなくても、歳入庁をつくって取るべき保険料を取れば10兆円の財源ができる。
 さらに国民総背番号制度を導入すれば税の捕捉率が高まり、5兆円ほど税収増になる可能性がある。それに加えて、日本の消費税制にはインボイス(仕入れ時に消費税額を記入する書類)がないから捕捉漏れが起きている。インボイスで税務署が捕捉漏れを防げば、消費税5%のままでも約3兆円の増収になる。合わせて18兆円だから、増税の必要は全くありません」
 それなのに歳入庁設置が進まないのはなぜか。
 財務省が嫌がっているからである。巨大な税務調査権を持つ国税庁の存在は、財務省を頂点とする官僚支配の「裏権力」の源泉になってきた。
 国税庁の幹部は財務省キャリアで占められ、政治家でも民間人でも、財務省の政策に反対する者を税務調査で恫喝することは、日本の裏面史だった。最近も、国税当局が大新聞に次々に税務調査をかけ、その直後からメディア全体の論調が増税賛成へと急傾斜したことを本誌は報じてきた。
 国税庁解体は、財務省の”秘密警察”を武装解除する意味があるのだ。だから霞が関改革につながる。
 実は、野田政権の税・社会保障一体改革素案にも表向き歳入庁創設の方針は盛り込まれている。だが、財務省が絶対反対の立場をとっているため具体的な検討は全く進んでいない。
「財務省は、国税庁を旧社保庁(日本年金機構)と統合すると人事コントロールができなくなる。税務調査権という伝家の宝刀が使い難くなるから絶対に阻止したい。英国では99年に国税庁と社会保険徴収庁を統合して歳入庁を創設した。検討開始から実現までわずか2年、間接部門もスリム化できた。当時米国留学中だった私がこの英国の歳入庁創設をレポートして本省に報告したら、暗に、“二度と持ち出すな”と口止めされたほどです」(高橋氏)
 政治主導を掲げる小沢氏が歳入庁の創設にこだわる理由はここにある。そして、財務省に支配された野田政権が歳入庁構想を棚上げしている理由も、ここにある。
■旧体制派の税金優遇にメス 増税はまず大企業と宗教法人から
 小沢氏はよく、目指す制度改革を「旧体制のアカを落とす」と表現する。旧体制で力を握ってきた霞が関や大メディアがそれを嫌がるのは当然だが、その一味には経団連を中心にした旧態依然の大企業もいる。
 経団連が、景気を冷え込ませる消費増税に賛成しているのは、「大企業への補助金」といわれる消費税の輸出戻し税があるからだ。
「税率を5%上げれば輸出戻し税も2倍に増えて財界の主要企業は儲かります。この特権を見直せば、税率を上げなくても税収は増えるし、財界はもっと冷静に増税の影響を考えるようになる」(小沢グループ議員)
 説明が必要だ。
 消費税は流通段階で価格に転嫁され、最終的に消費者が負担するが、海外の最終消費者からは税を取れないという理由で、輸出製品には仕入れ段階で課せられた消費税を企業に還付している。これが輸出戻し税で、還付額は年間3兆円。自動車、電機など大手メーカーは、納める消費税より還付金の方がはるかに多く、輸出上位10社でざっと1兆円近くが戻されている。
 税理士の湖東京至・元関東学院大学法科大学院教授は、税制の矛盾を指摘する。
「政府は消費増税分をすべて社会保障に回すという。現在の5%の消費税も基礎年金、医療、介護の財源という建て前です。そうすると、輸出大企業は社会保障財源から補助金をもらっていることになる。『租税は各人の能力に応じて負担されるべき』という租税立法上の原則に照らしても、輸出戻し税の還付金制度は廃止か停止すべきです」
 もうひとつ、旧体制で不平等税制の恩恵にあずかってきたのが宗教法人だ。
 宗教法人はお布施や賽銭など宗教活動の収入は非課税で、不動産の固定資産税なども免除。保育園や墓地経営などの「非収益事業」も非課税、物品販売や飲食業、駐車場などの収益事業は課税対象だが、所得の2割が控除され、通常より低い法人税が適用される。
 小沢氏が幹事長だった鳩山政権時代には、政府税制調査会で当時の増子輝彦経済産業副大臣が「宗教法人の税制には問題が多い」と提起するなど、宗教法人税制の見直しが論議されかけた。しかし、菅政権、野田政権では、消費増税に公明党の賛成が必要になるため、政府税調の議論から消えたのである。
「宗教法人への課税強化は難しいというが、実際には国税は、小さな寺の住職が檀家からお布施として米をもらったことを所得だとみなして課税したケースもある。一方で巨大宗教法人に関しては、所有する会館を選挙活動に貸し、明らかに課税事業の貸席業を行っていたとしても調査をしない。法改正しなくても、きちんと税務調査するだけで課税強化はできる。それをしないことが行政の不公平です」(浦野広明・立正大学法学部客員教授)
 小沢氏が自信たっぷりに「増税せんでも財源はある」と繰り返し発言しているのは、そうした算盤勘定をしているからだ。ただし、旧体制の抵抗は厳しい。
■バカ高公共事業を政治家が支えた利権関係はこれだ「競り下げ」という「予算圧縮」の魔法の杖
 増税派の仙石由人・政調会長代行は昨年末のテレビ番組で、小沢氏が無駄削減や行政抜本改革を主張していることを「行革を今からいくらやっても2兆円、3兆円は出てこない」と批判した。
 予算の圧縮は無理というのが、大メディアを含めた増税派の常套句だ。
 しかし、それも嘘だ。イギリスなど欧米諸国の入札制度改革を視察してきた民主党反増税派の村井宗明・代議士は、入札方式を変えて「競り下げシステム」を導入するだけで、大幅に予算カットできると主張する。
 現在の一般競争入札は、業者が1回だけ札を入れ、一番安い業者が受注する。それに対して「競り下げ」は、落札したい業者が何度でも価格を下げて応札することができる。欧米では「リバースオークション」と呼んでいる一般的な制度だ。
「予算の無駄で一番大きいのは物品やサービスの官民価格差です。鉛筆1本でも政府や公共機関は民間よりはるかに高く買っている。行政刷新会議で昨年4月から試験的に44件の調達に競り下げを導入したところ、厚労省のポスターの印刷費は1枚当たり22円から11円と半額になり、同省の報告書の印刷代は3分の1、農水省の消火器は4割近く下がった。内閣府のトイレットペーパーは1個62円から36円です。政府の一般会計の直接発注だけで年間12兆円の予算がある。同じ品目を同じ数量買っても、調達方法を変えれば莫大な財源が出てきます」(村井氏)
 イギリスでは10年、政府歳出削減のためにリバースオークションを導入。調達コストを14%も引き下げた。米国のオバマ政権も調達契約改善計画を設定し、年間400億ドル(約3・3兆円)の削減を目標にしている。
 かつての年金官僚や道路官僚の無駄遣いを見ても、日本の政府調達価格は諸外国よりさらにバカ高い。12兆円の国の直接発注に競り下げを導入し、イギリス並み14%削減なら1・7兆円、半減なら6兆円が浮く。さらに国が自治体に補助金など出している間接発注がざっと30兆円。特別会計の発注も30兆~40兆円とみられ、自治体の直接発注を合わせると、毎年100兆円規模で役所のバカ高発注が繰り返されている。そこのメスを入れれば1割カットで10兆円、2割なら20兆円が毎年削減できるのだ。
 それがわかっている筈なのに、野田政権は、なぜ増税に走るのか。
 そこに立ち塞がっているのも旧体制派だ。
 政府や自治体の調達は、業種や品目ごとに「官公需適格組合」が組織され、官公需法で、「組合を国等の契約の相手方として活用するように配慮しなければならない」(第3条)と定められている。配慮せよという努力規定に過ぎないが、この組合が力を持っている。
 村井氏が本格導入に踏み込めない理由をこう語る。「政治献金のほとんどは官公需組合に加盟している企業からです。与野党の大半の議員は組合加盟企業の支持を受けているから、敵に回したくない。競り下げ入札の導入には組合の猛烈な批判があり、党幹部からも、『お前が競り下げと騒ぐから、官公需組合が怒るじゃないか』と腰の引けたことを言われました」
 小沢氏が企業・団体献金の全面禁止を主張してきたのも、そうしたしがらみを断つことが改革の前提だと知っているからだ。が、その方針も岡田副首相が幹事長時代に撤回してしまった。
 小沢氏は本誌新春合併号で、民主党政権の予算編成をこう批判した。
「我々は総選挙で、特別会計を含めた国の総予算207兆円を全面組み替えて、国民主導の政治と地域主権の社会を実現すると国民に約束して、政権交代を認めてもらった。その理念、主張を全く忘れちゃって、今までと同じやり方で予算編成を行っている」
 民主党政権はこの3年間、過去最大の予算を組んできた。政権交代した直後の鳩山内閣は事実上、自民党政権時代の予算を引き継いだものだったが、菅ー野田政権の2回の予算編成では、既得権勢力に切り込むことができずに官僚に迎合した結果、自民党時代の政策の上に民主党の政策を積み上げたため、予算規模がどんどん膨らんだのである。
 増税派ができない入札改革の実行は、小沢氏のいう総予算の組み替え、既得権を切り崩して「公正・公平な社会」をつくるための試金石だ。それをやれば、「予算削減は無理」という増税派のデマを暴くことができる。そして、野田政権と財務官僚ができないと決めつける「財政確保」と「予算圧縮」が可能となれば、「年金試算」の公表をめぐって「消費増税しなければ実現できない」とされた「最低保障年金」についても、実現の道が開けるのである。
■野田政権の“ご主人”は官・米・報だった 税金を使った大メディアへの「付け届け」
 小沢氏の現政権批判は、外交でも厳しい。かねて小沢氏は「米国との対等な関係」を主張してきた。
 小沢グループの会合では、日米関係について、「様々なところで日米同盟という言葉を聞くが、沖縄の問題にしても今の日米同盟はそういえる状態にあるのか。本当に対等なのか」と問題を投げかけた。
 その小沢氏が最も怒りを見せたのが、野田首相が今国会から内閣法制局長官の国会答弁を復活させたことだった。
「立法府における議論こそ、政治家自身で行わなければ、政治主導とは到底言えない」
 2月13日の小沢政治塾での講演で、小沢氏は激しくそう批判した。実はこれも外交政策に起因している。
「日本に議会制民主主義を定着させることが政治家としての使命」と云い続けてきた小沢氏は、国権の最高機関である立法府が役人にコントロールされていることを最も憂慮し、政権交代後、官僚の国会答弁を原則禁止し、とくに内閣法制局長官が法解釈を述べることを厳しく禁じた。
 かつて湾岸戦争当時に内閣法制局は「憲法上、自衛隊派遣はできない」と主張してPKO派遣を潰し、逆に小泉政権下のイラク戦争ではご都合主義で法解釈を変えて自衛隊派遣を認めた。事実上、外交を官僚が決めてきたのである。小沢氏は湾岸戦争では国際協力を主張し、イラク戦争では「大義がない」と自衛隊派遣に反対した。内閣法制局とは宿敵の関係にあった。
 野田首相が、その政治家の最大の責任である外交の主導権さえ霞が関に“大政奉還”してしまったことで、小沢氏は“この政権は終わった”と見限ったのだ。
「政権交代の時に掲げた大義の旗をもう一度高く高くかかげて頑張る姿を描きたい」(BS11)
 この発言には、民主党を元の形に戻したいという小沢氏の強い意志を感じる。いま縛られている小沢氏の構想は、すべて民主党マニフェストの理念に基づく原点回帰である。
 その小沢氏が戦う。霞が関と並ぶ最強の敵は大メディアになる。
 野田政権は政府・党あげての増税キャラバンに乗りだした裏で、増税反対の論陣を張らないよう大メディアへ“付け届け”を出した。
 政府はすでに5億800万円の予算をつぎ込んで昨年12月と今年1月に全国紙や地方紙に増税の全面広告を2回掲載した。さらにTPP推進名目でも全面広告掲載が準備され、3か月で10億円近い金が大メディアに配られる。これこそバラ撒きだが、新聞・テレビが批判するはずがない。
 さらに今度は、民主党執行部が増税キャラバンに合流し、政党交付金(税金)まで大メディアに差し出そうとしている。
 前出の広野・前民主党広報委員長が語る。
「メディアには政府広報ばかりか党の広報予算でも広告を入れてほしいという意議(ママ?)がある。党の増税キャラバンはその期待に応えるものでしょう。広告をもらえば、彼らは野田政権を批判しないわけですよ」
 小沢氏の決起と同時に、例によってメディアの猛烈な小沢バッシングが始まることは間違いないだろう。それこそが消費税増税の最終攻防になる。
 *強調(太字・着色)、リンクは、来栖
==========================================
小沢一郎氏裁判/有罪とするには、採用された池田光智被告の1つがあればよい/小沢氏の政治生命は断てる 2012-02-19 
 〈来栖の独白2012/02/19 Sun.〉
 裁判とは、怖いものだ。石川知裕議員の披露宴に出席している鈴木宗男氏の顔(画像)を見ていて、ふと小沢一郎氏の裁判、裁判長大善氏の目論みを思った。
 そもそも小沢氏の強制起訴は、愚かな市民(委員)を操って、国と検察、そして政界が既得権益を守らんがために小沢氏を葬ろうとでっち上げたもので、メディアを走狗としてフルに使った。
 今月17日金曜日、東京地裁大善裁判長は、検察側証拠書類の大半を信用できないとして却下。しかし、楽観できない。小沢無罪を言い渡すことは、検審会の存在意義が問われることであるし、司法官僚の受けも決してよいはずはない。大善氏の将来(出世)を考えれば、氏の得点になるとは考えにくい。
 いや、そのようなことよりも何よりも気になってならないのは、証拠却下されたのが「大半」であって、「全部」ではないということだ。池田光智被告の調書は採用されている。被告人を有罪とするに証拠は多くは要らぬ。1つあればよい。池田光智被告の1つによって有罪になれば(微罪で執行猶予でも)、その瞬間に小沢一郎さんの政治生命は断たれる。選挙に出ることが出来なくなる。鈴木宗男氏がそうだ。「微罪でよい。執行猶予も付けてやろう」、大善氏は有罪の青写真を描いたうえで---小沢氏の息の根を止める手はずを整えて---大半の証拠を却下、身内同然の検察に「これからは気をつけなさいよ」と余裕で、たしなめて見せたか。
 振り返ってみれば、このようにして(特捜)事件は造られ、権力の側に好いように判決されてきた。小沢排除を狙って、周到にこのこと(~強制起訴)を仕掛けた検察が、最後の矢を外すとは思えない。小沢無罪は奇跡に近い。胸が騒ぐ。騒いでならない。
===================================
◆ 小沢一郎氏「お見舞いに歩くのが政治家の仕事なのか?お悔やみを申し上げるのが政治家の仕事なのか?」 
 〈来栖の独白 2012/01/04 Wed.〉
 東日本大震災と政局ということについて、短く感じたことを述べてみたい。
 昨年の民主党代表選、或いは先ごろの多数の民主党議員の離党・新党結成の折、「東日本で被災して多くの国民が苦しんでいるときに、政治家は、勢力・権力争いに明け暮れて・・・」との批判をメディア上で何度も目にした。(略)「今更来ても遅い。震災直後の惨状を見れば、党内で足の引っ張り合いをしてる場合じゃないと気づいてもらえたはず」と不満を漏らす女性の声が載っている。生活に切羽詰った被災者たちの感情として当然かなとも思うが、果たして、そうか。いや、これほどに困窮を極めた今日だからこそ、政治にしっかりしてもらわなくてはいけないのではないか。そんな気がする。
 小沢一郎さんは、以下(↓)のように言う。以下のように言いながら、小沢一郎という政治家のやさしさ、熱さは、公判を含めた過密日程の間隙を縫って被災地を訪れた。
 “マスコミ自体も、政治が何をすべきか、政治家が何をすべきかと(報じない)。お見舞いに現地を歩くのが政治家の仕事なのか? お悔やみを申し上げるのが政治家の仕事なのか? というふうに私はあえて憎まれ口をきくけれど、やはり政治の役割というのは、そういうことではないと思う。このような深刻な事態をどのようにして克服していくか、そのためには政治の体制はどうあるべきなのか、政治家はどうあるべきなのかと考えるのが、本当に国民のための政治家のあり方だと私は思っている。そういう意味で、今後もいろいろとご批判は頂きながらも、私の信念は変わらないので、その方向で頑張りたいと思う。
 これは、媚びない姿勢がなくては言えない言葉だろう。またその前提として、日々の生活に窮する民の惨状を知り、それゆえに、政治の果たす役割が「国民の生活が第一。」と見極めた確かな眼がなくては、言えない言葉だと思う。確かな眼とは、「本物の政治家の眼」ということだ。
 当然のように、このような政治家が国民に理解されることは稀である。剛腕などと云われ、嫌われる。「災害があればいち早く現地に駆けつける」という動きの良さもないので、不可解である。ポピュリズムとは対極にある。
 この種の政治家は、国民からの人気がないばかりではない。既得権益といった旧弊にとらわれないので、官僚からも嫌われる。おまけに要領が悪いゆえ、エンタメ(メディア)に貢献するところなく、嫌われる。
 国民(検審)・官僚・メディアから嫌われれば、行き着く先は決まっていよう。かくて小沢一郎氏は、地元から帰京すれば、10日、11日の裁判(東京地裁 公判)が待っている。被告人質問である。
 東日本大震災という未曽有の苦難のなかで、この国はかくも、有為な政治家の手足を縛った。
 ところで、ここからは余談になるので後日に稿を改めたいと思うが、昨年より深く憂慮している一事がある。4月にも判決といわれている、小沢一郎さんの裁判である。
 陸山会事件登石郁郎裁判長の判決で思い知らされたが、裁判長には裁判長で、縛りがかけられているということだ。登石裁判長の下した判決は、郷原信郎氏のような専門家は無論のこと、私のような素人がみても、おかしな判決だった。なぜ、このような恥ずべき判決文を書かなければならなかったのか。まかり通ったのか。
 新藤宗幸氏はその著『司法官僚〔裁判所の権力者たち〕(岩波新書)の中で、次のようにいう。
“司法官僚は全国の判決や訴訟指揮の情報を集める。それをもとに行使される人事権は全国3500名の裁判官たちに絶大な影響力をもつ。10年ごとの再任の有無、昇級、転勤を司法官僚が決める。事務総局が召集する「合同」と呼ばれる研究会も下級審の裁判内容を遠隔操作する結果を生む。
 裁判とは社会で周縁においやられた人々の、尊厳回復の最後の機会である。必死の訴えをする人々に遭遇したとき、裁判官は全人格的判断をもって救済に当たるべきだ。しかし、人々の目にふれぬところで、裁判官の内面までゆがめ、その存在理由をあやうくしているシステムがあるのだとすれば大問題である。
 政権交代とは闇を打破る時代のことであろう。本書の提言にかかる裁判所情報公開法などによって司法の実態にも光が当てられ、真の改革が着手されるべきだ。”
 ここでも“官僚”である。上の文脈によれば、小沢氏裁判で「無罪」と書いて大善文男裁判長個人に利するところがあるか。無い(だろう)。地方の簡裁か家庭裁判所へ飛ばされるのがオチであろう。
 前田元検事は「主任検事から『この件は特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢をあげられなければ特捜の負けだ』といわれた」と証言している。裁判所にとって、被告人に利するか、はたまた長く利益を分かち合ってきた検察との仲を保つかを天秤にかけるなら、答えは歴然としていよう。
 そのことは、検察と一体となり走狗となって「小沢 クロ」と書いてきたメディアとっても同様である。ここで「小沢 無罪」が出たなら、メディアは、どう書けばいいのか。
 ことほど左様に、司法には司法の事情があり、裁判所と検察には判検(一体)の、検察とメディアには検察とメディアの、それぞれ譲れぬ事情がある。
 深く憂慮に堪えない。小沢氏無罪は、難しい。
================================
小沢一郎氏 2012年は最後のご奉公、文字通り「最後」と語る/人間・小沢一郎「最後の大構想」 前篇 2011-12-29
小沢一郎/「今年は選挙になる。俺は、やる」TPP、大不況、安全保障、裁かれる不条理/[最後の大構想] 後編 
◆ 小沢一郎氏 共同通信の単独インタビュー/増税法案に造反明言/離党は否定/野田首相の解散困難・・・ 2012-02-04  
--------------------------------
小沢一郎勉強会「新しい政策研究会」会合に109人が参加/「新党きづな」「新党大地・真民主」の議員も 2012-01-16 
民主党 広野允士広報委員長、消費増税方針に反対して広報委員長の辞表を輿石東幹事長に提出 2012-02-09 
小沢一郎氏 法制局長官の答弁復活を批判「旧体制下と同じ」 「政治塾」で講義 2012.2.13 2012-02-13 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。