小泉氏の背後に見え隠れする石油メジャーとアメリカ 【安倍叩き】田中角栄氏、小沢一郎氏を潰したように

2013-11-13 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

〈来栖の独白2013/11/13 Wed. 〉
 一体どうなっているんだろう、と(小泉、細川元首相の動きに)不審を募らせていたが、少し分かりかけてきた。やはり、石油メジャーによるプロパガンダだ。そこへ、安倍潰しを社是とする朝日新聞など、メディアが活気づいたのだろう。安倍潰しに、「脱原発」は、好材料、申し分ない戦略だ。
 ただ日本の石油メジャーだけでは、力不足。アメリカも、糸を引いているだろう。「日中友好」の田中角栄氏をロッキード事件で潰し、「日米中 正三角形」の小沢一郎氏を陸山会事件で潰したように。安倍晋三氏は昨年12月「日本を取り戻す」と云った。何から取り戻すのか。アメリカから、だと私は思う。憲法改正を悲願とする安倍さんだ。属国憲法を廃し、戦勝・占領国アメリカから日本の真の独立を取り戻す。そういう総理を、アメリカが潰しに掛かっている。親米の小泉氏をのせるのは、いとも容易かった。国民はこの珍現象を「小泉劇場」などとエンタメにせず、しっかりと深層に目を凝らさなければならない。そうしなければ、この国は再び失われてしまう。
 アメリカはシェールガス・オイル産出によって、エネルギー輸出国となる。日本が原発をやめてエネルギーに窮し、中東からも買えない、という最悪の事態を想定してみると、分かりやすい。原発をやめた日本の生殺与奪を握るのはアメリカである。68年前、アメリカから石油を止められ(禁輸)、日本は戦争に負けた。
 正に、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。
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「原発ゼロ、総理の決断次第」〈小泉元首相の会見全文〉
 小泉純一郎元首相が12日、日本記者クラブで会見した内容は次の通り。
小泉氏「原発、即ゼロに」
 【原発ゼロ】
 本日はお招きいただき、ありがとうございます。総理を退任してからテレビ出演もしていないし、インタビューも全てお断りしてきた。毎日新聞の山田(孝男・専門編集委員)記者が8月、私のオンカロ(フィンランドの高レベル放射性廃棄物の最終処分場)視察をコラムで取り上げてくれた。短い文章だが、実にうまく要点を取り上げていた。あれから、一斉にマスメディアが私に注目し出した。3・11の事故が起きて以来、ずっと似たような話をしてきた。記者が来て何を書こうが勝手だった。毎日の記者が書くまでは無視していた。コラムが出てから、いろんな方から(インタビューの)申し込みがあってお断りするのも大変だった。
 最初に、原発問題だ。10月、読売新聞が社説で「『原発ゼロ』掲げる見識を疑う」と題して私の発言を批判していた。この批判に対する意見から始めたい。一つは、「原発ゼロ」にした後の代替策を出さないで発言するのは、楽観的で無責任だということだ。しかし、原発問題は広くて大きくて深い問題ですよ。国会議員だけで代案を出そうったってなかなかできない。まして私一人が代案をだすのは不可能だ。だから、政治が一番大事なのは、方針を示すことだ。「原発ゼロ」という方針を政治が出せば、必ず知恵のある人がいい案を出してくれる、というのが私の考えだ。「原発ゼロ」に賛同する専門家、文部科学省、環境省、官僚、識者を集めて、何年かけてゼロにするか、どういうふうに促進するのか、40~50年かかる廃炉の技術者をどう確保するか、「原発ゼロ」後の地域の発展や雇用をどう考えるか。こういう問題を、国会議員、一政党、一議員だけで出せるわけないじゃないですか。だから、専門家の知恵を借りて、その結論を尊重して進めていくべきだというのが私の考えだ。
■新技術で代替エネルギー確保は可能
 もう一つの批判は、ゼロにすれば火力発電やさまざまな電源の調達のため電気料金が上がり、CO2の排出量が増えると。しかし、日本の技術は、時代の変化を読むのに非常に敏感だ。つい最近も、新日本石油の社長をしていた渡(文明)さんにお会いして、「数年以内に燃料電池車が実用化される。うちはもう水素供給スタンドを用意している」と。電気自動車よりも早く燃料電池車が実用化する、と自信を持った。燃料電池車はCO2を出さない。トヨタにしてもホンダにしても日産にしても、自動車会社はハイブリッド車を必死に開発している。夜中に寝ているうちに充電できる。できるだけCO2を出さない自動車の開発が進んでいる。LEDだってそう。設置費用が多少高くても、省エネの観点からLEDを使う家庭が白熱灯を使う家庭より多い。日本の国民は、実に環境に協力的だ。
 先日、清水建設にいった。去年建て替えた新本社になってから、CO2の排出量は7割削減したという。太陽光パネルにしたからだ。そして、本社内はすべてLEDを採用している。明るいときは太陽光パネルだけで仕事ができる。曇ればLEDの電気がつく。自動調節だ。なお、エネコン。輻射熱(ふくしゃねつ)によって音のしない、自動的に快適な温度にするエネコンを全社のビルにつけちゃった。今までは(エアコンの)風の音で騒音が入ってこなかったが、新本社で外の騒音が入ってくるようになっちゃったぐらい静かになった。そういう技術を持っている。新しいコンサートホールはいずれ、音のしないエネコンを導入するだろう。日本の技術力はたいしたもんだ。
 先日、三菱重工が石炭火力発電所を建設する際に大気汚染を防止する技術を開発したという記事が日経新聞にあった。さまざまな再生可能エネルギー、水力、太陽光、風力、地熱。原発の建設に向けた費用を、そちらにふり向ければいい。さまざまな代替エネルギーの開発技術を日本の企業は持っている。そういう企業に、日本国民は協力する。多少高くても。
 「原発ゼロ」政策を進めるドイツに8月行ってきた。太陽光、風力、バイオマスの施設に行って担当者と話したが、最初に会社を立ち上げるときは数名だった。お金がない、投資する人がいない。ところが政府が進めて、採算がとれるようになって大規模になった。だいたいが地産地消(のエネルギー)だ。地域の電力をまかなうためにつくればいい。バイオマスは、牛の糞(くそ)や馬の糞まで電気に変える。トウモロコシも電力用に分けてつくる。出た残りカスは地元農家の肥料となる。まさに地産地消態勢だ。日本だってこれはできる。廃材もバイオエタノールにできる。ブラジルにも行ったが、町の中にはガソリンスタンドと一緒に、砂糖キビからつくるバイオエタノールが併設され、同じスタンドで供給できる。さまざまな知恵がある。
 太陽光は日が陰ればダメ、風力は風がやんだらダメと言うが、太陽光も風力も蓄電技術が開発される。陸上だけじゃなくて洋上でもできる。地熱だって蒸気で電気が起こせる。専門家や発明家の知恵を借りていけば、今では想像できないような代替エネルギーが確保できるのではないか。
■核のごみ、原発必要論者こそ楽観的で無責任
 もう一つ、これが「原発ゼロ」批判の中心だが、核のごみ。(高レベル放射性廃棄物の最終処分場は)技術的に決着していて、問題は最終処分場が見つからないことだと。ここまでは原発必要論者とわたしは一緒だ。ここからが違う。必要論者は「処分場のめどがつかない」と言う。めどをつけるのが政治の責任ではないか。めどをつけないのがいけないんだ。
 私の結論から言うと、日本において、核のごみの最終処分場のめどをつけられると思う方が楽観的で無責任すぎる。10年前から技術的に決着している、10年以上かけて一つも見つけることができない、政治の責任で進めようと思ってもできなかった。原発事故の後、これから政治の責任で見つけなさいというのが、必要論者の主張だ。よっぽど、楽観的で無責任だ。
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風知草:小泉純一郎の「原発ゼロ」=山田孝男
毎日新聞 2013年08月26日 東京朝刊
 脱原発、行って納得、見て確信−−。今月中旬、脱原発のドイツと原発推進のフィンランドを視察した小泉純一郎元首相(71)の感想はそれに尽きる。
 三菱重工業、東芝、日立製作所の原発担当幹部とゼネコン幹部、計5人が同行した。道中、ある社の幹部が小泉にささやいた。「あなたは影響力がある。考えを変えて我々の味方になってくれませんか」
 小泉が答えた。
 「オレの今までの人生経験から言うとね、重要な問題ってのは、10人いて3人が賛成すれば、2人は反対で、後の5人は『どっちでもいい』というようなケースが多いんだよ」
 「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」
 3・11以来、折に触れて脱原発を発信してきた自民党の元首相と、原発護持を求める産業界主流の、さりげなく見えて真剣な探り合いの一幕だった。
 呉越同舟の旅の伏線は4月、経団連企業トップと小泉が参加したシンポジウムにあった。経営者が口々に原発維持を求めた後、小泉が「ダメだ」と一喝、一座がシュンとなった。
 その直後、小泉はフィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」見学を思い立つ。自然エネルギーの地産地消が進むドイツも見る旅程。原発関連企業に声をかけると反応がよく、原発に対する賛否を超えた視察団が編成された。
 原発は「トイレなきマンション」である。どの国も核廃棄物最終処分場(=トイレ)を造りたいが、危険施設だから引き受け手がない。「オンカロ」は世界で唯一、着工された最終処分場だ。2020年から一部で利用が始まる。
 原発の使用済み核燃料を10万年、「オンカロ」の地中深く保管して毒性を抜くという。人類史上、それほどの歳月に耐えた構造物は存在しない。10万年どころか、100年後の地球と人類のありようさえ想像を超えるのに、現在の知識と技術で超危険物を埋めることが許されるのか。
 帰国した小泉に感想を聞く機会があった。
−−どう見ました?
 「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」
−−今すぐゼロは暴論という声が優勢ですが。
 「逆だよ、逆。今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す」
 「戦はシンガリ(退却軍の最後尾で敵の追撃を防ぐ部隊)がいちばん難しいんだよ。撤退が」
 「昭和の戦争だって、満州(中国東北部)から撤退すればいいのに、できなかった。『原発を失ったら経済成長できない』と経済界は言うけど、そんなことないね。昔も『満州は日本の生命線』と言ったけど、満州を失ったって日本は発展したじゃないか」
 「必要は発明の母って言うだろ? 敗戦、石油ショック、東日本大震災。ピンチはチャンス。自然を資源にする循環型社会を、日本がつくりゃいい」
 もとより脱原発の私は小気味よく聞いた。原発護持派は、小泉節といえども受け入れまい。5割の態度未定者にこそ知っていただきたいと思う。(敬称略)(毎週月曜日に掲載)
 ◎上記事の著作権は[毎日新聞]に帰属します *強調(太字・着色)は来栖
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『防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織』 福山隆著 幻冬舎新書 2013年5月30日第1刷発行 2013-07-28  
  (抜粋)
p31~
 アメリカの戦略で動いた日本の「戦後レジーム」
 それも含めて、戦後日本のインテリジェンスは、基本的に超大国アメリカが打ち出す戦略の枠内に収まっていました。これは、いわゆる「戦後レジーム」がもたらした弊害の1つといえるでしょう。
 東京裁判や現行憲法の話を持ち出すまでもなく、日本の戦後体制がアメリカ主導で構築されたことは明らかです。これがさまざまな点で日本社会のあり方を歪めたからこそ、かつての第1次安倍政権も、「戦後レジームからの脱却」を掲げました。
p32~
 しかしその自衛隊も、実質的には米軍の世界戦略にはめ込まれた1つのピースにすぎません。もちろん形式上は組織として独立していますが、米軍と無関係に独自のオペレーションを実行することはほとんどできないのです。(略)
 そんな次第ですから、自衛隊のインテリジェンス機能もまた、基本的には日米同盟を前提としたものになっているのです。
p33~
 それだけではありません。より広い意味の「情報」について考えた場合も、戦後の日本人はアメリカの影響を強く受けてきました。国民に正確な情報を伝えるべきマスメディアが、アメリカの情報戦略に巻き込まれてきたからです。
 たとえば、日本最大の発行部数を誇る讀賣新聞。その「中興の祖」とも呼ばれる正力松太郎氏は、もともと警察官僚でした。いわゆる特高警察に所属し、一説には関東大震災の際に朝鮮人暴動のデマを組織的に流布したともいわれています。戦後は東京裁判のA級戦犯に指名され、公職追放となったものの、不起訴処分で釈放。アメリカの公文書には、正力氏がその後CIAの非公然工作に長く協力していたことが記載されているといいます。釈放と引き替えに協力したと思われても仕方ありません。
 CIAのコードネームも持っていたといわれるほどの人物がトップに君臨していたのですから、その新聞や系列テレビ局が流す情報がどのような操作を受けるかは、想像がつきます。それが、アメリカの国益に反するものになるとは考えにくい。そして、これは「大正力」が実権を握っていた時代だけの「昔話」ではないと私は思っています。
p34~
 アメリカは日本が再び「強い国」になるのを恐れている
 一方、その讀賣新聞とはライバル関係にある朝日新聞にも、アメリカの息はかかっています。
 私はかつてハーバード大学のアジアセンターで客員研究員を務めていたのですが、そのとき、「ニーマンフェロー」の存在を知りました。ユダヤ系の大富豪ニーマンの寄付金で設立された「ニーマンジャーナリズム財団」が、ジャーナリズム界のリーダーを育成するために、世界各国から新聞記者を集めて1年間無償で研修を受けさせるのです。
 ニーマンフェローは毎年24名で、12名はアメリカ国内のメディア、残り12名が外国のメディアから呼ばれます。その中の「日本枠」は、常に朝日新聞の指定席。たとえば、かつてテレビの討論番組にもよく顔を出していた「朝日ジャーナル」元編集長の下村満子氏も、このニーマンフェローでした。ここでアメリカナイズされた優秀な記者たちが、やがて朝日新聞の幹部になるのですから、その論調が親米的なものになるのは自然な成り行きでしょう。
p35~
 朝日新聞といえば「左寄り」で、旧ソ連や中国と結託して戦前の日本を断罪するという印象がありますから、「親米」と聞くと意外に思う人もいるかもしれません。たしかに、憲法9条を擁護して日本の「軍国主義化」を警戒したり、首相の靖国神社参拝を批判したりするのは、---ソ連や中国---の国益にかなっています。
 しかし実は、それがアメリカの国益にもかなっていることを忘れてはいけません。(略)
 インテリジェンスに必要な機能は、情報の「収集」だけではありません。情報を「操作」することで、自分たちに有利な状況を作り出すことも重要な機能の1つです。
p36~
 そして日本の「戦後レジーム---アメリカの従属国」は、アメリカの巧妙な情報操作によって、より強固なものになりました。アメリカに飼いならされたのは、ジャーナリストだけではありません。日本からは、多くの言論人や学者たちが若い時期に留学生としてアメリカでの生活を経験しています。そこでアメリカに洗脳された人々が帰国し、オピニオンリーダーとして活躍する。その影響を受けて、日本の世論全体がアメリカナイズされてきたのです。

 第2章 二つのインテリジェンス――軍事と外交
p44~
 軍事と外交の担うインテリジェンスの違い
 憲法9条と安保条約という二本の手綱
 さて、現在の日本が抱えるインテリジェンスの問題は、おおむね「戦後レジーム」の中で生じたものだと考えていいでしょう。それ以前から対外インテリジェンスをあまり重視しない傾向はありましたし、それについても後述するつもりですが、やはり敗戦とそれに続くアメリカの占領統治は実に大きな転換点でした。
 その転換をもたらした最大の要因は、1946年に公布されて翌年に施行された日本国憲法の第9条です。戦力の放棄を定めたこの条文によって、日本は軍隊をもたない国となりました。
 しかし、軍隊をもたずに国家を維持することはできません。かつて日本社会党が唱えた「非武装中立」などというものは、単なる絵に描いた餅です。安全保障のためには、当然、何か別の手立てが必要になる。そこで登場したのが、日米安全保障条約です。
(p45~)日本の戦後を考える上で、憲法9条と日米安保条約はワンセットでかんがえるべきでしょう。
 そしてこれは、アメリカが日本という「馬」をコントロールするために用意した2本の手綱のようなものでした。憲法9条によって日本を弱体化させ、さらに安保条約によって米軍基地を日本国内に駐留させる。これによってサンフランシスコ講和条約の発効で日本が独立を回復して以降も、ある種の「占領状態」を続けることができたわけです。
 さらに、日米安保条約は、米軍基地内においては米軍が第1次裁判権を持つことを定めた日米地位協定とワンセットになっています。その安保条約と地位協定の両方を主管するのが、外務省にほかなりません。
 ちなみに、この2つを実際に担当する北米局日米安全保障条約課は、外務省の中でももっとも優秀なエリートが登用されるセクションです。いずれ事務次官やアメリカ大使になるような人材が、ここに配属される。安全保障は国家の最重要課題ですから、それも当然でしょう。しかし、ここでアメリカの「伝声管」を務めたエリートたちが省内で出世するとなれば、外務省全体がアメリカの言いなりになりやすくなるのもたしかです。
p46~
 ともあれ、戦後の日本では、本来は外交を担当する官庁―外務省―が、日米間の条約や協定をコントロールするという名目の下に、実質的な「安全保障庁」として機能してきました。
p142~
 そういうレベルの日本研究者=「ジャパノロジスト」が、歴史、政治、経済、社会、教育、国防などあらゆる分野にひしめきあっているのがアメリカです。かつて駐日大使を務めたエドウィン・O・ライシャワーや、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のエズラ・ボーゲルなどが日本では「知日派」として有名ですが、それは決して珍しい存在ではありません。ジャパノロジストの裾野はきわめて広いのです。
p143~
 そういった学者に加えて、日本ではCIAをはじめとするアメリカの情報機関要員があちこちで活躍しています。しかも、ロシアや中国などの情報員(スパイ)に対しては厳しくマークする公安警察も、同盟国であるアメリカについてはほぼ野放しの状態だといっていいでしょう。一方、日本は対米情報を含めた対外インテリジェンスをアメリカに依存しており、ましてや直接アメリカに対する情報活動はほとんどしていません。日米間には、実に大きな情報格差があるのです。
 そしてアメリカは、その情報格差を利用する形で、終戦直後の占領状態を継続し、日本をコントロールしてきました。そこで重要な役割を果たすのが、「ジャパン・ハンドラーズ」と呼ばれる人々です。政治学者のマイケル・グリーンやケント・カルダー、ジョセフ・ナイといった名前を見聞きしたことのある人も多いでしょう。
 ジャパン・ハンドラーズの正体
 そんなジャパン・ハンドラーズの中でも、もっとも知名度が高いのはリチャード・アーミテージだろうと思います。2001年の「9・11」を受けて日本に対テロ戦争での共闘を求める際に、「Show the flag」という発言をしたことで知られる人物です。
p146~
 このアーミテージ・レポートも、それと同じく、甚だしい内政干渉だと言わざるを得ません。この文言の裏側には、“属国”日本をアメリカの国益のために利用しようという意図が透けて見えます。例えば、ここで原子力発電の推進を主張しているのは、アメリカやフランスの原発産業が持っている利益を守るためでしょう。
p147~
 米中情報戦に利用された尖閣諸島問題
 また、この中で「日中韓」という東アジアの情勢に触れていることもきわめて重要な意味を持っています。後ほど詳しく述べますが、今後、アメリカの軍事戦略における最大のテーマが「対中国」であることは言うまでもありません。
 他国を自らの支配下に置こうとするとき、アメリカの戦略は「ディバイド・アンド・ルール」が基本です。これは、かつての西欧列強が植民地を支配した時のやり方にほかなりません。植民地の民族を分断し、お互いに争わせることによって、宗主国への抵抗を和らげ、統治しやすくする。ディバイド・アンド・ルール戦略に照らし、東アジア地域で日本・中国・韓国が諍いを起すことは、アメリカにとって歓迎すべきことなのです。
 したがって、先ほどの第3次アーミテージ・レポートも、額面通りに読むわけにはいきません。「日米韓の強い同盟関係が重要」などといっていますが、本心では、日韓が永遠に対立することがアメリカの国益になると思っているはずです。「日本は韓国との歴史問題に正面から取り組むべきだ」というのも、懸案が解消して日韓が親密になることを願っているのではなく、この問題がさらにこじれることを期待しているに違いありません。
p148~
 対中国も同じです。アメリカとしては、いまのところ中国とのあいだで本格的な衝突は起したくありません。そのため、日本と中国が諍いを起すように煽る一方で、水面下では中国と出来合いのレースをするのではないでしょうか。
 そんなアメリカの思惑が見え隠れしたのが、2012年4月に始まった「尖閣諸島購入問題」だったと私は見ています。当時の石原慎太郎東京都知事が「東京都は尖閣諸島を買うことにした」と宣言したことに端を発し、紆余曲折を経て最終的には国が地主から買い上げることになり、それを契機に、日中関係は緊張が高まりつつあります。
 あれは日本と中国の外交問題であって、アメリカは関係ないのではないか―そう思う人も多いでしょう。しかし私は、石原氏があの宣言をアメリカのワシントンで行ったことが気になります。本人にはその自覚がないままに、米中の情報戦の中で「パペット(操り人形)」として踊らされていた可能性があるのです。
 もちろん、これは明確な根拠に基づく話ではありません。しかし、インテリジェンスの世界に身を置く人間は、あらゆる人のあらゆる発言を疑い、「裏」に何かある可能性を考えるのを常としています。もし「性善説」と「性悪説」のどちらかを選ばなければいけないのであれば、性悪説を取らざるを得ないのです。
 また、この世界には「英雄には気をつけろ」という格言めいた言葉もあります。大衆的な人気の高い人物が目立つ発言をしたときは、その背後に大きな陰謀が隠れている可能性がある。何らかの意図でマスコミや世論を沸騰させたい陣営が、謀略によってそれを、「言わせている」ことがしばしばあるのです。
p151~
 それはともかく、太平洋越しに覇権を争う米中にとって、尖閣諸島は地政学的にたいへん重要な意味を持っています。不動産としての「所有権」と国家の「領有権」は別物ですから、国内的には地主が民間人であろうが東京都であろうが、日本にとってはさほど大きな問題ではありません。しかし中国にとっては、「民有」から「都有」を経て「国有」になることは、中国がこの海域で狙っていることを前に進めるためには好都合でした。中国にとって尖閣諸島は、第1列島線を突破し太平洋に進出する際の重要な“軍事的要衝”です。したがって、何か隙があれば一気に情勢を動かそうと鵜の目鷹の目で狙っていた。その格好のきっかけを与えたのが、石原発言でした。
 石原氏の発言をアメリカが誘導したのかどうか、誘導したとすればどのようにやったのか、いずれも確たることはいえません。しかし石原氏ほどの大物政治家になれば、その周辺ではアメリカや中国の情報関係者――より端的な言葉を使うなら「スパイ」――が蠢いているのは間違いないと私は見ています。石原氏に対して影響力を持つ人物が、外国の意向を受けて何かを吹き込んだり、けしかけたりすることも十分に考えられます。また、日常的に電話やメールはすべて盗聴・監視されているものと思います。
p152~
 いつまでも日本をコントロール可能な国に
 いずれにしろ、陰謀は外から「見えない」からこそ陰謀なのですから、そのプロセスについては想像の域を出ません。しかし結果的に当事者以外に「得」をした者がいるのであれば、その第3者による陰謀があった可能性が疑うのがインテリジェンスの基本です。
 そして、石原氏の尖閣購入発言によって、アメリカは間違いなく「得」をしました。発言に反発した中国が日本への敵意を剥きだしにした結果、日本がアジアで孤立し、アメリカの懐に逃げ込まざるを得ない情勢が作られたからです。
p154~
 米国の凋落と中国の台頭
 何度も繰り返しますが、石原発言の背後に外国の陰謀があったかどうかはわかりません。しかしアメリカや中国に、それを実行するだけのインテリジェンス能力があることはたしかです。そして現在、米中両国は太平洋をはさんでお互いの動向を探り合っている。この両大国にはさまれている日本は、好むと好まざるとにかかわらず、その覇権争いに巻き込まれています。地政学上、これは避けることができません。
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書評『約束の日 安倍晋三試論』小川榮太郎著 安倍叩きは「朝日の社是」 2012-12-27  
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憲法改正で「日本」を取り戻せ 誤った歴史観を広めるメディア・教育界に風穴を 『Voice』4月号 2013-03-24 
  『Voice』4月号2013/3/9(毎月1回10日発行)

    

  憲法改正で「強い日本」を取り戻せ いまこそ誤った歴史観を広めるメディア・教育界に風穴を開けるときだ
  対談「渡部昇一(わたなべしょういち・上智大学名誉教授)×百田尚樹(ひゃくたなおき・作家)」
〈抜粋〉
■在日コリアンの影響下に置かれていた民主党政権
p44~
百田尚樹 民主党は与党になってから2年以上、代表選で在日コリアンを含むサポーター(党友)にも投票権がありました(2012年より日本国籍を有する者に限定)。つまり日本の首相を選ぶに際して、外国人の票が影響力をもっているということです。こんなおかしなことはありません。
渡部昇一 それは明確な憲法違反ですね。さかのぼっていえば、民主党と在日コリアンの関係が密接であるのは、戦後の55年体制で最大野党であった社会党出身者も少なくない。社会党を支えたのがまさに在日コリアンなのです。たとえば1951年に日本がサンフランシスコ条約に署名し、国際社会に復帰した時には、強硬に反対したが社会党でした。占領下の日本は在日外国人にさまざまな特権を与えており、彼らにとって非常に居心地がよかったからです。闇市で食糧を調達するときも、日本人はすぐ摘発されるのに、彼らは警察に取り締まられることはなかったほどですから。
 これは作家の吉屋信子が書いていることですが、戦後間もなく菊池寛と一緒に京都に向かう汽車の中で、菊池が「今度の選挙で社会党は金がなくて大変だろうな」と口走ったところ、たちまち屈強な在日コリアンの男たちに囲まれ、因縁をつけられたそうです。彼らの本質がわかるエピソードです。
百田 日の丸や君が代に反対する文化人は少なくありませんが、そのなかには在日コリアンがいるともいわれています。厄介なのは、彼らが「自分たちは在日である」ということを標榜せず、日本人のふりをして意見を述べているということ。本来、外国人に日の丸や君が代について意見をいわれる筋合いはないですね。
渡部 日本人風のいわゆる「通名」を名乗っているコリアンの人に「元の名前は?」と聞くと、「名誉棄損で訴えるぞ」と怒りだすそうです。祖国にプライドをもっているにもかかわらず、なぜ本来の名前を聞かれるとそうした反応を示すのか。その意味でも非常に屈折しているといわざるをえません。
p45~
■サイレントマジョリティの声を聞けるか
百田 同じように、戦後長らく左翼的な勢力が跋扈しているのが、新聞やテレビなどメディアの世界、そして教育界です。(略)
 まずメディアについていえば、第1次安倍内閣は『朝日新聞』をはじめとする新聞やテレビに過剰なまでにバッシングされ、短い期間で残した実績が国民に十分に伝わらないまま、退陣に追い込まれてしまいましたね。
渡部 ベストセラーになった『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)で小川栄太郎さんが書いているのですが、昨年11月に亡くなった政治評論家の三宅久之さんは、かつて朝日新聞社の主筆だった若宮啓文氏に「どうして『朝日』はそこまで安倍さんを叩くんだ?」と尋ねたところ、「社是だからだ」といわれたそうです。
百田 ただ、いまでは「安倍たたき」をするか否か、メディアも少し慎重になっているようにもみえます。リベラルな論調を出すことで読者が減るのではないか、と懸念しているのでしょう。
渡部 1月にはアメリカのニューヨーク・タイムズ紙が安倍さんを「右翼の民族主義者だ」と強く批判しました。『ニューヨーク・タイムズ』の東京支局は、朝日新聞社と同じビルにあります。これは邪推かもしれませんが、『朝日新聞』の記者が、自分たちの発言力が落ちていることに危機感を抱き、『ニューヨーク・タイムズ』の記者をけしかけて、社論を書かせたと解釈することもできます。
百田 ここ数年でインターネットが発達し、とくに若い世代を中心に「マスコミの情報が必ずしも正しいわけではない」という意識が芽生え始めたのも大きいですね。
p46~
渡部 2012年から現在にかけては、脱原発運動の旗振り役になり、いかにも国民全体が「脱原発」の意見をもっているかのような記事を掲載した。しかし先の総選挙では、「日本未来の党」をはじめとする、脱原発政党は軒並み議席を減らしています。マスコミのいうことと、「サイレントマジョリティ」の意見は違うということが露呈しました。
百田 60年安保のときと状況はよく似ています。当時も日本全国が「安保反対」のような気運でしたが、自然成立とほぼ同時に岸内閣が倒れ、その数か月後に行われた総選挙で自民党が圧勝した。メディアの声はあくまでも「大きい声」にすぎず、それが大多数の声を代表しているとは限らないということです。
(略)
百田 岸信介はいみじくも、安保デモを前に「私には国民の声なき声が聞こえる」と発言しました。それは正しかったんです。いくら国会を群集が取り囲んでも、私の両親のような大多数の庶民は、そのような問題に何ら関わりはありませんから。サイレントマジョリティの声を聞くというのは、政治家の大きな資質の1つだと思います。
p47~
■教科書には「事実」を記述すべき
渡部 第1次安倍内閣の果たした政策のうち、とくに私が評価しているのは、教育基本法の改正です。道徳や倫理観に関する基本的な教育方針を変えたことで、ようやく日本人が日本人であることに誇りをもてる教育ができるようになりました。
百田 日教組の教職員は子どもたちに、「日本は侵略戦争を行い、アジアの人々を傷つけた」「日本人であることを恥ずべきだ」ということを教えてきましたからね。そのような誤った知識を死ぬまで持ち続ける日本人も多い。広島県のある高校は修学旅行で韓国に行き、生徒たちに戦時中の行為について現地の人に謝罪をさせたとも聞きます。世界中を見渡しても、そのような教育をしている国はどこにもありません。
渡部 「日本が侵略戦争を行った」というのは、東京裁判の検察側プロパガンダの後継者です。しかし東京裁判以外に、日本を正式に批判した公文書は存在しません。マッカーサーもアメリカ上院の公聴会で、「日本が行ったのは自衛戦争だった」と証言している。東京裁判史観をいまだに尊重していることが、いかに意味のないものかがわかります。(略)
百田 「侵略戦争」といっても、日本人は東南アジアの人々と戦争をしたわけではない。フィリピンを占領したアメリカや、ベトナムを占領したフランス、そしてマレーシアを占領したイギリス軍と戦ったわけです。日本の行為を「侵略」と批判するなら、それ以前に侵略していた欧米諸国も批判されてしかるべきでしょう。
p48~
渡部 私の娘はジュネーブの日本人学校で教えているのですが、日本から来た子どもたちが「日本人は悪いことをした」と洗脳されているのを解くのが大変だ、といっていました。「日本はほんとうは立派な国なのだ」と教えると、ほんとうに誰もが喜ぶそうです。
百田 だからこそ政府にいま求められるのは、日本人の歴史観を正しいものに変えるため、ロビー活動、啓蒙活動を行っていくことですね。
渡部 安倍さんは首相就任以前より、教科書問題に関心を抱き、大手出版社の社長に「こんなことを書いていたのか」と迫ったり、教育学者の藤岡信勝氏らが設立した「新しい歴史教科書をつくる会」で講演を行っていたと聞きます。安倍さんの改革によって、いまの教育界にさらなる風穴があくことを期待しましょう。
■日本の軍備がアジアの平和に繋がる
p49~
百田 日本の人口1億人に対して、自衛隊の隊員数は25万人です。海外と比較をすると、スイス軍は人口780万人に対して、軍隊は21万人もいます。しかも現役を退いたら、60歳ぐらいまでは予備役として登録される。一家に1丁自動小銃が配布されており、日常は普通の仕事をしていても、事が起きれば戦場に赴く。歴史的には「永世中立国」として200年以上戦争をしていないわけですが、軍隊をもつことは、戦争に対するもっとも有効な抑止力であり、平和の維持にはそれだけの労力がかかることを理解しているわけです。
渡部 なかでも核兵器はもっとも有効な抑止力ですね。もし原子爆弾が開発されていなかったら、第3次世界大戦が起きていても不思議ではなかった。歴史上、2000年以上にわたって戦争が絶えなかったヨーロッパで、現在60年以上戦争が起きていないのは、1955年に西ドイツ(当時)がNATOに加盟し、アメリカとともに核兵器を発射できる資格を得たからです。そのため冷戦下で対立していたソ連も、西側諸国には手出しできなかった。逆にいま、もっとも戦争の危険性が高いのはアジアですが、日本が核兵器を保有していないことが大きいでしょうね。p50~
■日本国憲法は「占領基本法」にすぎない
百田 だからこそ安倍政権では、もっとも大きな政策課題として憲法改正に取り組み、軍隊創設への道筋をつくっていかねばなりません。世界の約200か国のうち、軍隊をもっていない国は、モナコやバチカン市国、ツバルといった小国をはじめとする27か国しかない。日本のような経済大国がそれに当てはまるのは異常なことです。
渡部 同感です。安倍さんは第1次内閣で防衛庁を防衛省に昇格させ、内閣に安全保障の責任者が不在という歪な状態を解消させることに成功しました。第2次内閣では、さらにもう一歩踏み込んだ取り組みに期待したいですね。
百田 世間では、「憲法は神聖で侵さざるべきものである。改正するなんてもってのほかだ」という、「憲法改正アレルギー」のような意識が蔓延しているようにも感じます。しかし世界中のどの国も、憲法改正はごく普通に行っている。アメリカは18回、フランスは24回、ドイツは58回、メキシコに至っては408回も改正しており、世界最多の回数といわれています。(略)
p51~
渡部 日本国憲法は「アメリカの占領が続く」という前提のもとに作られた、いわゆる「占領基本法」と呼ぶべきものなんです。もし1950年に朝鮮戦争が起きなければ、アメリカは50年ぐらい日本の占領を続けるつもりだったのですから。そのため日本国憲法の前文には、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とある。日本人の安全と生存を諸外国に委ねるなんてとんでもない話であり、このような代物がほんとうの「憲法」であるといえるはずがない。
百田 アメリカも大東亜戦争で痛い目に遭っていますから、もう二度と日本が立ち向かえないようにした、ということですね。9条で「交戦権の放棄」を押し付けたのもそうです。いまの日本には自衛隊がありますが、9条を厳密に解釈すると、相手に銃を向けられて引き金に指がかかってもいても抵抗できない。向こうが撃ってくれば初めて反撃できますが、それも最低限のものに限られ、たとえば一発撃たれて十発撃ち返したら、過剰防衛として処罰される。こんな馬鹿なことはないでしょう。
p52~
百田 ドイツも同じく、占領されているときに連合国軍に憲法を押し付けられましたね。でもドイツ人はそれを「憲法」とみなしておらず「ボン基本法(ドイツ連邦共和国基本法)」と呼んでいます。占領が解けてから50回以上も条文を改正し、自分たちの憲法をつくっていったのです。*強調(太字・着色)は来栖
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『アメリカに潰された政治家たち』孫崎亨著--第2章 最後の対米自主派、小沢一郎 2012-10-28 
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原発保有国の語られざる本音 / 多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10
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